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【箕面市 上島一彦市長第3回】より良い教育へ。先端技術の導入と先生の質の向上

箕面市長インタビュー記事_3

前回からの続き。緑が多く、閑静な住宅が並ぶ大阪府箕面市。子どもたちの学びについても、のんびりとした雰囲気なのかと思いきや、じつはAIやデータ分析など先端技術を学びに活用している自治体でもあるのです。先端技術を学びに取り入れるとはなかなか想像がつきにくいかもしれません。その一部を、箕面市の上島市長に分かりやすく解説していただきました。
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「子どもの学びに最新技術」文部科学省事業を継続して取り組む

――箕面市では文部科学省事業「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」など、先進的な取り組みが行われていると聞きました。

上島一彦市長(以下、上島市長):まず箕面市では小学校1年生から中学校3年生まですべての児童・生徒に対し、学力・体力・生活習慣の調査を行っています。国も大阪府でも学力テストは行っているのですが、特定の学年でしか行っていません。9年間を通じての変化を見ることができる“ステップアップ調査”を行っているのは、箕面市だけです。個人個人の学力をはじめとした成長の変化をきっちりと把握し、そのデータをAIで分析します。過去のデータは、コニカミノルタさんと協同で分析し、「この児童はこの時期から学習に停滞が見られる」「この部分の学習を強化することで伸びる」などの結果を示すことが可能になりました。そのデータをもとに、1人ひとりの子どもに合った、最適化された個別学習指導という取り組みを行っています。

――箕面市は昔からICT化に取り組んでいたのですか?

上島市長:箕面市では令和2年(2020年)には小中学校で1人1台タブレットを配布しており、学習支援ソフト「tomoLinks」を通してオンライン授業やデジタルドリルを活用しています。なかでも特筆すべきなのは「こころの日記」という機能でしょうか。アプリを開くと、笑っている顔から泣いている顔まで4段階あり、「今の自分の気持ちはこれ」というように顔を選ぶことができます。今日はどうしたい、誰かに相談したいなど、その情報から子どもへの対応が始まるわけです。面と向かって話すのは難しいこともありますが、タブレットなら子どもたちも自分の気持ちを伝えやすいようです。アプリなら複数の先生方で共有できますし、いじめの早期発見にもつながります。

――いじめの発見にも……。そういった先端技術を活用する事業は、自治体だけでは難しいものではないでしょうか。

上島市長:市だけでは難しいですが、民間企業と連携しているのが箕面市のDX(※)の特徴かもしれません。コニカミノルタさんやDeNA(ディー・エヌ・エー)さんなどと連携、いわゆる「民間の知恵」もお借りして取り組んでいます。ちなみに教育に関してだけでなく、役所の申請業務やペーパーレスの取り組みなどにもITを活用しています。これは箕面市の特徴であると言え、全国にはなかなかないものと思っています。

※編集部注
DX(デジタルトランスフォーメーション)……ビッグデータや、AIを始めとするデジタル技術を活用して、業務プロセスや組織の風土・文化などを改革していく取り組み。

先生の教育に力を入れている箕面市

――ほかに文部科学省事業「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」で、箕面市ならではというものはありますか?

上島市長:「AIカメラによる授業の可視化」これはおもしろいと思っています。教室にカメラを入れ、子どもたちや先生の発話比率、視線、動きなど記録し、それらのデータをAIが分析するというものです。

たとえば経験の浅い先生は、黒板の方ばかり向いて授業をしている、子どもの反応があまりないなどの結果が出てきます。一方教えるのが上手な先生は、子どもが積極的に手を挙げて、子どもの発話率も上がっている、というような分析もできます。こういった多角的な分析結果を活かすことで、先生の授業力向上に繋げているのです。

――AIによる分析が、先生方の授業の質の向上につながっているのですね。こういった先端技術を活用した取り組みについて、保護者からの声はありますか?

上島市長:先生方の授業力の向上とともに子どもの学力が高まるということですから、保護者からすると、非常にありがたいというお声を頂いています。ただ、こういった取り組みにおいて特に重要なのは、先生方の覚悟だと考えています。先生方も授業の質を高めるために、本当に頑張ってやってくれていると思っています。

――先生方の向上心があってこそですよね。箕面市には優秀な先生が多いのですか?

上島市長:箕面市の先生の採用は倍率が高くなってきていますし、優秀な先生も多いです。箕面市では「ぴあ・カレッジ」という取り組みを行っています。これは短大生や大学生、大学院生、教員をめざす講師を対象に先生になりたい人を募集し、模範授業やベテランの先生の講座を受ける、というような教員養成セミナーです。ぴあ・カレッジを受講した人の半分くらいは、教職を選んでいます。

――優秀な先生を集めるために、大学生・大学院生へのアプローチから考えているのですね。なぜ早い段階から取り組んでいるのですか?

上島市長:箕面市は、政令都市以外で教育人事権を持っている市ではあるのですが、先生方の給与を決める「給与権」がないんですね。大阪市などは教育人事権と給与権を両方持っているため、”初任給を高くして、先生を募集する”という方法をとることができます。しかし箕面市はそういう給与面からのアプローチは難しいので、制度面で先生になる人へのサポートを行っているというわけです。ただ給与権がないのは課題でもあるので、引き続き国に働きかけていきます。

(編集後記)
教育に関して力を入れている箕面市の取り組みを一部ご紹介いただきました。先端技術を活かしながら、先生の質の向上にも多方面からのアプローチがなされていました。第4回では、支援が必要な子どもに対する取り組みと、観光都市らしい「親子で楽しめる場所」をご紹介します。

箕面市の取り組みの詳しい内容については、文部科学省の資料で見ることができます。

第4回へ続く。

※本記事は2023年11月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。

取材、文・編集部 イラスト・ももいろななえ

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