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【日能研・小嶋隆さん第3回目】「ただほめればいい」ではなかった⁉子どもが伸びる「ほめ方」

「ただほめればいい」ではなかった
「子どもはほめる方がよく伸びる」という話をよく耳にします。しかし、ただ何でもほめればいいというわけではなく、大切なポイントがあるといいます。「ほめて伸ばす教育」を掲げる日能研関東代表を務める小嶋隆さんと、子どもの塾選びをサポートするサイト「塾シル」代表の古岡秀士さんとの対談をもとに考えてみます。
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10個注意するうちの2個はほめどころを見つける

古岡秀士さん(以下、古岡):日能研の教育の基本として、子どもの「ほめて伸ばす教育」を大切にされていますが、なぜでしょうか?

小嶋隆さん(以下、小嶋):ほめて伸ばすというよりも、単純に大人だって子どもだって「人からほめられたら嬉しいでしょ」というだけの話です。「お母さんキレイですね」「旦那さんイケメンですね」と言われた方が嬉しいですよね。子どもだってそれと同じで、ほめられた方が嬉しいんです。

古岡:いつも一緒にいるママだと難しいこともありそうですね。

小嶋:私にも子どもがいますが、親なら子どもに対してつい「早くしなさい」「何やってるの」などと言ってしまいますよね。これは当たり前のことです。怒ることや叱ることがだめというわけではなくて、子どもに10個注意したいことがあれば、せめて2つはほめどころを見つけましょう。「あばたもえくぼ」じゃないですけど、愛すべき子どもの短所は長所として、子どものいいところを見つけてあげることを家庭内でやってみてください。

「100点取れてすごいね」ではなく、がんばった過程をほめること

古岡:ほめるときはどんなことに気をつけたらいいですか?

小嶋:ほめ方について言えば「結果をほめる」のと「プロセスをほめる」のとでは全然違います。子どもは結果をほめるのではなく、プロセスをほめることが大事です。子どもがテストで100点を取れたら「100点取れてすごいね」ではなくて、「なんであなたは100点取れたかわかる?それはあなたが毎日漢字ドリルを10問ずつやっていたからだと思うよ」と、何がよかったのかを具体的に伝える。ただ単に「100点取れてすごいね」と声をかけるのとは全然違います。結果よりもプロセスをほめてあげることが大切です。

古岡:ほめ方によって子どもの教育に差は出ますか?

小嶋:米スタンフォード大学で以前こんな実験をしたそうです。小学5年生400名にテストを実施し、答案を返すときに200名は「結果」をほめ、もう200名は「努力」を続けたことをほめて、そのあとに今度は難しいテストと簡単なテストを渡して、どちらを選択するかを調査しました。
すると、「結果」だけほめた子どもたちは簡単な問題を選び、「努力」をほめた子どもたちは難しい問題をチョイスしました。なぜだかわかりますか?

古岡:結果をほめるか、プロセスをほめるかの違いですか?

小嶋:そういうことです。結果だけをほめられた子どもたちはそのあと自尊心が出てきます。故に「次も100点をとらないとだめだ」と思って簡単なテストを選んだのです。逆にプロセスをほめた子どもたちは難しい問題でもチャレンジしようという気持ちになるのです。この結果からいえることは、単純に「ほめて伸ばす」ということではなくて、本質を考えながら状況に応じてほめることが大切だということです。

「子どもの行動が気になって口を出したくなる」そんなときは?

古岡:子どもの勉強に対する姿勢にイライラしてしまうママたちはどうしたらいいですか?

小嶋:まずは子どもを「監視しない」ということです。私が保護者の方々によくお話するのは、子どもの行動の全てを見るのをやめましょう、ということ。全部見てしまうと言いたくなってしまうんですよ。イライラするのは仕方ありません。とはいえ全部見ないというのは難しいでしょうから、10のうちの2つは見ないようにする。ママだって、パパからずっと監視されて、あれこれ言われていたら嫌になりますよね。

古岡:監視しすぎないように気をつけることはありますか?
小嶋:例えば塾やピアノ、水泳でも、なんでも個別指導を希望する方がいます。親としては自分の子どもをマンツーマンで見てもらえたら「手をかけてもらえている」と期待しますよね。これは個別指導が悪いと言っているわけではありません。しかし子どもは家に帰るとそこには親がいる。習い事に行けば先生に見られている。さらに祖父母もいたとしたら一日に何人もの大人に見られていることになります。もし自分が子どもの立場だったら何人もの大人からずっと監視されるのは疲れますよね。

大事なのは「親の満足度=子どもの成長」ではないと知ること。家で少し監視のないリラックスの時間を作ったり、集団授業で一対一の重圧から解放されたり、そういう時間が子どものオンオフの切り替えを作っていくんです。

古岡:集団のメリットはなんでしょうか?
小嶋:個別指導には、例えば自分のペースで進められるなど個別指導の良さがあると思います。集団の場合は、周りにたくさんの人間がいますから「あの人の生活態度はこうだから、自分はこうしよう」というように、他者と自分を比較しながら成長することができるのです。

ルールは子ども自身に決めさせて、意見を尊重する

子どもですからゲームもやりたいし、テレビを見たい時もありますよね。そんな時「いつもゲームばかりして!」と言うのではなく、「ゲームをやるならルールを決めよう」と、まず親子でルールについて話し合うことが大切です。ここで重要なのは、親が勝手に決めないこと。きちんと子どもの意見も尊重してルールを作ることをおすすめします。

親も自分のやりたいことを見つけたらいいのではないでしょうか。そうしたら子どものことばかり見なくなるし、自分の時間が充実するからイライラも少なくなります。子どもの良いところにも目が行くようになってきます。良いところを見つけたらほめる。この繰り返しで、自然と子どもは伸びていきます。

取材、文・間野由利子 編集・北川麻耶 イラスト・めい

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