「平等なえこひいき」が子どもを伸ばす!子どものやる気に火をつける方法とは #ママが知りたい子どもの教育
学校では「子どもはみんな平等に接しましょう」と教えますが、実は子どもが伸びるためには「平等なえこひいき」が大切だと語る「花まる学習会」の代表、高濱正伸先生。一見すると矛盾した言葉ですが、「平等なえこひいき」とは、一体どういうことなのでしょうか?
平等に扱うよりも、内緒で「特別扱い」したほうが伸びる
現在、僕は「なぞぺー」というパズルのシリーズを出版しています。僕がなぜこんなにいっぱいパズルの本を書くようになったかというと、たった1回、学校の先生から「あなた、パズルが上手ね!」といわれた瞬間があったからです。それでエンジンがかかったわけですよ。先生がクラス全員に平等に言葉をかけますが、結果として子どもたちはとくに伸びていないわけです。そうではなく、ひとりだけ呼び出して「お前、すごいよな」と言葉をかけることが大切。つまり子どもが「俺、ちょっと特別かも」と思えることが重要なのです。
「先生に認められた」ことが嬉しくて、問題集をやり続ける
僕の場合は、小学6年生のときの先生との出会いがきっかけでした。あるとき、先生に「高濱、ちょっとこい」と呼び出されました。その先生はすごく怖い人だったので、僕はてっきり怒られると思ったのです。そしたら「高濱。お前は、ちょっと違うわ! 教えててびっくりした」と言うのです。「お前、学校の勉強は簡単すぎるだろう」というから「はい」と答えたら「調子に乗るなよ」といましめられて(笑)。
「世界はもっと広いんだぞ。上には上がいるから。先生がみてやる」といわれました。それで僕は「マジっすか! 先生に認められちゃった」という気持ちになったのですよ。やる気に火がついて「もっとやってやろう」となって。ものすごい量の問題集をやって、先生のところに持っていくわけです。先生は僕が持っていったドリルに、スタンプをポンと押すだけ。でも、先生に認めてもらった気がして嬉しかったのを覚えています。
地元の本屋さんから問題集がなくなるほどやりつくした
地元には本屋さんが一軒しかなく、そこの本屋さんからドリルがなくなるくらいにドリルを解きました。気付いたら中学に入った時点で、成績が県で1番か2番くらいになっていました。偏差値も91くらいでしたが、最初は偏差値の意味もわかっていませんでしたからね(笑)。僕の算数の偏差値はどんどん伸びていきました。周りの子の偏差値もどんどん上がっていきましたが、先生から気にしなくていいと言われたので地道に努力を続けました。
50年目、同級生に会って知った「真実」
僕は50年間ずっと「僕だけをかわいがってくれた」と思い続けていました。あるとき、県内でトップクラスの学校の校長をやっている同級生に会いました。その同級生は「今だから言うけど、俺あの先生にひいきされていた」と言うのです。「特別に呼ばれた? 俺といっしょじゃん」と僕は思って聞いていましたよ。そしたら「お前は将来こういうことを勉強したらいいと先生に言われて、勉強を教えてもらっていた」と言われたんだけど、「いや、俺も同じだから!」って思っていて(笑)。要するに僕とその校長になった同級生は、お互いに「自分だけがひいきされた」と思っていたのですが、先生はそれぞれ一人一人を平等にひいきしていたのです。
「愛されている」という気持ちが自信につながり、やる気を引き出す
全国の児童養護施設をまわっている先生に聞いた話ですが、家庭で愛情を受けてこなかった子でも、ひいきされた子はものすごく伸びるという結果が出ています。児童養護施設の子がだれにひいきされたかといえば、それぞれ違いますが、一人は給食のおばちゃんだったといいます。「ほら、このパンあげるから食べなさい。みんなには内緒だよ」とくれたそうです。その後、その特別扱いされた子はすごく伸びていったそうです。
「自分は人一倍愛されている」「認められた」という経験がその子の自信になり、がんばるエネルギーにつながるのです。
取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶