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新潟県三条市 滝沢亮市長・第2回「不妊・不育症助成から返済不要の奨学金までを切れ目なくサポート」

三条市2
前回からの続き。 子どもの医療費助成や不妊・不育症治療費の助成、母子手帳とともに父子手帳を配布する、返済不要の奨学金制度を実施するなど、子育て支援に力を入れる新潟県三条市。滝沢亮市長にそれぞれの詳しい内容と、取り組みはじめた経緯などを伺いました。
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不妊・不育症治療費助成をスタート

──2023年4月からは不育症治療費助成を加えた、不妊・不育症治療費助成事業をはじめたそうですね。不妊・不育症治療費助成をする自治体はまだまだ少ないと思います。

滝沢亮市長(以下、滝沢市長):近隣の自治体で不妊治療助成を実施したころ、多くの方の注目を集めたことをきっかけに、改めて多くの人が必要としているのだと実感しました。不妊治療や不育症治療には多額の費用がかかります。そこで三条市でも、不妊・不育症助成をスタートしました。

三条市では、特定不妊治療費と一般不妊治療に対して、医療保険適用後の自己負担額の全額を補助しています。今年(2023年)4月から8月までに31件の申請がありました。不妊症治療は1治療期間につき上限15万円まで、先進医療は、1年度につき上限15万円までを助成しています。法律婚に限らず、事実婚のカップルへもサポートしています。

母子手帳とともに父子手帳を配布

──子育て政策としては、どのようなことを実施しているのでしょうか?

滝沢市長:三条市でお子さんが誕生した場合、出産祝い品として、おしりふきや紙おむつ用ごみ袋(100枚)など誕生後すぐに役立つ実用的な物がセットになったベビーパッケージ「ベビパケ」をプレゼントしています。
保育園、幼稚園、認定こども園などでは、3歳~5歳までのすべての児童の利用料を無償化、0歳~2歳までは、市民税非課税世帯や第3子を対象として利用料を無償化としています。ほかにも、預かり保育や認可外保育、ファミリーサポートなどもそれぞれ状況に応じて無償化を実施しています。

──母子手帳とは別に、父子手帳も発行しているそうですね。

滝沢市長:ママに母子手帳があるように、パパにも父子手帳があったほうがいいと思い、「Enjoy!パパ手帳」を作りました。妊娠期から就学までのわが子の成長記録ができ、子どもの成長に関する必要な情報を掲載しています。母子手帳と一緒に父子手帳を配ることで、父親にもわが子がおなかにいるときから、楽しく積極的に子育てに参加していただけばと思います。

学童クラブのお弁当についての議論

──保育園の待機児童問題とともに、学童でも待機児童問題があります。三条市ではいかがですか?

滝沢市長:保育園、学童クラブともに待機児童はゼロです。学童は、待機児童問題とは別に、夏休みなどの長期休みに保護者がお弁当を持たせるのが大変だという声がありました。そこで週1回、市内のスーパーに委託して、お弁当を注文できるようにしました。

──ママたちからの評判はいかがですか?

滝沢市長:お弁当は400円なのですが、実は、実施後すぐに新聞の投稿で「市長は弁護士をやっていて裕福だから、弁当1つに400円もかけられるけど、普通の家庭ではそんなに出せない」という市民の声がありました。その一方で、市役所には、「お弁当1つ400円では作れません。手間暇を考えたらとても助かります」というメールをいただきました。実施回数や価格についていろんな考え方があると思います。みなさんの意見を聞きながら、少しずつ改善していきたいと思います。

子どもの医療費助成を18歳まで延長

──滝沢市長になってから、子どもの医療費助成期間が延長されたそうですね。

滝沢市長:中学生までだった子どもの医療費助成を18歳までとしました。2023年度からは、生後6か月から高校生までを対象にインフルエンザ予防接種1回につき2,000円の接種費用助成などもはじめました。

高校生、大学生を対象に返済不要の奨学金制度

──三条市では、教育に力を入れていると聞きました。教育関係ではどのような取り組みがありますか?

滝沢市長:2023年度から、高校生向けの返済不要の奨学金制度を始めました。三条市は、諸橋轍次博士という『大漢和辞典』全13巻を作られた方の出身地でもあります。諸橋轍次博士は、現在の天皇陛下のお名前を上申された大漢学者です。教育に尽力された諸橋轍次博士の意志を継ぎ、教育の機会均等を図るとともに、博士のお名前を冠した「諸橋轍次博士奨学金」を開始しました。一定の経済的条件はありますが、高校生への給付型奨学金として、年間6万円支援しています。

──子育て中のママたちが一番不安になるところは、お金がかかる高校、大学の学費です。奨学金で支援してもらえるのは、本当に助かります。

滝沢市長:市民から市に寄せられる「市長へのたより」で、同じように高校からの支援を希望する声がありました。小学校、中学校までは就学支援援助などがあるものの、高校以降はそれがなくなるから不安だというお話でした。それもあり返済不要の奨学金制度を始めました。三条市では、これからも子どもが生まれる前から、妊娠、出産、はては高校、大学まで、切れ目なく子育てを支援していきます。

※本記事は2023年8月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

第3回へ続く。

取材・編集部 文・長瀬由利子 編集・荻野実紀子 イラスト・善哉あん

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