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子どもたちが放課後を過ごす学童保育。どのように安心や安全を確保して子どもたちを守っているの?

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小学生が通う学童保育は、学校が終わった子どもたちが放課後の時間を過ごす場所です。利用を考えているママたちのなかには、子どもにとって安心して過ごせる場所なのかが気になる人もいるのではないでしょうか。施設のセキュリティや安全管理にどのような方法がとられているのかも知りたいところ。学童保育はどのように安全や安心を確保し、子どもたちを守っているのでしょうか? 東京都杉並区にある総合学童保育「AfterSchool Kugayama Kids」を運営する、一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希さんにお話を伺いました。

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学童保育が子どもにとって安心できる場所であるために、心掛けていること

――学童保育では子どもたちが安心して過ごせるよう、どういった配慮をしていますか?

学童保育ではさまざまな子どもたちが、同じ空間で過ごすことになります。そして小学生ともなると、成長していろいろな言葉を使うようになると感じています。どんどん語彙が増えていく時期でもあり、ときには相手を不快にさせるような言葉を覚えてくることもありますね。
そのため子ども同士でトラブルになったときは、言葉を使った言い合いのケンカになることが多いです。職員はあくまでも中立の立場で話を聞き、子どもに寄り添うよき相談者であり、よきアドバイザーであることを心掛けています。

――子ども同士のケンカトラブルが起きてしまうことはありませんか?

学童保育としては、子どもが他の人たちとポジティブなやりとりをするスキルも伸ばしていきたいと考えます。もしも子ども同士でケンカが起きてしまったときは、職員が中立の立場で介入し、どのように解決したらいいかを自分で考えられるよう導いていきます。まずは子どもが自分の意見を職員に伝えられるよう、子ども同士を離します。その際のポイントは、途中でケンカ相手からの反論がはさまれないよう、子どもと職員との会話が聞こえない距離にまで離すことです。その上で子どもたちそれぞれの意見を聞いて、子どもの気持ちを受けとめます。

以前、小学生の女の子2人がケンカしたときの話です。AちゃんとBちゃんそれぞれの話を聞いてみると、Aちゃんからは「Bちゃんとだけ遊びたい」。Bちゃんからは「Aちゃんは好きだけどAちゃん以外の子とも遊びたい。またAちゃんが遊びの指示を出したり不機嫌になったりするのがいや」という話がありました。そこでAちゃんには、他のお友達とも遊んでみることを提案しつつ、「言い方や態度も接し方を変えたらもっとBちゃんや他のお友達とも仲良くなれるよ」と伝えました。Bちゃんには「自分の気持ちを相手に伝えることも大切なこと。また指図されるだけではなく自分からも遊びを提案してみては」と伝えました。BちゃんはAちゃんに自分の気持ちを伝え、それ以降2人でも仲良く遊べるようになり、またお互いに他のお友達とも遊べるようになりました。

今回の件は、小学生女子によくある話です。男の子の場合はその場の感情のぶつかり合いからケンカになることが多く、少し離して冷静にさせることですぐ仲直りすることもあります。しかし女の子の場合は割と相手との繋がりを求めたり、ときには精神的に支配したがったりもするので、この年代は丁寧な関わりが特に必要になってきます。まずは子どもたちそれぞれから丁寧に話を聞き、そのうえでお互いが納得できるように話し合いの場を作ることが大切です。

保育園や幼稚園とは違う、学童保育ならではの安全管理とは

――学童保育では子どもたちの安全をどのように確保しているのでしょうか。

学童保育では基本的に職員が子どもたちひとりひとりの入退室を把握しています。私も出入りするときは周囲に部外者がいないか確認し、不審者が入り込むなど不測の事態が起きないよう注意を払っています。子どもを守るための防犯の研修を受けるなど、安全に関しては日頃から全ての職員が意識しています。なかには警備会社による最新のセキュリティシステムを導入していたり、小学校の校門前までバスで送迎したりして子どもの安全を守るようにしている学童保育もありますね。もし安全管理上で気になる点があれば、ぜひ職員に尋ねてほしいと思います。

――小学生対象の学童保育は、保育園や幼稚園と比べてセキュリティが手薄なのではないかと心配です。

最初はそう感じる保護者の方もいるようです。実際に私どもの学童保育にも系列の保育園や幼稚園がありますが、人の出入りに関するセキュリティチェックは学童保育よりも厳しいです。たとえ保護者の方であっても門の中に入るためにはセキュリティカードが必要ですし、登録されている保護者以外の方には子どもを引き渡すことはしません。子どもをお迎えに来る方がその日だけおばあちゃんになるなど、たとえ代わりに引き渡すのがご親族の方であっても保護者から事前に申し出ていただく必要があります。幼児を預かる園として徹底した安全管理を意識しながら運営しています。

一方で、小学生は自分で学校に行きますよね。保育園や幼稚園のころのように保護者全員が付き添うこともなく、子どもだけで歩いて登下校することもあるでしょう。学童保育は厳しいチェックもなく自由に侵入できるイメージがあるかもしれません。しかし一見そう見えていても学童保育側はきちんと人の出入りを把握していますし、職員全員が安全管理についての研修も受けています。セキュリティ面を心配されている保護者の方には、保育園や幼稚園時代とは違う、小学生の年代の子どもに適した安全管理方法を取っていることをお伝えしています。

――子どもの安全を心配する保護者にできることはありますか?

小学生になることは、自立への第一歩を踏み出したということだと私は考えています。子どもが自立して行動できるようになるために、まずは大人が環境を整えてあげることが大切でしょう。お住まいの地域や通っている学校によっても事情は異なるでしょうが、「下校時は一人にならない」「寄り道をしない」など注意すべきルールが定められている場合もあると思います。ご家庭では子どもが歩く登下校や学童保育までのルートを確認し、だんだん付き添いの距離を減らすなど段階を踏みながら、子どもの自立への支援をしてあげられるといいですね。親御さんの高い安全管理意識が伝わると、子ども自身に「自分で気をつけよう」という意識が育ってくると思います。

――親は心配するだけではなく、子どもの自立への第一歩を支援することが大切なのですね。

子どもを心配する気持ちは、親としてごく自然なことでしょう。しかし子どもはいずれ成長し、中高生や大人になっていくものです。この先いつまでも親が子どもの登下校に付き添ってあげられるわけではないですよね。心配しすぎるあまり、親が過保護と思われるレベルで接してしまうと、結果として子どもの自立を妨げてしまうかもしれませんね。自分で考えて行動するという経験は、子どもの自信につながるいい機会です。親は子どもの安全を充分確保した上で、ぜひ見守ってあげてほしいと思います。

取材、文・長瀬由利子 編集・井伊テレ子

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