家の中で火が出たら?ママと子どもが生き残るための防災術【第2回 火災編】
ママになると、ふとしたときに「もし火事になったらどうしたらいいのだろう」と不安になることもあるのではないでしょうか。小さな子どもがいるママ、子どもを留守番させているママは、もし家の中で火が出たらどうすればいいか、消防隊員・レスキュー隊員の経験の長い野村功次郎さんに聞いてみました。
家の中で火が上がっている!ママはどうするべき?
――家の中で何かが燃えていると気づいたらどうすればいいのでしょう?
野村さん(以下、野村):まずは119番をして消防に連絡をしてください。火を消すことにはリスクが伴いますので、小さなお子さんといるママは、消すことは考えなくてもいいかもしれませんね。消せる判断は目線の高さです。ママの目線より火柱が高くなっていたら無理だと思ってください。天井に達してしまったら、消火器でも消すことはできません。というのも家庭用の消火器は数十秒しか機能性がないからです。初期消火(火が小さいうちの消火)は有効かもしれませんが、火が自分の目線より高くなったら初期消火もできないと思ってください。また火事のときはパニックになり、いざというときに消火器は使えないものです。火を消すことを考えずに、お子さんを連れて逃げてください。
――部屋で火が出てしまった場合は水を掛けてしまっても大丈夫ですか?
野村:火災の損害は焼損、水損、煙損と3種類あります。焼損は燃える損害です。水損は水を掛けての損害でパソコンなど電子機器がダメになります。煙損は煙によって壁や天井などが損傷するものです。
確かに水は即効性がありますけれども、水を掛ける以外にも方法がある場合があります。例えばベタベタに濡らしたバスタオルをパッとかぶせるだけで鎮火できることもあります。燃えるための要素である「酸素」を遮断する方法で考えれば、濡らしたバスタオルをかぶせるほうが、水を掛けるよりも損傷は少ないです。それで鎮火しなければもちろん水を掛けなくてはいけません。
――揚げ物の油から火が出た場合はどうすればいいですか?
野村:鍋にぴったりと合う蓋があれば、蓋をして1時間以上放っておいてください。また鍋の口より大きな布やバスタオルなどを濡らして、手前から鍋を覆うようにかぶせる方法もあります。いずれも中の酸素がなくなれば火は収まります。揚げ物の油には絶対に水は掛けないでください。
アロマ系オイルや絵の具も火災の原因に?
――他に火災の原因になることはありますか?
野村:アロマを焚いて香りを楽しむママもいるのではないでしょうか。でもこぼれたアロマを拭いた布には気をつけてください。アロマ系のオイルは、空気に触れると酸化して熱が発生することがあります。アロマ系のものを拭き取った布を洗濯機で洗っても油が残っています。それを乾燥機に入れたら火災になったということがありました。油が残っているものが空気に触れる。そこに熱を加えることで出火するのです。同じようなものが絵の具です。油性の絵の具を拭いた布を洗って、そして乾燥機に入れると出火することがあります。
――子どもが絵の具を使いますよね。
野村:絵の具で使ったものを洗ってもいいけれど、乾燥機には入れないでください。塗料系やオイル系などは乾かすときに乾燥機に入れないということを覚えておいてください。
子どもを留守番させるときの注意点
――子どもに留守番をさせるときに注意しておきたいことはなんですか?
野村:子どもの火遊びは実際にあるので、日ごろから家族でよく話し合っておくといいでしょう。また子どもだけで留守番しているときは子どもには火を使わせない、そして熱を発するものはプラグを抜いておくことです。エアコンはいいですが、電気ストーブなどプラグを抜いておいてください。ゲームやこたつ、テレビ、ドライヤーとたこ足配線にして繋いでいる場合は特に注意してください。あらかじめプラグを抜いて、使わないような状態にしておくというのがまず鉄則ですね。
――プラグを抜いておくほうがいい理由は他にありますか?
野村:リモコン系には誤作動するものがあります。海外製のテレビのリモコンで、日本製のリモコン製ストーブの電源が入るケースがありました。たまたま同じ周波数だったようです。リモコンでスイッチが入るようにストーブをスタンバイさせておくと、誤作動で知らない間にスイッチが入って火事になることもあります。リモコンで動くものはプラグを抜いておくといいでしょう。
――電子レンジや電子ケトルなどは子どもに使わせないほうがいいですか?
野村:大きいお子さんは正しい電化製品の使い方を教えておくべきでしょう。でも小さいお子さんは避けるべきです。電子レンジや電子ケトルやドライヤーといったワット数が高いものは、小さいお子さんには使わせないほうがいいでしょう。物があったり埃が溜まったりすると、通電したり加熱されたりすることがあります。
――子どもが火事を起こさないようにするためにはどんなことが必要ですか?
野村:子どもはいろいろなことに興味があり、たとえば大人では考えられないものを電子レンジに入れて温めることもあります。したがって家の中の危険に気づくためには、子どもの目線になって、家の中を見回すことが大切です。大人の目線で大丈夫だからではなく、屈んで小さな子どもの目線で見てみると手に届くもの・届かないもの、意外といろいろな危険が見えてきます。
火事になったらどう逃げるべきか
――一軒家で火事になったときの避難について教えてください。
野村:木造の一軒家は火災になるとあっという間に火が広がります。ママがどの場所にいるかにもよりますが、玄関やリビングの窓、勝手口など、最短で外に行けるところから逃げることが最優先です。
――一軒家の2階にいるときはどうすればいいですか?
野村:2階に取り残された場合は、一番火から遠い場所で助けを待ってください。危険だと感じたら、脱出を試みなければならないときもあります。シーツやカーテンなど大きな布をしっかりと結んでロープにして脱出、あるいは室内のあらゆるクッションや布団を外に出して、そこに飛び降りることも覚えておいてください。棚などを投げて着地する箇所を少しでも高くすることもできます。飛び降りるときは、脚から着地し、足首を曲げた後にすね、お尻、背中、肩の順に転がる「5点着地」だと、多少は衝撃が軽減されます。(※この方法は訓練された人がするもので、素人がいきなりできるものではありませんのでご注意ください)
――マンションで火災になったときはどうしたらいいですか?
野村:マンションの場合は、エレベーターでの避難は基本的にアウトです。というのも非常用ボタンがおされるとエレベーターは非常用モードにかわり、消防隊が乗るエレベーターだけが動いて、通常のエレベーターは止まることがあるからです。子どもとの避難はたいへんだとは思いますが、階段で逃げることが鉄則です。
――マンションの火災で気をつけたいことはなんですか?
野村:マンションは一戸一戸、他の部屋には燃え移らないような防火区画がされてあり、耐火構造を持ちます。外についている階段の場合、煙がなければ下に行ってください。ベランダの「避難ハッチ」などから逃げなければいけない場合もあります。日ごろから避難経路を確認しておくといいでしょう。
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火災が起こったとき、火はもちろんのこと煙にも注意をしなければなりません。床の近くに新鮮な空気が残っている可能性があるので、火災のときはなるべく床に顔を近づけ、低い姿勢で避難することが大切なのだそうです。小さな子どもは子どもがいるママは火を消すことよりも子どもを守ることを最優先に考えたいところですね。
第3回【水害編】へ続く。
取材、文・岡さきの 編集・しらたまよ イラスト・きたがわなつみ
参考文献:「パッと見! 防災ブック」
価格:1,320円(本体1,200円+税)
出版社: 大泉書店
※本コラムは防災、災害対応のヒントです。実際の災害の対応へは、お住まいの地域の事情等踏まえて、行ってください。