母乳は出たけど、あえて完全母乳育児にしなかったママたち。その理由は?
ママスタコミュニティにこんな投稿が寄せられました。
『母乳が出るけど、あえて母乳とミルク両方をあげていた人、なぜですか?』
投稿者さんは母乳が出るママなら、赤ちゃんに母乳のみ与えるほうが手間がないのでは? と考えたのでしょう。そうすればミルク代もかからないし哺乳瓶も必要ありませんよね。しかし実際には母乳が出ていてもあえて母乳とミルクの両方を与えているママや、ミルクのみ与えているママたちもいます。その理由はなんでしょうか? 今回、さまざまな意見が集まりましたのでご紹介いたします!
授乳方法、ママたちそれぞれの呼びかたと意味合い
ママたちの間では母乳だけを与える授乳方法を「母乳育児」「完全母乳(略して完母)」と呼ぶことがあるようです。母乳+ミルクの組み合わせの場合は「混合栄養(略して混合)」、ミルクだけを与える場合を「完全ミルク(略して完ミ)」と呼ぶこともあるようですね。しかし例えば「9割9分母乳を飲ませているけれど、自身の体調によって時おりミルクをあげる」というママが「母乳育児」か「混合栄養」かなどを判断できる基準は持ち得ないようで……。
『新生児の頃は混合で、空腹→たっぷり飲んで満腹→たっぷり寝る→空腹…のサイクルでした。今はほぼ完母になり、夜は↑の(前に記したような)サイクルなのですが、朝起きた後は、空腹→たっぷり飲んで満腹→寝ずにぐずぐずになってしまいました』
ママスタコミュニティにはこのママのように「ほぼ完母」と表現するママが時おりコメントを寄せてくれます。このママのケースでは「授乳し始めは混合栄養で、完全母乳に切り替えようとしているが完璧に母乳100%にはなっていない」とも読み取れますよね。どうしても飲んでくれないときにはミルクを飲ませているので「ほぼ完母」と言っているのかもしれません。つまり授乳方法を差すいくつかの表現は使う人によって意味合いが異なりそうであることを、まずはママたちが理解しておくといいのかもしれません。
あえて母乳だけにしなかったママたちの理由は?
ママスタコミュニティに寄せられた、母乳は出るけれどあえて母乳だけにしなかったママたちの意見をご紹介します。なかでも一番多かった意見がこちらです。
ママ以外の人でもお世話できるように
『ママが体調悪くなったり何かあったときのために混合にしていた』
『保育園に預けることを考えて混合』
『上の子の卒業式や入学式は赤ちゃんを連れていけないから』
『1人目は完母で育てたが、ミルクを受け付けなくなり私以外お世話できなくなったから』
『病気や仕事のときにミルクを飲まなくて大変だったから、2人目3人目は最初から混合』
『完母じゃちょっとパパに預けて買い物とか、できないじゃん』
完全に母乳だけを与えるとなると、基本的には授乳のたびにママが赤ちゃんのそばにいることが必要になります。子育て中のママは寝不足になりがちですが、母乳だけではなくミルクも飲める場合は、パパにバトンタッチして休みたいときに休むことができますね。またパパに赤ちゃんを預けて買い物にいったり、保育園に預けたりする予定があれば、ミルク慣れをしておくのもひとつの選択なのかもしれません。
少しでも自分(ママ)の負担を軽くしたい!
『1人目の子は混合だったけど、おっぱいへの執着がすごかったからストレスを感じていた。2人目は完ミ。夜もよく寝るし、ストレスなく穏やかな気持ちでお母さんできている』
『2人目はあえて混合。寝る前にミルクあげると、夜中起きずにぐっすり寝てくれる』
『飲んだ量が目に見えて分かるしミルクの方がよく寝るから』
『ミルクは飲む量はっきりわかってて楽です』
母乳の場合は赤ちゃんがどれだけの量を飲めているかわかりづらいですよね。その点哺乳瓶での授乳は飲んでいる量が把握しやすいのでママも安心できますよね。それだけでママのストレスは軽減できるのかもしれません。また睡眠不足が続くとママは些細なことでイライラしてしまうことも増えるでしょう。赤ちゃんがぐっすり眠ってくれるのであればミルクを与えたいというママの気持ちもわかります。穏やかな気持ちで赤ちゃんに接することが、赤ちゃんにとってもママにとってもメリットになりますよね!
飲めなかった、飲ませられなかったから
『早産だし双子だったため、うまく母乳が飲めなかった』
『花粉症だし頭痛持ちで薬を飲まなければならなかったので』
実は筆者も2歳半になる双子のママ。小さく生まれてきたためうまくおっぱいから飲めず、しばらくは搾乳をした母乳を与えながらミルクと混合にしていました。しかし搾乳自体、なかなか負担が大きいもの。直接母乳が吸えるようになってからも乳首が切れてしまったりと苦痛が続いたため、思い切って生後4か月で完ミに変更することに。すると授乳のストレスから解放されて一気にラクになりました! その分子どもに優しく接することができるようになり、私個人としては完ミにして本当によかったと思っています。
身近な人には言いにくいけれど……ママたちの本音
あまり大きな声では言えないけれど、こっそりと本音を打ち明けてくれたママもいました。
『もともと母乳育児にこだわっていなかったから』
『断乳卒乳を見据えて。他の人がスキンシップだのなんだの言ってもやっぱり歩けて話せる月齢の子がおっぱいおっぱい言って服ぺろんとして吸ってるのは私には気持ち悪くて無理。もちろん他のママに何か言うつもりはないけどね』
『おっぱいを吸われるのが気持ち悪くてだめ』
ママの個人的な感覚やこだわりが理由である場合、身近にいる知人やママ友にはなかなか言いにくいものかもしれません。
震災を経験した方の意見もありました
『津波の時、当時子がまだ5カ月だった完母の友達は妹の赤ちゃんに授乳してたって話してたよ。妹の赤ちゃんは完ミだったからミルク買えなくて。哺乳瓶慣れはしてた方がいいけど、母乳かミルクかは家庭それぞれだよね』
震災後、物資の供給がいきわたらずにミルクが入手できなかった事例を紹介するコメントも届いています。こうした非常事態を考えたら、母乳が出るのであれば母乳にしておいたほうがいいかもしれないと考えるママは一定数いるようでした。一方で震災によるストレスで母乳が止まってしまったという声も耳にしたことがあります。せっかく手に入ったミルクも母乳で育ってきた赤ちゃんには受け入れられず、ミルクを拒否されてしまったという体験談も……。そういった経験を経たママは「いざというときのために、ミルクも飲めるようにしておいては?」と思うのかもしれませんね。2019年3月には液体ミルクの販売がスタートしました。さまざまな経験をしてきたからこそ、母乳だけではなくミルクも飲めるようにというママたちの思いがあるのですね。
子育てに“当たり前”はない
子育てするうえで欠かせない授乳についてのお悩み。今回はママたちが完全母乳にしないさまざまな理由が見えてきました。「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」でも授乳支援におけるありかたとして、
『母乳だけにこだわらず、必要に応じて育児用ミルクを使う等、適切な支援を行うことが必要である』
『母子の健康等の理由から育児用ミルクを選択する場合は、その決定を尊重するとともに母親の心の状態等に十分に配慮し、母親に安心感を与えるような支援が必要である』
と述べられています。完母にできるなら完母にするのが当たり前と考える方もなかにはいらっしゃるかもしれませんが、それもあくまで個人の選択。実際に子育てをするママが納得できるカタチであれば、どのような授乳スタイルでもいいのではないでしょうか。どんな授乳方法を選んだとしても“子どものためを思った授乳方法”であることは間違いないのですから。
文・吉岡可奈 編集・Natsu/blackcat イラスト・Ponko