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学童は、ただ「放課後を過ごす場所」じゃない。学童保育を充実させる取り組みとは

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共働き家庭の増加に伴い、小学生の子どもを学童保育に通わせている家庭も多いことでしょう。放課後も子どもを安全に預かってくれる場所があれば、保護者は安心して働くことができそうです。2019年度からは子どもの安全・安心な居場所確保などを目指し、厚生労働省と文部科学省が定めた「新・放課後子ども総合プラン」もスタートしました。学童保育を取り巻く現状や課題について、総合学童保育「AfterSchool Kugayama Kids」を運営する一般社団法人キッズコンサルタント協会代表理事の野上美希さんにお話を伺いました。

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子どもが学童保育で過ごす時間は、学校にいる時間よりも長い!?

――学童保育は放課後のほか、長期休みに通う子どももいますね。子どもたちは学童保育で年間どのくらいの時間を過ごしているのでしょうか。

小学校低学年の子どもが学校にいる時間は、だいたい年間を通じて約1,200時間と言われています。学童保育の場合は学校の長期休みになると、朝から夕方までずっと利用する子どももいます。そのため全て利用した場合、学童保育で過ごす時間は年間約1,600時間にもなります。学校にいる時間よりも、年間約400時間も多くなります。

――長時間を過ごす学童保育での経験は、子どもの成長に大きく影響しそうですね。

とても重要ですね。特に小学校低学年のころは、友達とのコミュニケーションやさまざまな体験を通して大きく成長していく子どもが多いと感じています。もちろん預かった子どもたちにトラブルが起きないよう、最低限ケンカやケガが起きないように見守るというのも学童保育の大切な役割でしょう。ただ理想を言えば、子どもたちがさまざまな体験を通じて能力を伸ばせるような活動も、どんどん取り入れていきたいものだと考えています。

学童保育は人手不足?子どもを守る指導員の役割とは

――学童保育では職員の数や資格に決まりはあるのでしょうか?

2015年度から施行された「放課後子ども総合プラン」では、小学生の放課後の居場所を増やす取り組みとして、学童保育を含む「放課後児童クラブ」約30万人分を新たに整備するといった内容が盛り込まれました。また「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」において、1教室に職員を2人以上置くこと、そのうち1人は保育士や社会福祉士などの有資格者で、かつ都道府県の研修を受けた「放課後児童支援員」であること、などの全国一律のルールが定められました。

ただこのルールは2019年には「従うべき基準」から「参酌すべき基準(参考にすべき基準)」となり、職員の配置や資格の基準が地域の実情に応じて緩和できるように変更されたのです。厳密に決めたはずのルールがたった4年で変わってしまうなど、学童保育の運営基準についてはまだ国も試行錯誤しているのが現状のようです。

※参考:朝日新聞/学童保育の基準廃止へ 厚労省方針、保護者らの団体反発

――なぜ「従うべき基準」として定められたルールが緩和されてしまったのでしょうか?

基準を満たす人材を確保できないため、待機児童が解消できないという地域の実情があり、「全国知事会」が見直しを求めたという経緯があるようです。
学童保育の職員が足りないために、基準を満たそうとした場合に学童保育施設の運営自体ができなくなる恐れが出てしまったのです。同時期に国は幼児教育・保育の無償化を行い、保育士の待遇を改善して待機児童問題も解決しようとしているため、限られた予算のなかで学童保育の人材不足まで解消するというのは難しいのかもしれません。

――地域によっては学童保育の職員は人手不足なのでしょうか。

残念ながら自治体のなかには、地域の最低賃金に近い時給で学童保育指導員を雇用しておきながら、職員が定着しない、人手が足りないと嘆いているところもあると聞きます。専門的な知識や経験が給与に反映されないのであれば、長く勤めようと思う人が少ないのは当然かもしれません。保育資格など専門のスキルを持つ方々ならば、給与体系が整っている他の職場を選ぶでしょう。学童保育指導員はただ子どもと同じ空間にいて見守っているだけの仕事ではありません。子どもの安全管理や衛生などに関して専門知識やケアが求められる職業だということが、もっと知られてほしいと思います。

――もし学童保育の職員の人数が足りていなければ、子どもたちの過ごし方にも影響が出そうですね。

私は適切な人員配置ができていない状況での運営は、子ども達の心の育ちに大きな影響を及ぼすと考えています。ただでさえ子どもたちは、小学校と学童で長時間を過ごす生活にストレスを感じることもあるでしょう。子ども達の心に寄り添えるような、保育の専門スキルを持った職員の配置が少ない場合、どうしても子ども同士のトラブルなどに発展するリスクが高まってしまいます。また誰かに気持ちを受け止めてもらえないまま時が過ぎてしまうと、子ども自身に学童保育へ行きたくないという気持ちが芽生えることもあるかもしれません。その結果、保護者が働き続けられないような状況になってしまっては困りますよね。

高いスキルを持つ職員が充分な人数確保できれば、子どもの気持ちに寄り添ってあげられ、安全にさまざまな体験活動を行うことも可能です。子どもの豊かな成長を支援していくためには、やはり学童保育の職員の数や質はとても重要だと考えます。

地域で子どもたちを見守る体制を作ることが大切

――保護者として、学童保育の充実のためにできることはあるでしょうか。

昔は「かぎっ子」と呼ばれ、自宅の鍵を持たされて放課後を一人で過ごす子どもも珍しくありませんでした。しかし現在では子どもを狙った犯罪を懸念して、一人で過ごさせるのはとても心配だという保護者の方も多いでしょう。日頃から意識して交流したりコミュニティを作ったりして、学童保育に通う子どもを地域の人たちにも見守ってもらえるような体制を作ることが重要だと思います。例えば学童保育の中には、利用する子どもの数に対して十分な広さの敷地を用意することができないケースもあります。普段から地域の人に見守ってもらうことで、困っている子どものために場所を提供しようという方が現れたり、空き地を有効活用してほしいと申し出てくれる人がいるかもしれませんね。多くの人に学童保育への関心を高め、子どもにとっての重要性を認識してもらえれば、充実させていこうという動きにもつながっていくだろうと考えます。

厚生労働省と文部科学省が定めた「放課後子ども総合プラン」では、地域の人々が一体となって子どもに関わる体制についても触れられています。地域に住む高齢者や主婦、大学生、企業OB、民間教育事業者、文化・芸術団体……。さまざまな人材の参画を促進することで、次世代を担う子どもたちを共に育てる機運を高めようとしています。子どもの安心・安全な放課後の居場所を確保するだけではなく、地域に住む多様な人々が関わって学習支援や体験プログラムを充実させることも目指しています。
2019年からは取り組みを一層推進するため「新・放課後子ども総合プラン」が施行されました。たくさんの地域の人が協力し「共に育てる」という意識を持つことで、子どもたちの成長を支援してあげられるといいですね。保護者の皆さんには、子どもたちのためにも地域の人々と積極的に関わってコミュニケーションを取ることをお勧めします。

取材、文・長瀬由利子 編集・井伊テレ子

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