【第8話:夫SIDE】ある日突然、夫が失踪しました 〜「全てをリセットしたい」編〜
【第7話:夫SIDE】からのつづき
あの日、北村るみと連絡先を交換してからたまに食事に行くようになった。とはいっても、シングルマザーの彼女の育児相談ってやつだ。決してやましいことはない。ただ、仕事や家庭のことで頭を悩ませている俺にとって、いい気分転換になっているのは確かだった。
自宅に帰る日は気が重く、妻のゆきに「どこにいたの?」と質問責めにされる。俺はひたすら「公園……」と言い続けた。
妻が「ねぇこのLINEの女、誰?」と聞いてきても、「知らねーよ」とつっぱねた。
なんの責任も負わないるみとの時間が楽で心が軽かった。それに比べ、うまい飯を作り、部屋をキレイに整えて、ひたすら俺の帰りを待つゆきの存在が重たくてしょうがなかった……。
北村るみは隣の県の大きな団地の、手狭な3LDKに3人家族で住んでいた。小学生と中学生の息子さんがいて、4人でワイワイ話しているのが楽しく、仕事の辛さを忘れさせてくれた。適当でゆるい感じの北村るみが、この家が、今の俺には居心地が良くて。現実味を帯びない軽い会話が心地よかった。今思えば、「日常」から逃げたかった……それだけだった……。俺はるみと、その子どもたちとの仲を深めていった。
離れたい……距離をおきたい……いったんすべてをリセットしたい……。そう決意して、会社に退職届を出した。半ば強引な退職であったが、もういい……知るもんか。あれだけ家族が足かせになって退職できないでいたのに、北村るみが俺の背中を押してくれたんだ……。
なんだかとっても清々しかった……。
※この漫画は体験者本人のご協力の元作成しています。
脚本・渡辺多絵 作画・加藤みちか
※この記事は2020年7月に公開された記事を編集しています。
関連記事
※【第9話:夫SIDE】ある日突然、夫が失踪しました 〜「最後のチャンスをください」編〜
【第8話:夫SIDE】からのつづき
すべてを置いて出てきた俺を、北村るみは温かく受け入れてくれた。俺はそれに甘えてしまった。
そうやって、何もせず、北村るみの家で居候になりながら、子どもたちの...
※【第1話】ある日突然、夫が失踪しました 〜「帰ってこない夫」編〜
私と夫は中学校の同級生でした。
ぶっきらぼうだけど、根はとても優しい夫のことが好きだった中学生時代。当時はまだ幼くて「付き合う」までには至りませんでしたが、成人式で再会し付き合うことになり、とんとん...
※<母親の不倫>【前編】元同級生と6年の不倫関係。離婚したその日に彼の家に行ったら……
私(30歳)は既婚者で子どもが2人います。
しかし6年前の中学校の同窓会で、中学生時代に付き合っていた彼と再会。お互いに盛り上がってしまい、その後ずっと不倫の関係にあります。
彼は独身なの...