「なんとなくほめる」は見抜かれる!夫婦で「成長」を共有することで子どもは傷つかない
「子どもはほめてのばせといいますが、ほめ方を間違えたらいくらほめちぎったところで思ったようには伸びません」と話すのは、「花まる学習会」代表の高濱正伸先生。子どもが伸びる褒め方のポイントはどこにあるのでしょうか。
「なんとなくほめとかなきゃ」は子どもに見抜かれている
「子どもは、お母さんにほめられたいから勉強をがんばるし、スポーツでも一番を目指します。オリンピック選手や力士が優勝したときにいうセリフの中には、たいてい「母への感謝」があります。子どもにとってお母さんにほめられるというのはそれくらい大切なことなのです。
講演会でこう話すと、話を聞いていたママから「先生、うちの子、ほめるようなことがないです」という相談がありますが、それは子どもの良さを見つけられていないだけです。
「一番上の子はピアノで成功したし、三番目はサッカーで成功した。二番目の子も何かほめなきゃね。この間、習字やっていたからそれでいいか」といって「習字が上手だね」となんとなくのニュアンスで伝えちゃだめですよ。子どもにはバレバレです。「あ、お母さんなんかムリしてほめてるな」って。
「子どもが没頭しているもの」に注目すること
ここで1つヒントをいうと、ほめるときは「その子が何に没頭しているのか」に気付いてあげることです。ブロックでもパズルでもなんでもいいですよ。「すごくがんばった」と本人が思っているところに気づいて、がんばったことをほめる。言語化してあげることが大事です。
僕の場合は、小学校3年生のとき学年で誰も解けない問題を僕一人だけ解けたことがあって、そのときの体験が強烈に印象に残っています。先生は、「誰も解けなかったのに、高濱君、あなただけ解けたね」といってくれたのです。その言葉を聞いたとき、僕の頭の中ではプッシューと湯気が湧き出してきて、それ以来算数の勉強に夢中になりました(笑)。
お父さん要注意!ほめどころを間違えると子どもは傷つく
逆に注意したいのことは「ほめどころを間違えない」ということです。
家庭でよくある失敗を例に話します。お父さんがお母さんに「たまには子どもの勉強見てあげて」と言われて子どもの勉強を見ました。そしたら何が起こったかというと、パパは「とりあえず何かほめなきゃ」と思うわけです。それで「お前、3ケタ×3ケタの計算ができるようになったな」というわけです。
それはパパからしたら「ほめたつもり」なのですが、子どもからしたら「いや、それも1ヵ月前にできたことなんだよ。頑張ったところはそこじゃない……」と思ってしまいます。子どもは、その父親の言葉に地味に傷つくのです。
子どもの成長を夫婦で共有し、「がんばってできたこと」を言葉に出して伝える
なにがいいたいかというと、「今、子どもは何に夢中になっていて、何をがんばっているのか」をしっかり見てあげることが大切です。これは親や学校の先生の課題です。本当にその子のことを理解してあげないと、ほめどころを見失うことになるのです。「この子はずっとこういうところができなかった。でも今日やっとできるようになった」ということを、言語化してあげる必要があるのです。それこそが、子どもの自己肯定感につながります。
だからこそ、日々子どものことをよく観察して、普段からお母さんとお父さんで共有し、言葉に出して子どもに伝えてあげることが大切なのです。たったそれだけで、その後の子どもの伸びは全然違ってくるのです。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶