<母親やめてもいいですか?>母が人生をかけて教えてくれた「ありがとう」【第12話:息子の気持ち】
前回からの続き。今から十数年前、俺コウタロウは父さんと、二世帯同居のじいちゃんばあちゃんと暮らしていた。高校生になって母さんが出て行ったけれど、俺たちの生活はとくに変わることはなかった。変わっていないと思っていた。でも、高校生活で友人たちの優しさに触れることで、自分の家庭にはない「温かさ」を思い出していた。それは母さんが俺にくれていた「安心感」だった。
家に帰ると祖父母や父から成績の悪さを責められる。でもそれは母さんが悪いから……。だから俺はこの家を出て行った母さんのように「この世は弱いヤツが負ける」そう信じて、無意識に強くなろうとしていた。でも、違ったんだ。「おかしいのはウチだったんだ……」
本当に弱いのは、祖父母や父さんたちの方だったんだ。弱いから、自分と違うものを排除しようとする……。
母さん、ゴメン。俺のために尽くしてくれた母さんに、俺はなんてことを……。
父さんやじいちゃんばあちゃんは、すべてを「母さんのせい」にして罵倒したり暴力を振るったりしていた。やがて俺も同じことをするようになった。だから母さんが出て行って「この家」の違和感に気がつくと、俺はもうこれ以上ここにいてはいけないと思った。俺のために尽くしてくれた母さんに、どれだけ酷いことをしてきたか。自分が本当に恥ずかしかった。
今すぐでも会いたいけれど、こんな俺じゃ……。しっかり自立をして、今度は俺が母さんを迎えに行こう。俺は必死に勉強して大学へ進学。家をでた。そして一日も早く一人前になろうと頑張った。そしてようやく社会人になれた俺は、母さんに会いに行った。けれど……。
「最後にコウタロウの成長が見られて、嬉しかった。さようなら……!」母さんはもう、「自分の人生」を生きていたみたいだ。「コウタロウ、体に気をつけてね」「うん、母さんも元気で」
母さんは、笑顔で手を振って帰って行った。母さんと一緒に暮らすことはできなかったけれど、これでよかったんだ。俺は忘れない、母さんが人生をかけて教えてくれたこと。
俺はずっと、母さんの姿が見えなくなるまで手を振った。そして帰り道、俺は母さんと同じ、くせのある髪の毛を触りながらつぶやいた。
「母さん、ありがとう」
母さんは行ってしまった……もう会うことはないのかもしれない。どんなに後悔しても、もう遅い。俺は自分のために人生をかけてくれた人を裏切ったんだ。親子だからと言って何でも許してもらえるとは限らない。それは逆の立場でも同じことが言えるだろう。これからは恥ずかしくないような自分でいられるように……。母さんが人生をかけて教えてくれた最大の「学び」を、俺はこれからの人生に生かしていきたいと思う。
原案・ママスタコミュニティ 脚本・渡辺多絵 作画・猫田カヨ 編集・井伊テレ子
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