産婦人科医・重見大介先生に聞く「女性が抱える問題」今よりいい世界を目指すためのアドバイス・第2回
前回からの続き。インターネットやSNSで情報を検索し、無意識のうちに、誤った情報を本物だと信じてしまった経験はありませんか? とくに医療の話は、誤った情報を信じてその通りに行動してしまうと取り返しがつきません。デマやフェイクに埋もれてしまうなかから正しい情報をよりわけ、自分たちの世界をちょっとでもいいものにしていくためにはどうすればいいのでしょう?
そこで今回は、産婦人科医の重見大介先生に、正しい医療情報を得る方法について伺いました。
難しい!素人の私たちが正しい専門知識を得る方法は
——専門知識がない私たちは、手に入る情報が真実なのか、フェイクやデマなのかを測り知ることが難しいです。どのようにして、知識を得たり対応していったりすればいいのでしょう。
重見大介先生(以下、重見先生):私自身、医療の専門家ではありますが、専門外の事となると素人同然になることもあるので、お気持ちはわかります。知らないことでも調べて対応しないといけないのは本当に難しいですよね。だからこそ、「ネットでの情報収集」と「実際に相談できる人の確保」という2つのポイントについて知っておいていただきたいです。
——情報収集のポイントとは、どのようなことでしょうか。
重見先生:今はネットの発達が目覚ましく、調べようと思えばいくらでも調べられます。しかし、ネットやSNSにあふれる情報にはデマや誤情報も多いので、ある程度自分自身でよりわけていくことが現代人の必須スキルになりつつあるのではと私は思っています。
まずは書籍や信頼できるサイトで知りたいことについての知識を自分でつけ、リテラシーを上げていくことが一番です。そのうえで、ネットやSNSで情報発信している人が信頼できる人かどうかを見極めます。信頼できる人かどうか判断するためには、興味や関心をもった発信者のアウトプットを、過去に遡ってチェックするとよいですね。1つの発信だけで判断せず、過去の発信も含めて精査することで、正しい情報を得やすくなるはずです。
——「実際に相談できる人」というのはどなたになるのでしょうか。
重見先生:理想としては信頼できる・相談できる、かかりつけ医をつくることです。しかし昨今コロナ禍の日本の医療体制では、相談・質問をするだけのために病院へ足を運ぶことはかなりハードルが高く感じますよね。だからこそ、私たちがやっているようなオンライン相談も活用してもらえればいいのではと感じます。
——かかりつけ医とオンライン相談で、どちらが先の方がいいなどはありますか?
重見先生:かかりつけ医でもオンライン相談でも、どちらが先でもいいと私は思います。小さなお子さんを抱えて、相談や質問をするためだけに医療機関へ足を運ぶのは大変ですよね。そのようなときはオンライン相談、そうでないときはかかりつけ医というように、そのときどきに自分が一番やりやすい方法で決めていいと思います。
女性の健康や産婦人科医療について学べるニュースレター
——さて重見先生は、女性の健康や産婦人科医療に関する情報を「ニュースレター」として配信されています。なぜニューレターを始められたのですか?
重見先生:ニュースレターであれば、エビデンスをしっかり示した情報発信の手段の一つとなると考えたためです。私はSNSでもエビデンスをベースに情報発信していますが、SNSは字数に限りがあり、詳しい解説をしようと思っても少し難しさを感じていました。ニュースレターには、SNSではオープンに発信しにくかった「話題の深掘り」や、私自身の頭の中にある「想い」を載せています。またメールで情報が届くということで、ある程度SNSとは違う安心感があるのではと考えています。
――ニュースレターにはどのような内容を書かれていますか?
重見先生:ニュースレターには無料版と有料版があります。無料版には、産婦人科の内診や性教育といったように、女性の健康や産婦人科医療、社会課題などを取り上げています。多くの人に知っていただきたい内容については、無料版で書いています。
有料版では無料版で書ききれない深掘りした話や、医療側の裏事情・裏話のような話なども含めて書いていく予定です。あとは私個人の見解ですね。SNSやWebメディアだと私個人の意見や見解をたくさん述べることは難しくて。有料版では重見個人の考えや思いをメインに、正直なところを聞いてみたい・知ってみたいという方に向けた内容を発信していきます。これまでに、有料版では「切迫早産の治療について 〜日本の課題、海外との違い〜」、「私たちが子どもにできること 〜非認知能力についての考え方〜」などを配信しています。
――どのような方に読んでもらいたいとお考えですか?
重見先生:なるべく幅広い年代の方にむけて発信しています。今すぐには刺さらなくても、「40〜50代になるとこんな風になるんだ」とか、お子さんがいない・今は妊娠を考えていない方にも、子どもへの性教育をどのようにしていけばいいかを知ってもらえます。
ニュースレターの配信を続けていくことで、ひとりでも多くの人に「この人は信頼できそうだな」と思っていただけたらと思っています。ぜひ一度、無料版から読んでみていただきたいですね。
(編集後記)
わかっていても知っていても、なかなか知ること・理解することが難しい女性に関する問題や社会課題。しかし、専門家の確かな情報を手にすることで何かを変えていけるのかもしれません。今悩みを抱えている人もまだ経験がない人も過去に悩みを抱えていた人も、みんながみんな少しずつ関心を持ち、知識を得て行動していくことで、今よりちょっといい世界に変わっていくのかもしれませんね。
取材、文・櫻宮ヨウ 編集・しらたまよ イラスト・Ponko
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