【第8話:倫子SIDE】夫が浮気相手を妊娠させた!?男性不妊のはずなのに…。私たち夫婦の選ぶ「幸せ」とは
【第7話】からの続き。
私は小さい頃から、欲しいと思ったものは何一つ手に入ったことはなかった。
母は私が「予定外」にできてしまったから、「仕方なく」産んだ。ずっとそう聞かされてきた。「本当なら産みたくなかった」「あんたのせいで人生が狂った」「あんたさえいなければ」こんな言葉は何度も何度も聞いてきた。
最低限の食事や、最低限の生活は与えてもらったけれど、私が一番欲しかった「お母さんの愛情」はもらえなかった……。
運命が変わったのは、友達と待ち合わせをしていたあの日――。
そう言って、サラリーマンが絆創膏と消毒、あとは接着剤を持ってきてくれて、怪我の手当てとヒールの修理をしてくれた。
ヨウイチ:「これでよしっと。お仕事の途中ですか? 大変ですね。タクシーとか呼びますか?」
とほほ笑みかけてくれた。
「だ……大丈夫です。失礼します」
優しくされることに慣れない私は、慌ててその場を立ち去った。ズキズキと痛む膝と一緒に、心臓がドキドキと張り裂けそうだった。あの日、あのとき、私はヨウイチに恋をした……。
それからは一生懸命にアタックした。左手の指輪は気になったけれど、それでも私はヨウイチが欲しかった。
(子どもさえできれば……ヨウイチが手に入る……)
こんなに「誰か」を欲しいと思ったことはなかった。私は必死で妊娠を画策したけれど、なかなかうまくいかなかった。
家に帰ると酔っぱらった母が。
「ちょっと、あんた最近バイトにあんまり行ってないんじゃないの? 金が足りないよー」
私に金をせびってくる。
(早く抜け出したい。こんな環境から早く。妊娠さえすれば……ヨウイチと一緒に暮らせるんだ)
私はネットで知り合った別の男とセックスをし、妊娠をした。
でもフタをあけてみれば、ヨウイチは子どもが作れない体質だとか、奥さんはDNA鑑定しろだとか、お母さんは相変わらず「死ね」って言うし……。
みんな私のことなんかどうでもいいんだろうな……。どうせ子どもなんか産んだって、お母さんと同じことしちゃうだけだし、ヨウイチとは一緒になれないんだし、だったらいっそうこの世からいなくなった方が――。
「全然、どうでもよくなんかない!!」
大きな声をあげて、私を真剣な目で見つめてくれたのは、ヨウイチの奥さんだった。
原案・ママスタコミュニティ 脚本・渡辺多絵 作画・んぎまむ