「髙橋大輔」降臨!フロアに愛を描く 木下グループpresents『LOVE ON THE FLOOR』舞台リポート
6月30日に開幕した、木下グループpresents『LOVE ON THE FLOOR』。フィギュアスケーター・髙橋大輔さんが出演するということで話題を集めているダンスショーは連日盛況のなか、いよいよ後半に突入しました。
スイッチONで解き放たれる存在感
事前のインタビューなどで氷の上とは勝手がちがう陸でのダンスへのとまどいを語ったり、めずらしく「挑戦」という言葉を使ったりと、いささか不安げな様子を見せていた髙橋さん。なるほどそういうものなのか……でもそれならそれで挑戦するその姿を応援しましょうと、抑え気味の期待値で初日の舞台を観賞させていただきました。
結論から言うと事前の弱気な発言は何だったのか。ステージ上でときに激しく、ときに凛々しく、ときに儚げに踊る髙橋さんは、トップスケーターのオーラそのままに会場全体を完全に支配していたのです。
……そうでした。現役時代から彼は控え目な発言(本人は本気なのでしょうが)とうらはらに、ひとたび氷に上がると豹変し、圧倒的なパフォーマンスで観ている者を魅了してしまう、そんな選手でした。今回も弱気な台詞を真に受けてはいけなかったのです。うかつでした。
たしかに、技術的なスキルだけでいえばほかのダンサーたちと同レベルというわけにはいきません。彼らは錚々たる経歴をひっさげて臨んだオーディションにおいて400人の中から選ばれた精鋭であり、ダンスに邁進してきたプロたちなのです。つまり今回のステージは「フィギュアスケーターがダンスを踊ってみた」的な企画モノではなく、プロダンサーたちによるガチなショーであり、最高のパフォーマンスをめざして立っている真剣勝負の舞台なのです。だからこそ髙橋さんの参加は本当に挑戦であり、強い決意が必要だったのでしょう。
とはいえ技術面では及ばずとも、存在感や表現力で見劣りする場面は一度もありません。長年にわたり競技の世界で極めてきた「魅せる」スキルは、髙橋さんをはじめとする4人のスケーターの真骨頂であり、ステージ上でも健在でした。
さて、そんな『LOVE ON THE FLOOR』の見どころを髙橋さんフォーカスでさくっと紹介しましょう。
ソロパート&女性たちとの絡みに注目
舞台はプロローグとエピローグにはさまれた4幕から成り、愛がテーマの物語を、台詞は一切無しに多彩なジャンルのダンスのみで構成しています。髙橋さんはゲストダンサーという位置づけで物語の進行役を務めます。エンディング以外は一貫して白いコスチュームですべての幕に出演し、存在感を放ちます。
ソロダンスは2度。プロローグと第4幕終わりにしっとりとバラードナンバーを舞います。
さらに、女性たちとのダンスにも注目。第1幕「ロマンス」ではクリスティ・ヤマグチさんを相手に、ジェントルな青年のようにスマートなペアダンスを披露します。
第2幕「情熱」では、メリル・デイビスさんとの妖艶な絡みが。メリルさんのファンを公言し「いつか踊りたい」と語っていた髙橋さんの夢が叶った瞬間ですね。そんな予備知識のせいか踊りは官能的なのに、初恋が叶った少年の甘酸っぱさを感じてしまいました。
第4幕「パワー」では、真っ赤なドレスを身にまとった主演のシェリルさんと真っ白なマタドールのような衣装でフラメンコを舞います。情熱的な音楽と相まってステージ上の赤と白が鮮烈に輝きます。シェリルさんとはもう一度、情感たっぷりなバラードのシーンがあります。シングルスケーターである彼がシェリルさんを床すれすれに抱き上げ、デススパイラルばりにターンする姿は新鮮です。
さらに第3幕「痛み」ではチャーリー・ホワイトさんとユニゾンのシーンが見られます。この二人が氷上ではなく床の上で踊っているなんて不思議なものの、やはりとてもかっこよく大きな見どころのひとつといえそう。また、お立ち台の上から男性ダンサー陣を扇動するシーンも壮観でした。
髙橋さん出演以外のパートも、もちろんすべてが高いクオリティのパフォーマンスの連続です。ミュージカル的なナンバー、コンテンポラリー系、R18的な刺激の強いモノなどなど、ダンスの魅力を存分に堪能できる、あっという間の2時間でした。とくにTVやネットなどで流れているエンディング、真っ赤なスーツで全員で踊るシーンは圧巻、会場は最高潮の興奮に包まれます。
髙橋さんのファンでなくても一流のショーを楽しみたいという方、一見の価値は充分に有りです。
次の扉をめざし〜The Long And Winding Road
髙橋さんの現役時代は、日本人男子初の世界選手権・グランプリファイナル制覇、オリンピックメダリストと、輝かしい経歴に彩られています。しかし彼の魅力は記録だけではなく、記憶に残るプログラム・試合がいくつも在ることではないでしょうか。世界の名だたるコレオグラファーが彼の振り付けを切望し、国内外の後輩たちが彼のステップ、体の動きに憧れ、練習を重ねているといいます。彼のスケートが男子フィギュアに新しい潮流を起こしたのは間違いありません。
現役最後の試合となったソチオリンピックでFSのラストに流れていたのは「The Long And Winding Road」。この舞台が終わった後も次の扉をめざし、幾多の曲がり角を華麗にターンしながら彼は歩み続けるのだと思います。ファンもまたその姿を見失わないように共に歩んでいくのではないでしょうか。
文・Atakali
■木下グループ presents 「LOVE ON THE FLOOR」
2016年 6月30日(木)~7月9日(土)東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888 (平日12:00-19:00)
主催:木下グループ/TBS/IMG/USM/DISK GARAGE
後援:BS-TBS/TBSラジオ