【第1話】ある日突然、夫が失踪しました 〜「帰ってこない夫」編〜
私と夫は中学校の同級生でした。
ぶっきらぼうだけど、根はとても優しい夫のことが好きだった中学生時代。当時はまだ幼くて「付き合う」までには至りませんでしたが、成人式で再会し付き合うことになり、とんとん拍子に結婚することになりました。
夫は決して愛想が良いタイプではないけれど、真面目で優しく、私のつくるご飯を誰よりも「おいしい!おいしい!」と言って食べてくれる笑顔が何よりも好きでした。
その幸せが崩れ出したのは、桜がキレイに咲きはじめた4月のことでした……。
明け方、隣で眠っているはずの夫のベッドは、昨夜私がキレイにしたままです。ここ最近、夫は週に2~3日しか帰宅しなくなっていました。今までは帰りが遅い日もありましたが仕事が終わるとまっすぐに帰宅し、朝帰りなどは一度もしなかった夫なのに、です。
帰ってきた夫にどこにいたのか、何をしていたのかを聞くと……
我が家には5歳、3歳、1歳の三兄弟がいるので、正直家は「ゆっくり悩み事ができる環境」ではありません。たまにはひとりでゆっくり考えごとをしたい気持ちも分かりますが、公園に寝泊まりしなくてはいけないほどの悩みとは……。よっぽどのことなのでしょう……。
どこにいるか、今日は帰るのかを確かめようと、いつも夫の携帯に電話をかけますが……
『おかけになった電話番号は、電波の入っていない場所にいるか、電源が入っていないためかかりません』
そう、夫が帰宅しない日は決まって携帯の電源が切られているのです……。
それからも夫は帰ってきたり、帰ってこなかったりを繰り返し。「どこにいたの?」と聞けば「……公園にいた」の一点張り。彼が「公園いる」と言うのであれば、そうなのだろうと。私はひたすらその言葉を信じていました。
「風邪、ひかないようにね……」と言っても、たいした返答もなく。気づけば夫は私に背を向けて寝ることが多くなっていきました。
そんなことが続いていたある日。
脚本・渡辺多絵 作画・加藤みちか