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「読む」力は子どもたちの一生の武器となる。速く読むだけではない、速読とは

「速読」と聞いて、みなさんはどのようなイメージをもたれますか? とにかく文章を速く読むための方法であると考える方も多いかもしれませんね。しかし速読はただ「速く読む」だけの技術ではないそうです。速読を習得すると、わが子や自分にどのようなメリットがあるのでしょうか。日本速脳速読協会の秋山和沙さんにお話をお聞きしました。

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「速く読んだけれど理解不足」では意味がない。速読とは?

――まずは速読とはどのようなものなのか、お聞かせいただけますか?

秋山和沙さん(以下、秋山):速読と聞くと読んで字の通り、本を手にとってパラパラとページをめくり何万文字も速く読む……。みなさんそういう印象をお持ちかもしれません。しかし速く読むだけが速読ではありません。速く読むことに加え、正確に読み解くのが速読です。

黙読といいながら、実際には頭の中で、文章を声に出して読み上げる「音読」を無意識に行っている人もいます。頭の中で読み上げていると、どうしても読む速度が遅くなってしまうんですね。この場合、読む速度の平均は1分間で400〜600文字(原稿用紙1枚~1枚半)くらいです。早口で頑張っても800文字くらいですね。

しかし速読のトレーニングを行うことで、文章を1字ずつ追うのではなく固まりで把握し理解する「視読」という方法を身につけられます。これにより最初は1分間あたり400〜600文字程度しか読めなかった子どもたちが、1年もすれば約2~3倍の1000~1500文字くらい、2〜3年後には2,000〜3,000文字くらいまで読めるようになる子どもたちもいます。

――速読の習得のためには、どのようなトレーニングをおこなうのでしょうか?

秋山:日本速脳速読協会では、パラパラと本をめくる、飛ばし読みをするというような方法は用いません。タブレットやパソコンで専用のシステムを使い、速く、正確に読み解くトレーニングをおこないます。簡単に、3つのトレーニング方法をご紹介しますね。

まずは本格的に文章を読む前に、速読に必要となる目の筋肉「眼筋」のトレーニングをおこないます。画面に出てくる文字や記号を目で追うことで、目の筋力を鍛えたりほぐしたりしていくのです。

次は、見える範囲を広げるためのトレーニング。たくさんの文字を速く正確に読むためには、単語や行で読むのではなく、文章をなるべく大きな固まりで理解しながら読む必要があります。そのために見る範囲、そして見えるだけでなく、何が書いてあるか認識できる範囲を広げるようにトレーニングをします。

これらを行いながら、速読の実践として、短文を読んで問題を解くトレーニングを行います。トレーニングは短い文章を読んだ後、確認問題を解くという流れになっています。これにより、速く読むだけでなくきちんと理解や記憶が伴っているかをチェックしていきます。

――トレーニングはどれくらいの頻度でおこなうのですか?

秋山:日本速脳速読協会では、トレーニングを実施している教室の様子を見ますと、週1回取り組む生徒さんが多いように思われます。速読は継続して習慣づけていくことが大切です。筋トレをするような感覚でトレーニングを継続していくことで読むスピードが上がっていきますので、週1回~2回と、感覚を失わないうちに次のトレーニングに取り組むとよいと思います。

――速読の習得までは、どれくらいかかりますか?

秋山:速読のトレーニングには慣れが重要であるため、できれば1年以上は継続してほしいと考えています。

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速く読むことが重要視される理由は、現在の受験事情にある

――速く読めない人にとっては、速読の習得は難しいと感じると思います。そもそもなぜ速く読むことが必要になるのでしょうか?

秋山:実は昨今、中学受験も高校受験も大学受験も、テストの文章量が全体的に増えてきています。膨大な量の問題文をじっくり読んでいては、問題を解く時間がなくなりますよね。そのような状況でも速読ができれば、速くたくさんの文章を読み取り、理解し、解答を導き出す手がかりを得られます。

――問題文を速く読めると、解く時間を増やせそうですね。

秋山:はい。さらにテスト内に見直しする時間を確保でき、ケアレスミスが減ったという声も聞きます。これは国語だけに限らず、算数の問題文や理科、社会でも同様です。

――理科や社会でも役立つのですか?

秋山:そうですね、理科・社会にも速読が活用できます。というのも、昨今の高校入試には、科目を問わず問題の文章量が増えている傾向にあるのです。

たとえば理科の問題の場合は、実験の流れなどが書かれた問題文をまず読み、その後に問題を解きます。問題文の中に、実験の条件や結果など解答に必要なポイントが書かれているのですが、その文章が長いケースも珍しくありません。速く読む力がないと、子どもは最後まで読むだけで疲れてしまい、どれだけ知識があっても本来の力が出せなくなってしまいます。

このように科目を問わず、思考力・判断力・表現力などが必要になる記述式の出題形式に対応するために、速読は役立ちます。

――ちなみに、速読は勉強のほかにスポーツでも活かせると伺ったのですが、速読のどんなことが活かせるのですか?

秋山:スポーツにおいては、動くものを見る力である「動体視力」が養われます。速い速度で文字を追う行為は、その土台として「見る」ことそのもののトレーニングにもなっているんですね。

スポーツをする受講者のみなさまからは、球技やバドミントン、剣道などで相手のボールや太刀筋が「見えた」というお声を頂くこともあります。私が参加したイベントでも、野球未経験の子どもがバッティングセンターで、165kmの速さの投球を試したところ、「ボールが見える」と話されていました。

速読をはじめるなら何歳から?

――子どもが速読をはじめるとしたら何歳ごろが理想ですか?

秋山:何歳でも遅くはありませんが、速読では文章を読めることが大前提ですので、日本速脳速読協会では文章が読める年齢からはじめることをおすすめしています。日本速脳速読協会のトレーニングは、たとえば小学校1年生の場合はひらがなを多めにするというように、年齢や習熟度に応じた内容で、何歳でも取り組みやすくなっています。

――学んでいるのは実際に、何歳くらいの子どもが多いですか?

秋山:日本速脳速読協会では、学ばれているのは小学生、とくに3〜4年生が多いですね。5〜6年生での本格的な中学受験の勉強に向けて、読む力の素地を作っておくためにはじめるケースもあるようです。早い子では小学校1年生頃からスタートして、6年生でも継続している子もいらっしゃいます。もちろん、中学生、高校生も学ばれていますよ。

読むのが得意でなくても速読を学べる!?

――読むのが苦手な子どももいると思いますが、そんな子でもできるのですか?

秋山:そうですね。読むことが苦手な子どもでも、取り組んでいけます。音読トレーニングや脳トレゲームを利用して、まずは文字に慣れていく。慣れてきたら少しずつ時間を増やすなど、段階的なサポートを受ければ大丈夫です。

文字を見ることすらイヤだという子どももなかにはいらっしゃいますが、丁寧にサポートを受けながら取り組んでいけば、文字を見ることに対する苦手意識や抵抗感が減っていきます。

――視力が低下している人や学習にハンデをもつ人でも速読は学べますか?

秋山:はい、視力が低下している人でも取り組んでいただけます。ただ、極度の近視や疾病による視力低下などは必ず眼科を受診ください。また発達障害の傾向がある子どもの場合でも、日本速脳速読協会のトレーニングに取り組んでいただいた例はあります。その子自身が「やってみたい」という思いがあれば、速読を指導する先生と保護者の方でよく話し合っていただき、医療機関にもご相談いただいて、ご納得いただいてから体験されることをおすすめしています。

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子育ての間に、子どもたちの武器を増やしたい

――最後に、ママたちへ伝えておきたいことはありますか?

秋山:速読に限らず、読む行為は勉強以外にも、人生において常に必要な行為です。子どものうちは学習面での効果を期待すると思いますが、大人になってからも読む機会がなくなること、減ることはありませんよね。契約書やメール、資格試験など、大人が文章を読む機会はいくつもあります。

そのような大事な局面で力を発揮するために、今養っておける能力のひとつが、「読む」力なのではと思います。子どもたちが明るい将来を歩んでいくためにも、速読は「武器」となります。

子どもたちはもちろん保護者の方も、少しでも速読を「やってみたい」と思ったならぜひ、挑戦してみてください。

(編集後記)
速読は1年以上と、比較的長い年月のトレーニングが必要とのこと。しかし読むことは学習面だけに限らず、長い人生で切っては切り離せない行為であることが秋山さんのお話からよくわかりました。

子どもたちのこれからの将来を見据え、人生を乗り切る武器のひとつとして、「速く読み理解する力」を養っていきたいですね。

取材・編集部 文・櫻宮ヨウ

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