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千葉県流山市 井崎義治市長第2回「障害や国籍などの差別なく誰もが自分らしく暮らせる街へ」

流山市市長②
前回からの続き。
校則や夏休みの宿題がない小学校や、障害のある子もない子も一緒に遊べる安全な遊具が設置された公園の設置など、子どもの自主性を重視し、多様性への取り組みを積極的に行う千葉県流山市。そこには井崎義治市長自身の体験からくる、ある思いがありました。
井崎市長プロフィール

夏休みの宿題はレポートのみ「おおぐろの森中学校」

――流山市の学校では、夏休みの宿題がない学校があると伺ったのですが、本当ですか?

井崎義治市長(以下、井崎市長):流山市おおぐろの森中学校です。夏休みの宿題などは、各学校に任せていますが、おおぐろの森中学校では、「夏休みは、普段できない勉強や、旅行に行くなどして、時間を有意義に使ってほしい」とのことから宿題を出していません。課題として、夏休みに取り組んだことについて、レポートを書くこともあるようです。

おおぐろの森中学校は、2022年4月に開校したばかりの新しい中学校です。流山市では大規模な住宅開発などにより、住民が増えて子どもの数も増えています。そのため中学校を新しく増設しました。

――おおぐろの森中学校では校則もないそうですね。

井崎市長:流山市立の中学校ですが、学校の規則などはありません。5年後、10年後に規則がないかどうかはわかりませんが、もし規則を作る場合は、子どもたち主体で考えて作ることになっています。そうして子どもの自主性を伸ばしていくことを目指しています。

「多様性を尊重する条例」で街に住む人たちの意識を変えたい

――流山市では、実際に「多様性を尊重する社会の推進に関する条例」を2023年4月1日から施行したそうですね。

井崎市長:流山市では「誰もが自分らしく暮らせる街」を目標に掲げています。性的指向や性自認をはじめとする性別や、年齢、障害の有無、人種、国籍などを理由にした差別はいけないことだと、伝えていきます。条例として定めることで、みんなでしっかりと守っていこうという気持ちです。

流山市の小学校、中学校、高校には、外国籍の子どもも多数在籍しています。外国籍の方の人権擁護委員として、日本に帰化したアメリカ人の方に相談に乗っていただいています。

「差別からは何も生まれない」自身の体験をもとに発信

――井崎市長が差別問題などに積極的に取り組まれるのはなぜでしょうか?

井崎市長:私はかつて、永住権を取ってアメリカに住んでいたことがあり、そのときに文化の違いなどもあって、人種差別に遭いました。たとえば、取引先に書類を持っていった中国系アメリカ人が「アジア人からは受け取れない」と言われて帰ってきたのを見たことがありました。私自身も出向先で、ある一人の白人男性からずっと無視され続けたこともあります。毎朝、私は彼に「Good morning」と声をかけ続けていたのに、彼は一度も返事をすることはありませんでした。彼は私をはじめ、アジア人とは絶対に話しませんでした。いかにそれが不条理で悲しいことか。差別からは何も生まれないんですよ。

私は、アメリカにいるときに何度もこのような差別に遭いました。もちろん仲良くしてくれた人もたくさんいます。当時、アメリカでは差別のない社会を目指そうとしていましたが、日本も目指すべきだと思っていたのです。ところが日本に帰国して、不動産店舗の入口に「外国人お断り」と書いてあったのを見て、改善が必要と強く思いました。

――ご自身の経験から、多様性を認め合う地域社会を作ることの大切さを感じたのですね。

井崎市長:そうです。流山市が、障害の有無、国籍、人種、LGBTQなどの差別がなく、お互いに尊重・理解し、安心して暮らせる社会でありたいと考えています。

第3回へ続く。

取材、文・長瀬由利子 編集・みやび イラスト・おんたま

※本記事は2023年3月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

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