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運動が苦手な子は将来○○になりやすい?【花まる学習会 高濱先生】

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飛んだり走ったりと体を動かす遊びが好きな子どもたち。でも、なかには運動に苦手意識を持つ子もいます。ある女の子は、走ることが大の苦手。運動コンプレックスから、まわりの子に意地悪をしていたそうです。ところがあることをキッカケに、苦手だった運動が得意になったのです。一体何が起こったのでしょうか。「花まる学習会」代表取締役の高濱正伸先生にお話をお伺いしました。

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友達への意地悪はコンプレックスの裏返し

20年ぐらい前、ある新聞に「逆上がりができなかった子どもは、20歳以上で精神病になるリスクがとても高い」という記事が出ていました。どういうことかというと、運動ができないことに劣等感を持ち、消極的になってしまうということです。具体的な例をご紹介します。

ある足の遅い小学1年生の女の子がいました。その子はものすごく頭はいいけど、とにかく足が遅い。それでいつも1年生の男の子軍団に「あいつ、足おっせーよな!」とからかかわれていたんです。小学校1、2年生の子は正直ですから、見たままを口にします。近くに大人でもいればやめさせますけど、そういうときばかりじゃないわけです。言われた子は運動ができないことをコンプレックスに感じるようになります。その結果、どうなったか。

その女の子は、運動はできないけど勉強は抜群にできるわけです。そこで自分のプリントが終わると、まだ終わっていない子のところに行き「こんなのもわからないの?」「3年生なのに、できないんだ! バカじゃないの?」というようになったんです。つまり、運動ができなくてみんなにバカにされて悔しいから、自分の得意なところでほかの子をバカにして、なんとか自分を保とうとしていたのです。

コンプレックスを持ち続けたまま大人になると……

ある時、その女の子の意地悪があまりにもひどいから、お母さんに電話したんです。最初は親の愛情コンプレックスを疑ったんですよ。「お母さん、最近あの意地悪がまたひどくなってきました。最初から意地悪な子というのはいないんですよ。必ずコンプレックスがあると思うんです。何か思い当たることありますか?」と言ったんです。

そしたらあっさり「あー運動です。運動。もうすぐ運動会じゃないですか。そのことを言うだけで怒るんですよ」と言うんです。「そんなに足が遅いんですか?」と言ったら「遅いなんてもんじゃないです。みんながバッと駆け抜けていき、しばらくしたら、あの子が一人テトテト歩くように走ってくるんです」とお母さんがいうわけです。

そこで昔読んだ記事を思い出して「逆上がりはどうですか? できますか?」と聞いたら、「とてもじゃないけど、できないですよ(笑)」と。「お母さん。僕が24年前に読んだ記事で、逆上がりができない子は将来精神病にかかる可能性が高いとありましたよ」と伝えたんです。そしたらお母さんは「ええー!」とすごくびっくりしてね。

運動音痴を克服したどころか、マラソン選手に選ばれるまでに!

そのあと、その電話のことは忘れていたんです。その後、彼女の意地悪は徐々におさまり、1年後にはクラスの中でリーダーシップを取れるくらい変わってきたんです。さらに5年生になった時には、駅伝の選手に選ばれるまでになりました。なぜあんなに運動ができなかった子が駅伝の選手に選ばれるまでになったのか。理由はお父さんにありました。

毎朝の親子マラソンでコンプレックスを克服した女の子

実は4年前、僕が電話したあの日の晩、夫婦で話し合ったそうです。そのあと、お父さんが娘に対して、こう話したそうです。

「〇〇ちゃんおいで。〇〇ちゃんは足が遅いことを気にしてるでしょ。パパも小学校の時は遅かったんだよ。でも、がんばった結果、高校の時は駅伝の選手にまでなれたんだよ。がんばったらどんどん速く走れるようになるから、絶対にがんばろうね」。
その話は本当です。短距離は難しいけど、長距離は伸びるんです。長距離の走りは、頭も良くなるというし、忍耐力もつきます。

女の子の家庭では、雨でもなんでもお父さんが一緒に走ってあげて、毎朝練習したそうです。お父さんは研究者で家にいないことがあっても、必ず約束の時間には帰ってきてマラソンをして、終わったらまた会社に行くという生活をしていたそうです。なかなかそういうことができる人はいないと思いますよ。

その結果、女の子は中学3年生の時に県大会までいきました。もともと頭がいいうえに、運動までできるようになったから、怖いものなし。高校も大学もトップで入りました。その子が結婚するとき、僕も結婚式に呼ばれたんですけど、あまりにも感動しすぎてお父さん以上にワンワン泣いてしまったほどです(笑)。

僕が見る限りでは、何百人もの親子が毎朝のマラソンで親子関係や友達関係などがうまくいくようになっています。子どものためにすることは、特別なことである必要はありません。運動コンプレックスがあるなら、親子で一緒にマラソンに取り組む。それだけで子どもはやる気を出し、変わってくるのです。

文・間野由利子

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