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「かつては子どもだったことを忘れないで」新沢としひこさん&中川ひろたかさん

にじ』『ともだちになるために』など、子ども向けの歌を長年、数多く作ってこられた新沢としひこさん(54歳)と中川ひろたかさん(63歳)。主に新沢さんが作詞、中川さんが作曲を担当し、なんと今年でコンビ結成30周年を迎えられました。

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左:新沢としひこさん、右:中川ひろたかさん

世代を越えて愛される名曲の数々を生み出してきたお二人が、子ども向けの歌を作るうえで大切にしてきたこととは何なのでしょうか? それは、現代の忙しいママたちの子育てにも通じるものでした。

ロングヒットを連発してきたコンビが考える“オリジナリティ”とは?

中川ひろたかさん(以下、中川さん):僕は今まで、いろんな人の詞に曲をつけてきたんだけど、そのなかで気づいたのは「作詞家によって曲調が変わる」ということ。
詞を書く人は、それぞれ自分のリズム感で書くんだけど、曲を作る手がかりになるのは、リズムだけじゃないんだよね。音の響き、単語の選び方……立ちのぼる匂いや色、っていう感じが近いかもしれない。
新沢くんの詞からは、これまで体験したことのない、まったく新しい世界のメロディが出てきたんです。それが、すごくおもしろかった。

新沢としひこさん(以下、新沢さん):今でも、出会ったのが中川さんじゃなかったら、と思うことがあります。
僕はそれまで、自分の書いた詞が「普通すぎる」と思っていたときがあったんです。普通すぎて個性がないんじゃないかと。

でも中川さんは「オリジナリティ(個性)というのは人のオリジン(根源)にあるもの。自分の内面にあるものから生み出されるのが、一番の個性なんだ。だから嘘さえつかなければ、ちゃんと個性がある自分の作品ができるし、人にも伝わる」と言ってくれたんです。

それに、根源というものは、人それぞれみんなが持っているものですよね。オリジナリティがあるということは、逆にみんなと繋がる、共有できるものを持っているということでもある。
無理に個性を求めて共感されるものを書くんじゃなくて、素直に自分の内側にあるものを書けば、みんなに伝わるし、ちゃんとオリジナルになるんですよね。

中川さん:あたりまえのこと、普遍性。そこにオリジナリティの語源があるから素晴らしいよね。個性を共有できるって、すごいことなんだよ。

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——自分の内側にある感覚を素直に表現したものが、個性になる。お二人ならではの深い言葉ですね。

子どもを観察して作るものではない。“自分の中の子ども”が作る歌

——新沢さんも中川さんも、保育園で保育に関わってこられた経験がありますね。歌詞や曲を書くときにも、その経験が活きているのでしょうか?

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新沢さん:僕が保育園でアルバイトしていたとき、『歌えバンバン』(阪田寛夫さん作詞、山本直純さん作曲)という歌を、僕の伴奏で子どもたちが歌ったことがあったんです。子どもたちは、歌詞の通りに口を大きく開けて、とても大きな声で歌っていました。歌詞とメロディーと子どもの気持ちが、バッチリ合ってるのが素晴らしかったんです。
そういうこともあって、「子どもの感情が、素直に歌に表現される、そういう詞を書けたらいいな」と思ったんです。保育現場にいたからこその経験だったかもしれません。

でも、保育の現場にいたことで一番良かったのは、僕自身が“子どもになれた”ということ。
僕は詞を書くとき、大人目線で子どもを観察して、子どもの喜びそうな言葉を選ぶといったことはしていないんです。子どものことを想った詞は、自分の中の子どもが書くもの。大人の内面にも、5歳のときの自分、10歳の自分がいる。子どもと遊んだことによってその部分が刺激されて、そうやって僕も子どもになれたことで、結果として良い詞が書けた、というわけです。
そういう意味では、子どもたちとふれあえたことが大きかったですね。

中川さん:僕も保育士時代、最初は観察者だったんですよ。大人目線で子どもの行動を見ていたんだけど、それだと子どもたちがなかなか近づいてこないんですよね。

あるとき、保育園の砂場で、トンネルを掘ろうとしている子がいたんです。でも上手に掘れなくて、掘ったそばから山がどんどん崩れてきちゃう。僕は砂場のトンネルを掘らせたら右に出るものはいないってくらい上手だったもんだから、一緒にやり始めた。子どもには「向こうから掘って」と言って、一緒に掘り進めるうちに……砂の向こうから、指と指が当たったんです。
初めて子どもと手を繋げた瞬間だったというわけですね。そのときから、僕は大人の目で観察するのをやめました。

今は3歳児向けの絵本とか書いたりもするけれど、そのときも、3歳児になって作ります。お話作りがじょうずな3歳児。

子どもに寄り添う時間をできるだけ持ってほしい。かつて子どもだったママたちへのメッセージ

——最後に、子育て中のママたちへのメッセージをお願いします。

新沢さん:ママになると「一生懸命いいママにならなくちゃ」「しっかりしたママになろう」と思っちゃう人が多いよね。そうなると、かつて自分が子どもだったことを封印しちゃう。今はママの立場で、大人の都合で動きがちなんだけど、ママだってこの前まで子どもだった、そのことをぜひ忘れないでほしいです。

「子どもよりちょっとだけ先輩」「私もそうだったんだ」と思えるだけで、子どもにもう少し寄り添えたりする。歌を聴くときでも、「これは子どもの歌だから」と思って聴くんじゃなくて、「自分が子どものときだったらどう感じたかな」というように、心を柔らかくして、一緒に歌っていってもらえたら嬉しいですね。

中川さん:いろいろ忙しいよね、お母さん。忙しいんだけど、なるべく子どもと一緒にいる時間を多く持ってほしい。テレビを一緒に見るだけでもいいんだよ。お料理をやるとか、ちょっとお出かけするとか。そういう楽しい時間を一緒に持ったという記憶が、この先、成長する上で、すごく大きな「力」になるんだって信じているのね。

新沢さん:子どもはママがいてくれるだけで、怖いものや哀しいものでも、ちゃんと受け止めたりできるようになりますからね。

—— お二人の歌に込めた思いをたっぷりとお聞かせいただきました。新沢さん、中川さん、ありがとうございました。

 

取材、文・編集部 撮影・山口真由子

新沢としひこ 中川ひろたか うたがいっぱい

うたがいっぱい

【発売日】2017年7月19日(水)発売
【品番・価格】COCE-40046/7 \3,200+税

収録曲

【Disc 1 世界中のこどもたちが】
1.世界中のこどもたちが (歌・たいらいさお)
2.おはよう (歌・山野さと子)
3.ハッピーチルドレン (歌・山野さと子 ほか)
4.ハロー! (歌・山野さと子 ほか)
5.おひさまになりたい (歌・山野さと子、新沢としひこ ほか)
6.パレード (歌・山野さと子 ほか)
7.スキップ (歌・岡崎裕美、セトちゃんず)
8.よーい・どん! (歌・山野さと子 )
9.だいだいだいぼうけんのうた (歌・山野さと子 ほか)
10.我が心のフロシキ (歌・中川ひろたか) ※新録音 初CD化
11.風はともだち (歌・かおりくみこ、セトちゃんず)
12.今日はバナナの日 (歌・山野さと子、新沢としひこ ほか)
13.うさぎ野原のクリスマス (くまいもとこ、佐久間レイ、松野太紀)
14.チャンス (歌・山野さと子、新沢としひこ)
15.スマイル (歌・山野さと子、新沢としひこ)
16.心にりんごがひとつある (歌・山野さと子、新沢としひこ ほか)
ボーナストラック
All the Children of the World(世界中のこどもたちが 英語Ver. 歌・Alissa Caldwell ほか)【Disc 2 にじ】
1.歌がいっぱい (歌・中川ひろたか) ※書きおろし新曲
2.にじ (歌・新沢としひこ)
3.はじめの一歩 (歌・高瀬麻里子、竹内浩明、NHK東京児童合唱団)
4.きみとぼくのラララ (歌・稲村なおこ)
5.ともだちになるために (歌・KONISHIKI)
6.ゆびきり (歌・新沢としひこ)
7.くちぶえ (歌・中川ひろたか) ※新録音
8.あたたかい日 さむい日 (歌・新沢としひこ)
9.くじらのうみかもめのそら (歌・杉並児童合唱団)
10.雨ふり水族館 (歌・新沢としひこ)
11.かめのえんそく (歌・中尾隆聖、西村ちなみ)
12.空より高く (歌・ことのみ児童合唱団、コロムビア父母会コーラス)
13.ぼくたちのうた (歌・木村真紀、ひばり児童合唱団)
14.えがおのままで  (歌・山野さと子、新沢としひこ)
15.今日も空は青いよ (歌・中川ひろたか、新沢としひこ、山野さと子 ほか)
16.誰かが星をみていた (歌・新沢としひこ)
*ボーナストラック
A Rainbow (にじ 英語Ver. 歌・Alisa Fukuda)全34曲

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