いつでも、どこでも、ママに寄り添う情報を

新潟県三条市 滝沢亮市長・第3回「小中学校の和式トイレを洋式化。保護者からの相談で気づいた環境」

三条市3

前回からの続き。
「学校のトイレが和式で使いにくい」。大人からは気づきにくいこの問題を、中学生の保護者からの連絡で知った新潟県三条市の滝沢亮市長。約12.6億円をかけて488台の洋式トイレを導入し、トイレ環境を見直しました。三条市はどのような取り組みを実施したのでしょうか?
trprf

自宅にいながらLINEで育児相談

──三条市では、市への要望がLINEから送れるそうですね。

滝沢亮市長(以下、滝沢市長):これまではメールやFAXでしたが、子育て世代の方が日常的に使っているLINEを導入しました。三条市のホームページとは別に、「三条市子育て支援サイト」といって、子育てに特化したサイトがあります。そこでLINEに登録し、妊娠・出産、乳幼児健診、予防接種、保育所等、小中学校、各種手当・助成など、子育て関係の相談を受け付けています。

── 妊娠中や子育て期は、体調の変化や慣れない育児で戸惑うことがたくさんあります。そんなときにLINEで相談できるのはいいですね。

滝沢市長:平日9時~17時までと、対応できる時間に限りはありますが、LINEからの相談は徐々に増えています。市役所が遠い、なかなか外出できない、また、対面での相談に不安がある方なども、ぜひ利用してほしいですね。

中学生の保護者からの相談でトイレの洋式化工事を実施

──どんな問い合わせがありますか?

滝沢市長:いろいろありますが、ある親御さんから学校のトイレを和式から洋式に変えてほしいという要望がありました。話によると、娘さんが通う中学校では、フロアに洋式の便器が1台しかないから、女の子はみんなそこに並んでいたそうです。列の後半の女の子は、授業の開始時間に遅れることが恒常化しているという話でした。

──三条市は、ずっと和式と洋式だったのでしょうか。

滝沢市長:これまではそうでした。保育園、幼稚園では洋式なのに、小学生になったら和式トイレがある。そのためまず小学校に入ったら和式トイレの使い方から教える学校もありました。

予算12.6億円。488台の洋式化トイレを導入

──親御さんからの問い合わせがあってから何か変化はありましたか?

滝沢市長:1年かかりで、市内の小中学校すべてのトイレの洋式化を進め、工事が完了した2022年度には新たに488台を導入しました。予算規模は約12.6億円となり、三条市の年間全体の予算の約2.5%を占める大規模事業となりました。三条市では、子どもの教育に力を入れていますが、学びの前提となる基本的な環境の整備にまでは目が届いていなかったと、改めて気づかされました。また、私自身も小中学生のとき、トイレを利用しづらかった記憶もあり、子どもたちの気持ちもわかります。

──親御さんからの問い合わせで、学校生活が大きく改善されたんですね。

滝沢市長:トイレの洋式化改修工事をきっかけに、子どもたちが学校のトイレでうんちをしにくいという話になり、トイレに関するポスター募集とアンケートを実施しました。児童生徒からはポスター238作品が集まり、市内小中学生694人を対象に「学校でうんちアンケート」を行いました。

──アンケートの結果はいかがでしたか?

滝沢市長:トイレ洋式化などの工事により、40%の児童生徒から「学校でうんちに行きやすくなった」との回答がありました。ただ、15.5%の児童生徒は、トイレ環境を整えたあとも、恥ずかしい、落ち着かない、友達に知られたくないなどの理由で、「学校でうんちを我慢したことがある」と回答しています。これから改善していけたらと思います。全国のどこの小学校、中学校でも、まだ和式トイレが残っていて、同じような問題が起きているかもしれませんね。

要望があれば市に声を届けてほしい

──主にどの世代の方からの問い合わせが多いのでしょうか?

滝沢市長:高齢の方からの要望が多い傾向があります。道路の補修工事をしてほしいといった大きなことから、ゴミが落ちているなど日々の生活での気づいたことなどが寄せられます。

どうしても私たち行政側で市民の方が望んでいること一つひとつをすべて把握するのには限界があります。要望があればそこから改善していきます。今回のトイレの洋式化改修工事のように、気づいたことや要望などがあれば、積極的にLINEやメールなどで声を届けていただけたらと思います。他にも、市に届いた質問やその回答は、ホームページ「市長へのたより」で公開しているので、よかったらこちらもご覧ください。

※本記事は2023年8月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

第4回へ続く。

取材・編集部 文・間野由利子 編集・荻野実紀子 イラスト・善哉あん

関連記事

新潟県三条市 滝沢亮市長・第1回「実は周りに助けられているパパ。子育て世代の市長が取り組む支援」
新潟県三条市で市長を務める滝沢亮(たきざわりょう)市長(37歳)。東京で弁護士として働いたのち、地元、新潟県三条市に戻り市長として活躍しています。現在2児のパパでもある滝沢市長に、自身の子育て話を...
千葉県流山市 井崎義治市長第1回「子育ても仕事も!自己実現のためにがんばるママやパパを応援」
子どもが生まれて子育てに専念したいママがいる一方、子育てを楽しみながらも仕事でキャリアアップしたいというママもいます。ただ夫婦共働きとなった場合、保育園の預け先が確保できるか、運よく園に空きが...
小池百合子東京都知事 第1回「出会いから結婚、出産、成人までシームレスに子育て支援を」
「子ども1人に対して毎月5,000円の給付」「出産のお祝いに10万円のカタログギフト」「第2子の保育料無償化」「卵子凍結への支援」など、次々と子育て支援策を打ち出す東京都。そこには、子育てをし...