<見逃してない?小さなSOS>赤ちゃんの肌トラブルは“将来の食物アレルギー”のサイン?

生まれたばかりの赤ちゃんの頬がカサカサしていたり、腕や脚にポツポツとした湿疹が出ていること、ありませんか? 「乾燥かな」「ちょっとかぶれただけかも」などと思いがちですが、実はこうした小さな肌の変化が、将来の食物アレルギーと関係している可能性もあるそうです。
赤ちゃんの肌は、大人よりずっと薄くてデリケート。だからこそ、生まれてすぐの時期からしっかりと肌を守ってあげることが、アレルギーを防ぐ第一歩になるといいます。
そう教えてくれたのは、国立成育医療研究センター アレルギーセンター診療部長・山本貴和子先生。今回は、ママたちが気になる「赤ちゃんの肌トラブル」と「アレルギーの関係」についてお話を伺いました。

ほとんどのママが経験!赤ちゃんの肌トラブルの正体
──赤ちゃんの肌トラブルにはどんな種類がありますか?
山本貴和子先生(以下、山本先生):よくあるのは「乳児湿疹」。生後1か月頃までは「新生児ざ瘡」や「脂漏性皮膚炎」と呼ばれるものが多いですね。おしりのかぶれは「接触皮膚炎」、あせも(汗疹)も肌トラブルのひとつです。診断名で言えば、本当にさまざまな種類があります。
──見逃していいものと、注意が必要なものの見分け方はありますか?
山本先生:親御さんの判断で見極めるのは難しいです。「よくあることだから」と自己判断で様子を見るのが一番よくありません。中には感染症が原因のこともあるため、早めの受診が安心です。肌トラブルが気になるときは、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。成育アレルギーセンター出身の先生方のリストもご紹介しています。
日常のケアでできることと、アレルギーとの関係
──洗剤や衣類の素材など、生活環境も関係しますか?
山本先生:関係する場合があります。洗剤では、「すすぎ不足」で洗剤成分が肌に残ってしまうことがあります。洗剤の種類にこだわるよりも、“しっかり洗い流す”ことが大切です。
また、服の素材が刺激になったり、ズボンのゴムで肌がこすれ、湿疹につながることもあります。素材も大事ですが、汗をかいたらこまめに着替えることもポイントです。

──親にアレルギーがある場合、子どもも注意が必要ですか?
山本先生:親がアトピーやアレルギーを持っている場合、子どももリスクが高くなります。
ただし、今は適切な治療で発症を防げたり、重症化が予防できる時代。赤ちゃんに肌トラブルが見られたら、「よくあること」と流さず早めに受診してください。肌を整えておくことで、アレルギーの引き金となるIgE抗体(※)ができるのを抑えられるといわれています。
アトピー性皮膚炎とアレルギーの関係
──肌トラブルが食物アレルギーにつながることがあるんですか?
山本先生:そうですね。アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが壊れていると、皮膚から食物成分などのアレルゲンが侵入し、IgE抗体が作られることがあります。こうした一連の流れを「経皮膚感作」と呼びます。これが将来、その食材に対する食物アレルギー発症につながることがあるのです。
──ちなみに「アレルギーマーチ」とはどんな状態ですか?
山本先生:赤ちゃん期から成長とともに、アトピー性皮膚炎→食物アレルギー→気管支ぜんそく・アレルギー性鼻炎と、複数のアレルギー症状が順に現れていく傾向を指します。
──まずは「皮膚の炎症をしっかり治す」ことが大事ですか?
山本先生:早期に湿疹をしっかりケアすることで、炎症をしっかり抑え、つるつる・すべすべの肌を維持することで、その後の食物アレルギーリスクを下げられる可能性があります。
治療は「見た目」だけで判断しないことが大切
──治療はどのように行われるのですか?
山本先生:赤ちゃんの皮膚は薄くてデリケート。見た目には落ち着いているようでも、皮膚の奥で炎症がくすぶっていることがあります。そのままにすると、少しの刺激や乾燥で再び湿疹が悪化してしまうことも。「かゆみが治まったから大丈夫」と自己判断でやめずに、医師の指示に従ってつるつる・すべすべ肌を維持する治療を続けることが大切です。
──治療にステロイドを使うのは不安ですが……。
山本先生:その気持ちは多くの親御さんが抱いています。アトピー性皮膚炎の基本は保湿で皮膚のバリアを整えることと、炎症に対してステロイドなどの外用薬でしっかり抑える必要があります。最近は、非ステロイド系の局所の分子標的薬も赤ちゃんから使えるようになっています。
ステロイドというと「強い薬」「副作用が心配」と思われがちですが、正しい種類・量・期間を守れば安全に使える薬です。症状が強いときに短期間しっかり使い、その後は、薬の種類や頻度をかえることによって副作用がでないよう治療できます。
「怖いから控える」よりも、「正しく使って早く良くする・薬を徐々に減らしていく」ことが結果的に肌を守ります。不安があるときは、「この薬はどのくらいの強さ?」「どの部位にどれだけ塗ればいい?」と遠慮せず医師に確認してください。塗り方を一緒に確認してもらうだけでも、安心感が大きく変わりますよ。
赤ちゃんの肌を守ることは、未来の健康を守ること

赤ちゃんの肌は、体の中でいちばん外の世界と触れ合う場所。だからこそ、少しの変化を見逃さず、しっかりケアしてあげることが大切です。
肌を整えることは、単なるスキンケアや治療だけではなく、将来の食物アレルギーを防ぐための“最初の予防の入り口”。「よくあることだから」と流さずに、迷ったら医師に相談しましょう。日々のケアと、正しい治療の積み重ねが、赤ちゃんの未来を守ってくれます。
アレルギー研究に協力してくれる親子を募集!
ワクチンデビューの時期に手足まで広がる湿疹はありませんか?
乳児期の肌トラブルは、のちに食物アレルギー発症の発端となる可能性があることから、早期に治療を開始することが必要です。国立成育医療研究センターでは、生後42〜90日以内の赤ちゃんで、アトピー性皮膚炎である子を対象とし、早くから治療することで食物アレルギー予防対策をできるかを調査するための臨床研究を行っています。食物アレルギー検査や専門医による離乳食指導も行います。ぜひご協力ください。
山本先生からMessage
国立成育医療研究センター アレルギーセンターに受診すると、研究の他に、アレルギー専門医による赤ちゃんの湿疹治療やアレルギー検査、離乳食のアドバイスが受けられます。1〜2か月ごろの赤ちゃんで、手足まで広がる湿疹がある場合は、ぜひご参加ください。
体の中で「アレルギー反応」を起こすスイッチのようなもの。本来はダニや花粉などの“異物”から体を守るために働くのですが、アレルギー体質の人は、食べ物など本来無害なものにまで反応してしまう。
たとえば卵を食べたときに、「これは敵だ!」とIgE抗体が反応して、体の中で免疫反応が起こって、かゆみ・発疹・咳・くしゃみなどの症状が出ることがある。
提供:国立成育医療研究センター
