受動喫煙で「乳幼児突然死症候群」のリスクが増える!?
まわりにいる人のたばこの煙、気になりませんか?
駅や飲食店では禁煙、または分煙などのところが増えたものの、まだまだたばこを吸える場所は多いです。
今、厚生労働省から「小中学校をはじめ、病院や飲食店など、すべての屋内でのたばこを禁止しよう」という法案が出ていますが、自民党たばこ議員連盟からの反対にあってなかなか審議が進んでいません。
たばこの煙による被害がとっても気になるママたちはもちろんのこと、「そんなに神経質にならなくても」と思うママも、この問題について一緒に考えてみませんか?
乳幼児突然死症候群や喘息(ぜんそく)のリスクは受動喫煙で何倍になる?
昨年、厚生労働省の「たばこ白書」で発表されたデータによると、両親の受動喫煙による乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症は受動喫煙のない子どもに比べて4.7倍、ぜんそくによる入院率は1.43倍~1.72倍にもなると発表されました。
さらに、毎年1.5万人の人が受動喫煙で亡くなっています。これは交通事故死亡者数の約4倍です!
たばこを吸う人に関していえば約13万人、合計14.5万人の人たちがたばこによって健康を損ない、命を落としているのです。この亡くなっている人たちは誰かのパパであり、ママかもしれません。もしかしたら子どもかも……。そう思うと、とてもやりきれない気持ちでいっぱいです。
(平成28年国立がん研究センター発表)
厚生労働省VS自民党たばこ議員連盟対案
これを受けて厚生労働省は多くの人が受動喫煙の被害にあっている飲食店や職場などを前面禁煙にする「健康増進法改正(通称:受動喫煙防止法)」を成立させて、一人でもたばこの害で亡くなる人を減らそうとしているのです。
それに対して、「待った!」をかけたのが自民党たばこ議員連盟。「そんなことをしたら飲食店やホテルの売上が落ち込み、税収が減っちゃうよ。飲食店では禁煙・分煙・喫煙の表示をすればいいじゃん。病院だって吸いたい人はいるんだから喫煙ルーム作れば問題なし!」ということなのでしょうが……
「努力」だけじゃ受動喫煙による被害者は減らせない
実は平成15年に「健康増進法」が施行されていますが、これは「受動喫煙を防止するために必要な措置をするよう、極力努力してね」というもの。しかし、あくまで「努力」なので受動喫煙が減らせたかというと、残念ながらそうではないようです。
そこで今回、厚生労働省はより厳しい「健康増進法改正」を作ろうよとしているわけなのですが、これに対して自民党たばこ議員連盟がゆる~い対案を出して反対。
しかも、この自民党たばこ議員連盟に加盟している方は約280名以上もいるため、こちらの案が通るかもしれません。
受動喫煙被害から子どもや妊婦さんを守るために要望書を提出
このまま黙っていてはいけないと立ち上がったのが、認定NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹さんをはじめ、慶應大学 総合政策学部 准教授 中室牧子さん、産婦人科医の宋美玄さん、元世界保健機関たばこ規制部長・日本対がん協会参事 望月友美子さんら4名。3月28日、厚生労働省塩崎恭久大臣に「健康増進法改正」の要望書を提出しました。
駒崎さんは「保育士の立場からいうと、受動喫煙によって乳幼児突然死のリスクは受動喫煙のない子に比べて5倍弱にもなっています。わかっているんだったらやってはいけない。これはある種の喫煙虐待にもつながります」と訴えました。
また2020年に開催される東京オリンピックについては「子どもや妊婦さん、疾患のある人たちがオリンピックを楽しめるようにするためにも、受動喫煙を防ぐ規制を作るべき」と話しました。
産婦人科医の宋さんは、働く女性たちについて次のように語りました。「妊娠してもすぐに報告できなかったり、タバコのないポジションにチェンジしてもらえるわけでもありません。妊婦さん、未来の赤ちゃんに影響するため、自民党の出している対案はなく、厚生労働省案のものにしてほしい」。
また、医学博士の望月さんは「日本でも年間15万人近くの人がたばこの害で亡くなっています。これだけ被害がわかっているのだから、次の世代は健康的な世の中を作るべき。日本の未来を担う子どもたちのためにも私たち大人の力で変えていくことが必要」と、訴えました。
厚生労働省の「健康増進法改正」か、自民党たばこ議員連盟の対案か、みなさんはどちらの案に賛成ですか? また、受動喫煙による健康被害問題についてどう考えますか?
取材、文・長瀬由利子