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子ども政策の司令塔「こども家庭庁」スタートでなにが変わるの?【参議院議員 山田太郎さん・第1回】

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いじめや虐待、自殺、貧困など、子どもたちのまわりにはたくさんの問題があふれています。これらの問題や課題を解決していくため、2023年4月から「こども家庭庁」がスタートします。「こども家庭庁」ができた背景や具体的な内容について、その提唱者の一人である参議院議員の山田太郎さんにお話を伺いました。
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2023年4月に誕生する「こども家庭庁」とは

――2023年4月に「こども家庭庁」が新設されるそうですね。「こども家庭庁」とはどのようなものですか?

山田太郎さん(以下、山田さん):「こども家庭庁」は内閣総理大臣を最終責任者とし、子どもに関する行政を担う機関です。一言でいえば、この国の社会や形を「こどもまんなか」へと変えていく子ども政策の司令塔。子どもにとって何が大切かを、子ども目線で考えてリードし問題を解決していく省庁です。今まで子どもたちに関する行政のサービスは、文科省、厚労省、内閣府など複数の役所にまたがりバラバラでした。そこで、各府省庁に分かれている子ども政策に関する総合調整権限を「こども家庭庁」に一本化して、各府省と連携しながら進めていくことにしました。

――何歳までの子どもが対象になるのでしょうか?

山田さん:対象年齢に規定はなく「心身の発達の過程にある者」と定義しています。そうすることで課題を抱える子どもや若者が成人してからも円滑に社会生活を送ることができるようになるまでの伴走支援も可能になります。これまでの18歳までで支援が終わるなどの「年齢の壁」を克服しています。一方、お腹の中にいる赤ちゃんも対象となり、妊娠期のお母さんや家庭への支援も含まれます。

――なぜ「こども家庭庁」ができるのでしょうか?

山田さん:自殺や虐待で亡くなる子どもがあとを絶たちません。2022年速報値ではこどもの自殺は512人と統計を取り始めてから最悪。児童相談所への通報件数、いじめ重大事案なども、年々増えています。また、女性たちのなかには出産前後にうつ病にかかり離婚、自殺してしまう人もいます。「妊婦さんの死亡原因の1位」はなんと自殺なんです。他にも、保育園の待機児童問題、不登校の子どもの増加、学校内でのいじめ、親からの虐待、学校内外や部活動でのいき過ぎた指導など、解決すべき問題がたくさんあります。これらを迅速に対応するためにもこども家庭庁が誕生しました。子どもの権利を保障し、子どもを誰1人取り残されない社会を実現することが、こども家庭庁の重要なミッションです。

――今まで問題が解決されてこなかった理由はなんですか?

山田さん:「子どもの問題は行政なり、第三者が関わる問題ではなく、家庭や家族のなかで解決してください」というのが、これまでの政治の姿勢でした。というのも一昔前は、おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさんまでいる大家族で生活していたから、子どもや家庭で生じた問題は、家族単位で解決してくださいという考え方だったわけです。確かに当時は、家庭に問題があったり離婚したりしても、子どもは親戚筋みんなで支えあうことができたんです。

しかし、核家族化が進み、夫婦共働きの家庭が増えた現在は、夫婦2人だけで子どもを育てていかなければなりません。もっといえば、ママ1人で子どもの面倒をみるワンオペになるケースも多いのが実態です。大家族が減り、核家族が増えているのなら、そのぶん社会で支えていく必要があります。子どもに関するさまざまな問題を「家庭の問題」としてきたため、対応しきれず、解決するどころか逆に件数が増えてしまったのです。

「こども家庭庁」が発足したら変わること

――「こども家庭庁」ができたらどんなことが変わりますか?

山田さん:これまで文部科学省、厚生労働省、また都道府県や市区町村などと、複数の窓口に分かれていた対応窓口は、「こども家庭庁」やそこが運営するシステムが代表窓口に移行されていくべきです。逆にいうと、一元化しないと解けない問題がいっぱい出てきているのです。

たとえば、子どもの不登校問題。子どもが学校に通えなくなったら、まずは学校の責任者と保護者が話し合いをすることになりますよね。しかし学校にまったく行かなくなってしまった場合はどうすればいいのか。精神的なケアや、家庭の問題の解決は福祉的な側面が強く、教育を司る文科省だけでは解決できません。今回こども家庭庁では、不登校の問題を文科省と厚労省が共管で取り組むことになりました。
虐待を疑われる子どもがいたら自治体と厚生労働省。離婚して子どもを育てるための養育費が不払いとなったら厚労省と法務省。児童手当は内閣府。こういった形で、現在子どもに関することがいろんな省庁や自治体にわかれているのです。

――問題によって管轄がわかれていると、対応に時間がかかりそうですね?

山田さん:もっと突き詰めていくと、病院に長期入院している子どもたちが「学校に行きたい」と言った場合、その対応はすべて家庭に委ねられてしまいます。正直、親御さんが病気の子どもをみながら必要な書類を集めて申請する……となったら、とても大変です。それら子どもに関わる対応窓口を一元化して、問題解決までの対応を丁寧に行い、スピードを速くする必要があります。

子どもやママ、パパたちのリアルな声を聞きたい

――「こども家庭庁」に、子どもたちの意見は届くのですか?

山田さん:これまで、主役である子どもの意見の聞き取りが実施されていませんでした。これからはいろいろな機会をつくり、直接子どもたちの声が反映されるようにしていくべきです。今回成立した「こども家庭庁設置法」では、組織や体制のあり方について早急に検討することにしています。子どもを取り巻く環境は、常に変化しています。臨機応変に対応することで、そのときの子どもたちにベストな環境を作っていくことが大切なのです。

――「こども家庭庁」には、誰のどんな意見をどんな方法で伝えたらいいですか?

山田さん:私たちは、ママやパパ、子どもたちが今どんなことに困っているのか、改善してほしいことはなにかなど、率直な意見を聞いていきたいと思っています。私、参議院議員の山田太郎と同じく、参議院議員で小児科医の自見はなこ議員と共同事務局でおこなっている「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」(※1)のサポーターに登録していただき、意見を送る、またはママスタセレクト編集部に送ってもらうのもいいでしょう。それぞれが抱えている問題、課題を出して、それをもとにどんな解決策ができるのか考えていきたいと思います。

【第2回】へ続く。

取材、文・長瀬由利子 編集・荻野実紀子 イラスト・マメ美

「こども家庭庁」に届けたいご意見・ご要望など聞かせてもらえますか?

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