安めぐみ:第5回 孤独感と子どもに対する責任感で、自分が自分じゃないような毎日でした
おっとりやさしいオーラをまとう、タレントの安めぐみさん。2015年に長女・詩歌(うた)ちゃんを出産してからは、そこにますますの磨きがかかった印象です。
これまで夫であるタレント・東貴博さんとの楽しいエピソードや結婚・妊娠についてなどうかがってきましたが、今回は出産後のお話。「自分が自分ではない」ようにまで感じたという、つらい日々とは?
赤ちゃんが生まれてすぐは、どんな毎日でしたか?
まず驚いたのが授乳の大変さでした。授乳クッションのポジショニングが定まるまで、毎回娘と私で格闘しましたね(笑)。最初の頃は娘も上手く飲めず、ニップルシールドをつけなくちゃいけなかったんです。それに対する申し訳なさみたいなのも少しあり、不慣れな体勢が続いて私は腱鞘炎になってしまったり。とにかく授乳関係はいろいろ苦労がありました。
産後5日して退院したのですが、頼れる人があまりいなかったのもつらかったです。主人は仕事で地方に泊まりに行くこともよくあるので、家にいるのが娘と私だけになることが多くて。私の母は亡くなっていて、お義母さまもご病気をされているので、私の父が来れる時に来てサポートしてくれたのですが、なかなか大変でした。ご近所に頼れる知人もいたので「なんとかなるさ」と、出産までは思っていたのですが。
お父さまではどうしたってわからないこともありますよね。
マネージャーさんたちがお手伝いに来てくれたり、友人がご飯を作りに来てくれたり、周りの方に助けられながらも、娘と2人の時間も長かったので、つい動いて家事をしちゃったりして。動いていたことや疲れもあって40度の高熱を出してしまい、退院後5日でまた病院に逆戻りしました。ちょっと無理をしちゃいましたね。
子育てしていて、大変なことはその都度いろいろありますけど、私は産後1ヶ月が一番大変でした。体力不足と、あとは”孤独感”というのかな? 真夜中に赤ちゃんとふたりきりで、何かあったらどうしよう?と思うと不安で仕方なくて。自分自身のストレスや疲れというよりは、子どもに対する責任感みたいなもので、涙が止まらなかったこともありました。ノイローゼというほどではなかったんですけど、産後1ヶ月は自分が自分じゃないような感じでしたね。
はじめての出産はただでさえ不安なのに、それは大変でしたね。
本当に突っ伏しちゃう日もあったんですけど、「私がここでダウンしたら、誰もこの子の面倒をみる人がいない」って気をしっかり持つようにして。生まれてはじめて”目が回る”というのも経験しました。本当にぐるぐると世界が回るような。ちょっと自律神経の調子がおかしくなっていたのかもしれないです。
そんな私を見て主人もどんどん手伝ってくれるようになりました。あとはママになっている友達や、子どもがふたりいる兄の奥さん、義弟の奥さんに「これって、大丈夫?」って相談したり。不安になることも多かった時期でしたが、教えてくれる方はたくさんいたのでそこは助けられました。
東さんはどんなことを手伝ってくれたんですか?
主に料理ですね。上手なんですよ。家にいられるときはご飯をいつも作ってくれました。母乳のことを考えて和食系にしたり、あまり辛くないものにしたり。産後はそれにすごく救われましたね。
実はつわりが大変でまったく食べられなかった時期も、主人が作ったお鍋だけは食べられたんですよ。ま、食べてすぐに……ということもありましたけど(苦笑)、食べ物を口に運ぶことすらできなかった時期なので。産前産後も食に関してはすごくサポートしてくれて、料理のできる人で本当によかったなぁと。
産後1ヶ月を過ぎたくらいから私も少し落ち着いてきて、授乳も軌道に乗ってきたので、3ヶ月頃からはミルクもいらなくなって。最初は混合だったんですけど、近所の母乳育児相談室に足しげく通ったこともあり、安定してきました。
中にはミルクをあげることに、罪悪感を感じる方もいらっしゃいますよね。
私はそれほどこだわりがなかったので「母乳が安定するまでは使おう」という感じでお世話になりました。でも母乳が出るのなら、それが私にとってはベストかなと。そこからはもう、すくすくと育ってくれました。産後1ヶ月は私のキャパシティオーバーでぐるぐるしていましたけど、娘自体はもう純粋に愛おしくてたまらなかったので。
ようやく子育ての楽しさを味わえるようになったんですね。
本当にかわいくて仕方がなかったので、「子育てがつらい、イヤだ!」みたいなのはなかったです。2ヶ月くらいになると「オモチャが握れる!」とか、3ヶ月になると「何か言い出した」とか、成長していく姿が見られるじゃないですか? 何かひとつできるようになるたびに「わぁぁ!」って、喜びをかみしめていましたね。
ホルモンバランスが乱れる産後はどんなママにも多かれ少なかれ感情の乱れがやってくるものですが、近くに頼れる人が少ないという環境は想像するとせつないですね。
次回はいよいよ娘さん・詩歌ちゃんについて。おっとりしたママとは対照的に、かなり活発な女の子のようですよ。
取材、文・鈴木麻子 撮影・山口真由子