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『にじ』『世界中のこどもたちが』の産みの親、新沢としひこさん&中川ひろたかさんはコンビ結成30周年

幼いころに親しんだ歌を、ふと思い出すことはありませんか? そんな曲は今では我が子が歌っていることもありますね。

子どもたちが歌っている姿を見て、自分の子ども時代に照らし合わせてみたり、懐かしく思うこともあるかもしれません。

このたびお話を伺ってきたのは、そんな子ども向けの歌を長年、数多く手がけてきた新沢としひこさん(54歳)と中川ひろたかさん(63歳)のお二人です。

にじ』、『世界中のこどもたちが』、『ともだちになるために』など、おふたりの楽曲は世代を越えて歌い続けられています。新沢さんと中川さんは、今年でコンビ結成30周年だそうです。この節目に、おふたりの出会いからコンビ結成秘話、コンビが30年続いた秘訣まで伺ってきました。

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左:新沢としひこさん、右:中川ひろたかさん

コンビ結成30周年。初対面は「生まれたての小鹿」だった?

——お二人はコンビを組まれて30周年ですが、そもそもの結成のきっかけは?

新沢としひこさん(以下、新沢さん):僕の父親は保育園の園長をしていたんですけど、その関係でうちに中川さんのご本があったんです。中川さんが保育園にお勤めだったとき、『あそびうたがいっぱい』という本を自費出版で出していらして。

中川ひろたかさん(以下、中川さん):1979年に出版した本だね。僕と、とんぼさん(元保育園の副園長で作詞家・作家の湯浅とんぼさん)と出版社で、20万円ずつ出し合って出版したの。ものすごく貧乏なときだったんだけど、これが飛ぶように売れてね。「本って飛ぶんだなぁ」と思った(笑)。

新沢さん:初めてその本を見たとき、僕は高校2年生かな。すごく素朴で素敵な本で、「こういう仕事をしている、中川さんという人がいるんだな」と覚えていたんです。

それから、中川さんに初めてお会いしたのは大学1年生のとき。父親から「中川ひろたかさんという先生がいる保育園に、アルバイトに行かないか? 音楽をやっているお前は、影響を受けるに違いないから」と言われたんです。それで行ってみたら、中川さん、なんと辞めた後だった(笑)!

でもその後、中川さんがたまたま保育園に遊びにくることがあって、そのとき初めて挨拶させてもらったんです。
僕がしゃがんで、子どもが遊んだブロックを片づけていたときに、ちょうど中川さんが来て、園長先生が僕を紹介してくれて。「中川さんだ!」と思って立ちあがったら、僕は足が痺れてて……。 もう生まれたての小鹿みたいに、足がプルプル震えてたんですよ! 恥ずかしいんですけど、それが中川さんとの初対面です。

中川さん:もう、本当に鹿みたいだったよ。ゆくゆくは作詞家(さく鹿)になるんだけどね(笑)。

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音楽家たちとの交流を経て、コンビ結成

新沢さん:当時、中川さんは湯浅とんぼさんと一緒にあそびうたを作っていて、二人はすでに有名でしたね。でもちょうど、中川さんが独立して辞めてしまったばかりだったので、とんぼさんとしては寂しかったらしく……。

そんなときに音楽をやっている僕がアルバイトにやってきたからか、「新沢くん、曲を書いてみない?」って、とんぼさんが自作の詩をたくさん渡してきて。僕が曲を書いて持っていくと、とんぼさんは喜んでくれたんです。それで僕が、中川さんの次の男、になった(笑)。

中川さん:その前にもうひとり男がいるんだけどね。

新沢さん:さよならぼくたちのようちえん』の曲を書いた、島筒さん(全盲のピアニスト・島筒英夫さん)という方ですね。

とんぼさんは月に1回くらい、家に中川さんと島筒さんと僕を呼んで、「新しいあそびうたをみんなで発表しちゃう会」をやっていたんですけど、そのうち僕ととんぼさんの歌をカセットテープに吹き込むことになり、中川さんがディレクターをやってくれたんです。中川さんとカセットテープを作る打ち合わせで、たくさんお話しするようになりました。

そのとき、当時大学4年生の僕に向かって、中川さんが聞いたんです。「新沢くんは何をしていきたいんだ?」って。 僕はそれに「実は作曲家ではなく、作詞家になりたいんです」と答えました。ポエムを作る詩人ではなく、「作詞家になって、歌の歌詞が書きたい」。それを中川さんが心にね、留めておいてくれたんですよ

初めてコンビで取り組んだ曲は、あっという間に完成。新しい風を感じた第1作

新沢さん:その後、中川さんが『音楽広場』(クレヨンハウス)という雑誌で歌の連載をしているときに、作詞家として僕を紹介してくれたんです。

中川さん:連載は僕が作詞・作曲の両方を依頼されていたんだよね。11月、12月、1月と作って、2月を迎えたときに締め切りのことをすっかり忘れてて、編集部から催促の連絡がきて。「やばい!」と思ってひねり出そうとするんだけど、全然詞が出てこないのね。

「あ、そういえば作詞やりたいって言ってた奴がいたな」と思い出して、彼に電話したんです。

新沢さん:僕、コタツに入ってテレビを見てたんですよ。黒電話が鳴って、出たら中川さんで、「2月号の詞書いてくれない?」と。僕は「はい、じゃあ書いてみます」と言って受話器をおいて、わーっと詞を書いて、それで……、30分後に「できました」と電話をかけたの。

中川さん:「早いな」と言ったら、「はい、3つできました」って。当時は、ファックスもないから、電話送りでね。どれも、よかったんだけどね。その中のひとつに曲をつけて、

新沢さん:オニはうちでひきうけた』。それが、第1作なんですよ。

これまでのいわゆる童謡とは、ちょっと違ったんです。歌詞にはコタツやみかんが出てきて、場面は完全に日本。だから日本のわらべ唄のような、節分らしい曲がついてくると思っていた。
でも中川さんから出てきたのは、3拍子でモダン、まるでヨーロッパのワルツみたいな曲だったんです。そのときに僕はすごく、新しい風を感じたんですよ

中川さん:それは僕も一緒ですね

新沢さん:その後二人での連載が始まって……編集部もよく連載を任せたなと。大役を任せてくれて、とても自由にのびのびと作らせてくれました。どんどんいい曲がついていくから、あんなに幸せなことはないって感じでしたね。

中川さん:あのころは本当、蜜月時代だった。子どもをガンガン産んだ感じ。

ずっと歌われる歌を作ってこれたのは、大変な幸せ

—— 蜜月時代から30年。おふたりで30年間一緒に活動されてきて、ケンカすることなどはなかったのですか?

中川さん:そりゃ、僕が上ですから(笑)。

新沢さん:僕より中川さんの方が9つ年上だから……。でも僕が生意気というか、年上の人や偉い人にも臆さないで、喋りたくなっちゃうタイプだったので。中川さんが、僕が9つ下なんて意識しないでいてくれたことも、とても大きかったと思う。

中川さん:このチームが長続きした理由は、そこが一番大きかったかな。

新沢さん:にじ』だって、もう27年も前……ありがたいなと。

子どもに関わる仕事というのは、絵本にしても歌にしても、ロングセラーなんですよね。ずっと歌われるようなものを結果的に作らせてもらってるって、大変幸せなことだと思うんです。

企画やコンセプトがしっかり作られてしまうと、実は作品のオリジナリティが狭められちゃうんですよ。企画ありきになるから。そうやってできたものは、ある企画には合っているかもしれないけど、何十年も続く、本当のスタンダードを作ろうと思ったら、……ちょっと違うんじゃないかなと思ったりする。

中川さん:子どもの歌は、いい歌がずっと歌われます。『ぞうさん』や『サッちゃん』もそうですよね。自分たちの作る歌が、ああいう存在になってほしいとつねに思ってはいたね。

新沢さん:世代を越えて、時代も越えて、歌われたい。

中川さん:そこは、9つ下の彼と共有できた感覚だったから、すごく嬉しかったな。

長きにわたって愛される歌が作られた背景には、おふたりの年齢差を感じさせない関係性と、「時代、世代を超えて歌われたい」という思いがあったのですね。

今もなお、活躍の場を広げ続けるおふたり。これからも子どもたち、そして大人たちの心に残る歌を作っていただけることでしょう。

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取材、文・編集部 撮影・山口真由子

新沢としひこ 中川ひろたか うたがいっぱい♪

うたがいっぱい

【発売日】2017年7月19日(水)発売
【品番・価格】COCE-40046/7 \3,200+税

収録曲

【Disc 1 世界中のこどもたちが】
1.世界中のこどもたちが (歌・たいらいさお)
2.おはよう (歌・山野さと子)
3.ハッピーチルドレン (歌・山野さと子 ほか)
4.ハロー! (歌・山野さと子 ほか)
5.おひさまになりたい (歌・山野さと子、新沢としひこ ほか)
6.パレード (歌・山野さと子 ほか)
7.スキップ (歌・岡崎裕美、セトちゃんず)
8.よーい・どん! (歌・山野さと子 )
9.だいだいだいぼうけんのうた (歌・山野さと子 ほか)
10.我が心のフロシキ (歌・中川ひろたか) ※新録音 初CD化
11.風はともだち (歌・かおりくみこ、セトちゃんず)
12.今日はバナナの日 (歌・山野さと子、新沢としひこ ほか)
13.うさぎ野原のクリスマス (くまいもとこ、佐久間レイ、松野太紀)
14.チャンス (歌・山野さと子、新沢としひこ)
15.スマイル (歌・山野さと子、新沢としひこ)
16.心にりんごがひとつある (歌・山野さと子、新沢としひこ ほか)
ボーナストラック
All the Children of the World(世界中のこどもたちが 英語Ver. 歌・Alissa Caldwell ほか)
【Disc 2 にじ】
1.歌がいっぱい (歌・中川ひろたか) ※書きおろし新曲
2.にじ (歌・新沢としひこ)
3.はじめの一歩 (歌・高瀬麻里子、竹内浩明、NHK東京児童合唱団)
4.きみとぼくのラララ (歌・稲村なおこ)
5.ともだちになるために (歌・KONISHIKI)
6.ゆびきり (歌・新沢としひこ)
7.くちぶえ (歌・中川ひろたか) ※新録音
8.あたたかい日 さむい日 (歌・新沢としひこ)
9.くじらのうみかもめのそら (歌・杉並児童合唱団)
10.雨ふり水族館 (歌・新沢としひこ)
11.かめのえんそく (歌・中尾隆聖、西村ちなみ)
12.空より高く (歌・ことのみ児童合唱団、コロムビア父母会コーラス)
13.ぼくたちのうた (歌・木村真紀、ひばり児童合唱団)
14.えがおのままで  (歌・山野さと子、新沢としひこ)
15.今日も空は青いよ (歌・中川ひろたか、新沢としひこ、山野さと子 ほか)
16.誰かが星をみていた (歌・新沢としひこ)
*ボーナストラック
A Rainbow (にじ 英語Ver. 歌・Alisa Fukuda)全34曲

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