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千葉県流山市 井崎義治市長第3回「『生きづらさ』を抱える子どもたちを支援したい」

流山市市長③

前回からの続き。
「流山市では、子育てや地域活動を通して地域住民の積極的な交流を図ったり、障害があったり不登校だったり、生きづらさを抱える子どもや大人の支援を積極的に行っています」と語るのは、千葉県流山市の井崎義治市長。どんな取り組みを行っているのか伺いました。
井崎市長プロフィール

不登校問題、引きこもり、虐待やDV、いじめ問題に苦しむ家庭の支援を

――流山市では、「生きづらさ」を抱えた人たちに向けて、積極的な支援を行っていると聞きました。具体的にはどんなことをしているのでしょうか?

井崎義治市長(以下、井崎市長):障害を抱えた人、障害者手帳を取得するまでにはいたらないけれど生きづらさを抱えている子どもや大人を、どうやって支援したらいいかを考える取り組みを行っています。「流山市生きづらさ包括支援の在り方懇談会」といい、不登校問題、引きこもりの子や親の支援、虐待やDV、いじめ等にさらされてきた経験のある方、高校未就学や高校中退等による学習機会の不十分など、制度のはざまに置かれた方や、複雑化・複合化した支援ニーズを抱えた方の支援についてさまざまな議論を重ねてきました。

「生きづらさ」を感じても「どこに相談したらいいかわからない」という方もいるでしょう。そういった悩みを受け止める先を地域の身近なところに設置し、必要な支援をその方に合わせて届けていく。現在、その体制づくりのために、現場経験のある専門家たちの協力を得て、令和6年度から始められるよう、準備しています。

どんな支援がどこで受けられるか、体験談なども積極的に紹介

――具体的な支援策を知ることができたら孤立を防ぐことにもつながりそうですね。

井崎市長:孤立を防ぐためにも情報共有はすごく大事です。そのうえで行政としては、どんな支援策があるのかをお伝えし、必要があれば各所につなぎます。
たとえば障害者の場合、どんな支援が受けられるのか、そのために利用できる施設や団体はどこか。また、不登校や引きこもりで困っている場合の相談窓口や学習支援はどうしたらいいのか。子どもが園、学校でトラブルを起こしがちといった場合の相談窓口などをホームページで分かりやすく紹介していく予定です。

ほかにも流山市に住んでいる方々で、サービスを利用している方の体験談も紹介していく予定で、現在問い合わせもいただいています。

――子どもに障害があった場合、なかなかすぐには人に相談しづらいと思います。そんなとき、自治体による相談窓口や支援先がわかったらいいですね。

井崎市長:子どもに障害があるとわかったとき、ショックを受ける親御さんも多いです。そういう親御さんのショックを和らげるためにも、早く同じような境遇の方とつないで相談する場を作ることが必要です。

あるお母さんは、「わが子が障害を持って生まれたことを実の親にも1ヶ月以上話せなかった」と言っていました。生まれたわが子を見て「かわいい」というお母さんが多いなか、その方は障害を持つわが子のことを心からかわいいと思えるまで2年かかったそうです。それまでは2年間、毎日子どもの顔をみて「ごめんね」と謝り続けていたと聞きました。その話を聞き、本当に心が痛みました。

同じ境遇の方たちがつながることで、孤立を防ぎ、少しでも生きづらい環境を改善していきたいと思います。このような懇談会は、流山のこれからの未来を作っていく非常に重要なものだと考えています。

流山に住み続けたいと思う市民は約9割。「住んでよかった」と思われるように

――これから流山市をどのような街にしたいですか?

井崎市長:障害のある・ないなどにかかわらず、住んでいてよかったと思ってくれる人を1人でも増やしたいですね。今、流山に住んでいて住み続けたいと思っている人たちは、91%います。非常に多くの方が流山での生活に満足していただいていると思いますが、反面9%の方は満足していません。残り9%の方の一人でも多くの市民が「流山市に住んでいてよかった」「流山市にいることで、自分が大切にされている」と、感じていただける市政にしていきたいと考えています。

――子育てに関してはどうでしょうか。

井崎市長:流山市では子ども関係の予算を、20年前は約60億円だったところ、今約430億円まで増やしています。ただこれで十分というわけではないと思うのです。流山市としては最大限、子育て・教育環境の充実に力を注いでいきます。

――最後に、ママスタセレクトの読者の方にメッセージをお願いします。

井崎市長:流山市は東京都心から電車で約20分です。東京のテーマパークなどに遊びに来られるときは、ぜひ自然豊かな流山おおたかの森や流山本町にまで足をのばしてくつろいでいってください。流山本町では、古民家カフェなどを展開するなど、情緒豊かなところです。また、オランダ人が作った利根運河という、内陸の運河としては一番長い運河があり、観光として訪れても楽しめます。散策をしていただき、気に入られたら流山市に引っ越してきてください。この地で家族を育み、お父さん、お母さん、子どもたちみんなが幸せになる生活を流山で作っていただけたらとても嬉しいです。

取材、文・間野由利子 編集・みやび イラスト・おんたま

※本記事は2023年3月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

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