山口智充:第7回 結局のところは愛。それが溢れる環境を作ることが、僕の課題です
コマーシャルなどで“よきパパ”の姿を印象づけている山口さんですが、実生活でもふたりの息子さんとひとりの娘さんのお父さん。これまで子育てについてのお話などをお聞きしてきましたが、今回は奥さまについてのことをうかがいます。
奥さまは、どんなお母さんですか?
基本やさしく、ときにきびしく。やっぱり僕よりもきびしいですね。それでいいと思います。子どもたちもちゃんと聞いていると思うので、僕がみなまで言う必要はないなと思っています。きびしいのは本気で子どもたちのことを考えてくれているから、そうなのであって。
お母さんになってから、以前と変わられたところはありますか?
頼もしいですね。つねに子どものことを一番に考えているので、それは頼もしいです。僕は「家族大好き! 何かあったら絶対に守る」と思っていますけど、ふだんは自分のことが大好きなので(笑)。それで「あ!」と思うことも多いんですけど、そんなときも家内が子どものことをいろいろやってくれています。
たとえばイベントごととか、細やかなところはすごいなと思います。「今日は子どもの日だから、お風呂に菖蒲(しょうぶ)を入れる」とか、「お月見をしよう」とか。僕はなんのこっちゃかわからんので、「ああ、そういう日なんや」と。その季節に合わせたことをちゃんとやりたい人なので、それは「ありがとう」ですね。ちゃんとしてくれているので、子どもたちも「こんなことをやってくれていたな」と記憶に残ると思いますし。季節の行事をやることで、家族の距離が一度ぐっと近くなるんですよ。そのきっかけを1年の中に何度も作れるというのは、いいなぁと思います。
あとはお母さんに対しての、父親の接し方。それも重要だと思います。世の男性は、多分そこを一番手抜きしがちだと思うんですよ。でも、自分の中ではそこをちゃんとしていきたいなというのがあります。順番として”お父さんお母さん”になる前に”彼氏彼女”だった時期があるわけじゃないですか? そこを卒業して”お父さんお母さん”になったわけじゃないので。”彼氏彼女”だったことは消したくないんですよね。
お子さんたちの前でもスキンシップしたりとか?
そうですね。手もつなぎますし。何かを持ってあげたり、クルマに乗るときも絶対自分より先に乗せますし。子どもたちの前でカッコつける必要はまったくないんですけど、ふだんからやっていることをそのままやっています。
素敵ですね! そこが夫婦円満の秘訣でしょうか。ほかにも何かありますか?
うーん……? 向こうに何かを望むことは、とてもとてもあつかましいというか。そこは僕自身の課題ですね。僕の意識の問題です。どれだけ自分の中に嘘をつかず、愛せているかということ。それはたぶん自分自身が一番知っていると思うんですけど。「もう”お母さん”だから」「結婚して20年以上たっているから」いろんなことがなおざりになるんじゃなくて、だからこそ蓄積してきた絆がどれだけ強いものになっているか? それを大事にしようという意識が僕の中にあるかどうかですね。そこがなくなると、夫婦はちょっとむずかしくなると思います。
相手がどう思っているか、相手にこうしてほしいとうのは、ずうずうしいと思うんですよ。こんな僕についてきてくれた時点で最高に感謝しているので、それ以上何を望むねん?っていうことですよ。さらに子どもを産んでくれて、僕がいないときも面倒をみてくれているわけですから。それ以上望むことは、ないです。だから僕は思い切り愛したいです。と、いう僕だけの課題です。あとはそれをどんなふうに受け止めて、一緒に歩いてきてくれるか?ということですね。
それは子どもたちに対しても同じです。見返りは求めない。「家族円満でいたい」というのは、僕の課題ですね。僕ががんばればそれでいいのかなと思います。
「こんなふうにしてほしい」は、ないんですね。
ないですね。ただただ僕が愛し続ける、と。
今のところ、その自信はありますか?
あります! 家族ですからね、そこしかないので。一番愛したい、愛されたい人たちがそこにもういるので。そのまわりにも大切にしたい、愛している人たちはいっぱいいますけど、家族はそれが一番濃い相手ですからね。それは子どもたちに対しても同じだと思います。子どもに対する愛情が最高に濃いものでないと、夫婦間の愛情も薄れていくと思います。さっき僕が家内に対して「子どもたちを愛してくれている」と言いましたけど、それは向こうも同じだと思うんですよ。僕が子どもたちを「こんなに愛しているんだ」と、家内も見てくれていると思うので。めちゃめちゃシンプルだし、クサいんですけど一番大切なのはやっぱり”愛”ですね。これは異性同性ひっくるめて、全部。それが溢れる環境を、いかに自分が作れるかだと思います。
「いちばん大切なのは愛」。心では感じていても言葉にして出せる人って、意外と少ないものですよね。それだけ大きな愛で溢れる山口さんの人柄が伝わってきます。さて次回はついに最終回。どんなお話が飛び出すか、ご期待を!
取材、文・鈴木麻子 撮影:山口真由子