<母親やめてもいいですか?>出て行った母。外の世界を知り気づいた違和感【第11話:息子の気持ち】
前回からの続き。今から十数年前、俺コウタロウには小学4年生から中学1年生まで学校へ行けなくなった期間があった。母さんは仕事を辞めて俺をサポートしていたが、父さんやじいちゃんばあちゃんに責められ、殴られたり蹴られたりしていた。高校生になった俺が同じように母さんを罵倒するようになると、ついに母さんは家を出て行ってしまった。
普段は短髪にしているけれど、湿気の多い日などは毛先が少しうねってしまう。友人からそのことを指摘された瞬間、ヤバいって思ってしまった。小学4年生のとき、このくせっ毛のせいで嫌な思いをさせられたんだ。思わずうねった部分を手で隠してしまったけれど、友人の反応は思いがけないものだった。
またからかわれる……そう思って焦る俺に向かって「伸ばさないの? 絶対に長い髪も似合うと思う。自然にパーマがかかっているみたいでうらやましいよ」「俺なんて、どストレートだからワックスとかつけてもキマらないし……なかなかアレンジが難しいんだよな~」そうやってなにげない会話が続く……。俺はすっかり拍子抜けしてしまった。
高校の友人たちはみな、いつも笑顔で優しかった。俺がどんなに失敗しても、それをからかったり責めたりすることなく「ドンマイ! 気にすんな」「そういうときはパーッとカラオケでも行って気分転換してこようぜ!」
失敗を許してくれる。どんな俺でも受け入れてくれる。いつも俺の背中に優しく手を添えて励ましてくれるような存在……。「この気持ち、どこかで……?」おれは友人からの優しさを受け取りながら思い出していた。
それから俺は髪を整えることはせず、自然な、くせっ毛のままでいることにした。それを見た祖母や父さんは
家では失敗など「絶対に許されない」という雰囲気があった。それを当たり前に思っていたから、家では常に身構えたり言い訳を考えたりするようになっていた。けれど俺がどんなに失敗しても、高校の友人たちはいつも優しかった。家では相変わらず父さんたちは、出て行った母さんのことをバカにしていた。
「かわいそうに、コウタロウ。あの女のせいで人生を壊されてしまったんだもんな」祖父からの言葉に、俺は無性に腹が立って文句を言ってやった。「はぁ? 母さんの人生を壊したのはお前らじゃねーのかよ」
祖父を責めながら、俺は自分が恥ずかしくなって「ま、俺もだけど……」そうつぶやいた。
小学生のとき、俺は周りにいるのは敵ばかりだと思っていた。家でも父さんたちに責められることが多かった。けれどどんなときも味方でいてくれたのが母さんだった。母さんの優しさに包まれていたから、俺はまた外の世界に戻れたんだ。母さんがいなくなって「この家」の違和感に気づいた俺は「母さんに会いたい」と思うようになったんだ。
原案・ママスタコミュニティ 脚本・渡辺多絵 作画・猫田カヨ 編集・井伊テレ子