背が低い息子。親は子どものコンプレックスにどう向き合う?
背が低いことはコンプレックス?
筆者の息子は幼いときから体が小さく、小学生になった今は同じ学年の子たちよりも頭1つ分くらい、背が低いです。教室の高い棚の上に置いてある物に息子だけ手が届かず、クラスの女の子から、
「私が取ってあげるから、いつでも言ってね」
と声をかけてもらっているのを見たことがあります。その女の子は純粋な気持ちで親切にしてくれていたのですが、息子が素直に喜べない表情を一瞬浮かべているのを見逃すことはできませんでした。
男の子の友達からは、からかい半分で、小さな子どもを扱うかのように息子の頭を撫でるのを見たこともあります。特にいじめているつもりもなく、ちょっとふざけているだけかもしれませんが、息子はいい気分ではないようで、逃げるようにその場を去っていました。
そんな場面を見かけてしまうと、背が低いことは子どものコンプレックスになっているのでは、とちょっと心配でした。確かに、息子から、
「背が高くなるにはどうしたらいいのかなあ」
「背の高さが関係ないスポーツって何だろう」
と聞かれることはよくありました。
どう寄り添ったらいいか、親も悩む
普段は筆者も息子の身体的な特徴を気にかけることもあまりないですし、体が小さいことが話題になっても、
「中学生くらいになったらぐんと背が伸びるかもしれないよ。パパも小学生の頃は背が低かったんだって」
と励ますくらいのことしかできませんでした。そんな声かけも息子にとっては根本的な解決にはならないのかもしれない、と筆者自身どうしたらいいのか迷っていました。
コンプレックスが自分の長所に
ある時、自分の長所を書くという宿題を息子が持って帰ってきました。息子が何を書くのか全く見当がつかない筆者は、興味津々で息子の宿題を見ていました。すると長所を書く欄に、
「せがひくいこと」
と書いていました。筆者はびっくりです。驚きのあまり、すかさず息子にどうしてそう書いたのか聞いてみました。
「だって、背が低いと、鬼ごっこでみんなに見つからないように隠れることもできるし、誰よりも早く逃げられる。みんなぼくのこと捕まえられないんだよ。背が低いってラッキーだと思わない?」
鬼ごっこはとても得意なのだそうです。背が低いことが息子のコンプレックスにならないように、とむしろこの話題を避けていた筆者でしたが、息子にとってはコンプレックスどころか、背が低いことが自分の長所だと気に入ってさえいるようでした。
「嫌なところは気にしない」よりも「積極的に認めてあげたい」
「見た目」の問題は本人が変えたいと思っても変えられないし、親に似てしまっていることもあり申し訳ないような気持ちになります。容姿なんて気にしないのが一番だと思っていました。でも、ダメなところと思っていたことでも長所になるんだ、と息子は毎日の生活の中から自分で気づいたようです。筆者は、息子に大切なことを教わったような気がしました。
短所に思えることだって、もっと積極的に認めてあげたい。そんな気持ちで子どもに寄り添っていきたいと思いました。
文・野口由美子 編集・山内ウェンディ イラスト・こねこねこ。