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働くママが多い「海外の学童」はどうなっているの?ママの働き方とのバランスは?

※2018年7月時点の情報です。

Smiling female teacher with schoolchildren in classroom

女性の社会進出が進む海外。学童の現状は?

女性の社会進出が進み、学童を利用する家庭も多くなりました。それでも、学童に入れない待機児童の問題があったり、閉所時間に合わせてママが働き方を変えざるをえなかったりと、育児と仕事の両立は難しく、ママたちは試行錯誤しながら、やりくりしています。
ところで、日本よりママの就業率が高い海外の学童は、どのような状況なのでしょうか? ママの仕事とのバランスはとれているのでしょうか?
2008年に日本総合研究所が行った「諸外国の放課後対策」の調査を基に、調べてみました。

参考:厚生労働省「平成29年(2017年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」

国の保育方針が分かる海外の学童と、女性の働き方の関係

フランス

フランスは、ママの就業率が高い国です。25~49歳までの女性の就業率は80パーセント(2008年)、3歳以下の子1人を持つカップルの女性の就業率は81.3パーセント(2005年)なのだそう。そのため、学童を利用する家庭が多く、3~6歳までの子どもが55パーセント、7~14歳では45パーセントの家庭が利用しています(2008年)。しかし、日本と違いフランスは総労働時間が短いため、学童の長時間化はありません。
フランスの学童は、「余暇センター」と呼ばれています。フランスでは、子どもが学校で教育を受ける権利と同時に、余暇を過ごす権利を持っています。この「子どもの余暇」に主眼を置き、食事や休息を中心として作られた集団生活の場となっています。宿題をみる時間といった指導員の管理が認められていなかったり、集団で必ずしもいる必要はなく、一人でいる時間も尊重したりと、子どもの主体性を重視した自由な空間となっています。

スウェーデン

日本では、学童や保育園は、厚生労働省が管轄する「保育」として考えられていますが、スウェーデンでは、1996年に「保育」と「教育」を統合しています。そうすることで、特に低学年児童のフォローがスムーズに行く面が多いのです。たとえば、プレスクール(保育園のような就学前学校)が小学校と同じ施設に配置されたり、すべての保育士に大卒資格を推奨したり、「保育」と「教育」の垣根をなくす努力がなされています。
また、2000年からは学童について、「子どもの幸せを促進する」という子どもの権利に主眼を置く政策に変わりました。保育を親基軸に考えるのではなく、子どもを基軸として考えるようになったのです。これによって、学童が、親が働いているから入れる場所ではなく、親の就労に関わらずすべての子どもが受けられるサービスとの見方に変わりました。そのため、親が失業中だったり、兄弟姉妹の育児休暇で親が家にいたりといった場合でも、学童に入ることができます。また、親のどちらかまたは両方が夕方6時には帰宅できる就業環境なので、学童の長時間化もありません。ちなみに、この子どもの権利に基づいて、保育園は親の就労有無に限らず希望するすべての子どもが入れるようになりました。
内容は、遊びや創作活動を中心として、子どもの情緒面の発達に力を注いでいます。

フィンランド

福祉国家として名高いフィンランドですが、放課後の取り組みも「子どもの福利」の理念に基づいて考えられています。したがって、待機児童の問題はあるものの、保育を受ける権利として、義務教育段階のすべての子どもが学童保育サービスを受けられることを目標にしています。
フィンランドの学童保育は、趣味や余暇活動の機会平等と、子どもたちの社会からの疎外を防ぐことを主な目的としているため、その内容は、趣味の時間や、スポーツや芸術、家事的な活動と多岐にわたっています。
また、フィンランドの一般的な就業時間は、8~16時であるため、多くの家庭で17時にはママもパパも帰宅できる環境です。そのため、朝の学童もありますし、午後の学童も長時間化されません。

ドイツ

ドイツでは半日制の学校が多いため、学校が昼過ぎには終わります。そのため、学童保育では、昼食を提供することが大きな役割となっています。
内容は、自由な遊びのほか、宿題支援や、語学、料理、スポーツなどさまざまなプログラムが提供されており、15時半ごろまで開園しています。学童時間が短いのは、親の労働時間が短いため、親の帰宅時間が早いからです。
また、働く親に対して年に30日の長期休暇や、家族の病気休暇、冠婚葬祭用の休暇なども保証されているため、子どもの長期休暇や病気に対応することが比較的容易です。また、短時間正社員としてのパートタイム勤務に移行できる制度もあります。その場合はもちろん正社員と同じ待遇です。

アメリカ

アメリカは、18歳未満の子どもの44パーセントの親が共働きであったり、母子家庭の子供が20パーセントを超えているため(2008年)、親以外が子どもを放課後にケアする必要性が高く、学童だけでなく、ベビーシッター、放課後の学習プログラムといった放課後事業が充実している国でもあります。また日本よりも労働時間が長いことも、放課後事業が多い理由です。
また、アメリカでは、保護者の監督責任という理由から、12歳未満の子どもを子どもだけで置いておくことを禁止しています。放課後に青少年が犯罪に巻き込まれる率が高いとの調査から、放課後活動の役割は、非行を防ぐことに注力されているところが特殊です。実際に、放課後活動に参加している子どもは、参加していない子どもに比べて、飲酒・喫煙・性交渉を経験する可能性が低く、マリファナなどの麻薬を使用するリスクが3分の1であると指摘されています。
また、教育格差が激しいため、貧困地域の成績の低い学校に通う子どもの補習や、移民への英語教育を行っている学童があるのも特徴的です。また、逆により成績の高い子どもの能力を伸ばす英才教育の場として、放課後を利用する事業もあります。

海外の学童の現状から見える、日本に足りない視点とは?

学童の在り方は、各国の保育に対する価値観や女性の働き方や就業率、犯罪率の高さなどを含めた社会情勢が反映されているようですね。
興味深いのは、学童を「子どもの余暇支援」として捉えている国が多いことです。そして、子どもの「余暇」を重視している国は、ママの働く時間が短かったり、家族との時間がもてるように働き方が配慮されていたりと、育児と仕事のバランスがとれている国が多いように思います。
また、学童を子どもの幸せを促進するという「子どもの権利」として捉え、親が働くから入れる場所ではなく、すべての子どもが希望すれば入れる場所として考えているところも日本と違う点でしょう。
これらの調査を行った日本総合研究所の池本美香さんによると、ママのワークライフバランスが確立されている国ほど、子どもの「ワーク(=学業)ライフ(=余暇)バランス」と「子どもの人権」を尊重している傾向がある、と分析しています。
池本さんは、こう述べています。

“なぜ、日本にこの2つの視点がないのかを考えてみると、それは大人にもワークライフバランスや人権の視点がないからだということに気づく”
“親の就労にあわせて学童保育を増やすことは必要だが、議論をそれだけにとどめず、大人にも子どもにも自由で主体性を発揮できるという意味での「放課後という時間」を確保することを議論してはどうか。“

たしかに、イギリスの新聞「エコノミスト」が2017年に行った「働く女性にとってベストな国ランキング」で日本はワースト2位でした。昔から「働きすぎな日本」とも言われていますよね。また、国連が2018年に行った「世界の幸福度ランキング」では、54位でした。もちろん幸せの定義は人それぞれですが、なかなか興味深い調査結果です。
日本政府も、女性の社会進出の高まりに合わせて、学童の設置数を増やしたり放課後事業を展開したりしていますが、そういった取り組みとともに、ぜひ、ママの「ワークライフバランス」や「幸せを促進する権利」を大切にした働き方改革も、すすめてほしいですね。

「海外の子どもたちの放課後の過ごし方は?学童以外のさまざまな取り組みを紹介」では、海外の学童についての国別の特色を比較しています。こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。

参考「子どもの放課後を考える-諸外国との比較でみる学童保育問題」

文・MAYA 編集・横内みか

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