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【コラム:尾木ママの目からウロコの教育論】第6回 いじめと体罰の問題について

日々、テレビや新聞で取り上げられているいじめ問題。最近はケータイやネットを使ったいじめなど、問題もさらに複雑化・深刻化しています。今回はいじめ問題について長年取り組んでいる、尾木ママのご意見、お話をお聞きしていきます。

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ーいじめ問題について尾木ママが思うことをお聞かせ下さい。

僕は、約30年間いじめ問題に取り組んできています。
これまで「自分の子がいじめられないようにするには、どうしたらいいですか?」という相談は毎日のように届くんだけど、「うちの子がいじめっ子にならないようにするには、どうしたらいいですか?」という相談を受けたのは、この30年の間で2件しかないの。
被害者になることを心配するのは親としては当然だけど、加害者がいなければ被害者というのは存在しないんです。

ときどき、「いじめられるより、いじめるくらいになれ」、とか「いじめ返すくらい強くなれ」という考えの親御さんもいるけど、それでは何の解決にもならないのよ。
「加害者がいなければ、被害者は出ない」。こういう意識を、社会全体が理解していかないといけないと思います。
ーいじめ問題に対して家庭や学校はどう取り組めばよいのでしょうか?

まず親が、自分の子どもを「加害者にさせない」という意識を強く持つこと。学校でも先生が生徒たちに、「加害者には絶対なったらダメだよ」と意識づけることが大切です。

いじめ対策ではよく、「いじめに早く気付いてあげよう」、「自分がいじめられていたら1人で悩まないで声をあげて」などと、語られるわね。これは、いじめられている子を助けよう、という観点から対策が取られているからなんです。それ自体はとても大事だし、必要なことだけど、いじめは発見しにくいケースも多い。いじめられている子やそのまわりにいる子も、自分からいじめの事実をなかなか言い出せるものではないんです。

だから、いじめが起こってからのことを考えるのではなく、加害者を作らない環境を作るということを、学校も親も意識することができるようになると良いと思います。いかに、いじめをしない子にしていくか、「いじめはおかしい」と言える子どもや環境を育てていくかが大切なんです。
ーいじめをしない子に育てるにはどうしたらよいでしょうか?

それは、愛情たっぷりに育ててあげること。
このインタビューでこれまでも語ってきたけど、子どもとまとまった時間を過ごして、子どもをしっかり見てあげて、子どもの心に共感する。そういう子育てをしてほしいの。

いじめの加害者だって、どこかで被害者だったりするのよ。家でお父さんに必要以上に厳しくされていたり、親からの愛情を感じられなくて寂しかったり。親がきちんと子どもと向き合って、子どもが親からの愛情を感じていれば、いじめをするような子には育たないんです。

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ー体罰についてはどのようにお考えでしょうか?

体罰には反対です。
今までの日本では、学校教育法でも明確に禁止されているにもかかわらず、「体罰も必要な場合がある」、とある程度容認されているような雰囲気がありましたよね。最近、学校やスポーツ指導の現場での体罰が次々と明るみに出て、ようやく「体罰は問題だ」という世論が出来てきたので、それはすごく良いことだと思っているんです。

「体罰は愛のムチ」などといわれることもあるけれど、そんなことは絶対にありません! 体罰をふるうことで子どもは大人の言うことを聞くかもしれないけれど、それは恐怖ゆえのことです。体罰をきっかけに子どもが成長していくことはないのです! そればかりか、本人の努力で伸びていたはずの成長を、体罰によって止めてしまう可能性のほうがよほど大きいのよ。
どんなことがあっても、教育というのは、その子に合った方法でそれぞれの才能を伸ばしてあげることであって、体罰で押さえつけて教え込むものではないんです。
<尾木ママへの質問コーナー>
最近の子どもはコミュニケーションが下手だとか、細かいことを気にしすぎる子が多いという話をよく耳にしますが、逆に、昔の子どもと比べて、長けている傾向があるのはどの様なところでしょうか?

そうね、最近の子どもは、美術や音楽といった芸術的感性が非常に優れているわね。
それから、手先が器用になってきているというか、物を与えたら、それを扱う感覚を掴むのが早いですね。
だから、小さなころからお絵かきや歌が好きなら、楽器や絵の具、粘土など、表現できる道具をどんどん持たせてみるといいと思うわ。
子どもと一緒に親もやってみたら、さらにいろいろな発見があるかもしれませんね。

 

「いじめない子を育てる」というお話を伺って、衝撃を受けました。
加害者がいなければ、被害者は生まれない。
いじめの現場に長年携わってきた尾木ママが言うからこそ、自分の子を「加害者にさせない」ことが大事、という言葉に重みと迫力を感じました。
皆さんは、いかがでしたか?
さて、次回はガラッと変わって、「尾木ママとしてブレイクした感想・エピソード」についてお話を伺っていきたいと思います。
お楽しみに。
取材、文・上原かほり 撮影・chiai 協力・臨床教育研究所「虹」

尾木ママさんの連載

第1回 叱らない子育て論に至った理由
第2回 子どもに使ってはいけない言葉/使ったほうが良い言葉
第3回 子どもに持たせたほうが良い物/持たせないほうが良い物
第4回 子どもの心に共感しよう
第5回 ママ友だけじゃなくて、パパも巻き込んでみて!
第6回 いじめと体罰の問題について
第7回 尾木ママとして大ブレイク!
第8回 尾木ママから子育て中のママたちへのメッセージ

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