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新型コロナウイルスの感染リスクを下げる対策・意味のない対策とは

新型コロナウイルスの感染リスクを下げる対策・意味のない対策とは【感染症医・山本修平先生】

新型コロナウイルスの感染を予防する方法として、「3密を避けること」「消毒や除菌をすること」があります。感染症対策なら万全に行いたいところですが、なかには効果的になっていない場合もあるかもしれません。

静岡県立静岡がんセンター感染症内科の山本修平先生に、「3密を避けること」をはじめとする有効な対策と、あまり意味のない対策について、お話を伺いました。

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3密を避けた感染リスクの効果は、データが証明している

――3密(密閉、密集、密接)を避けることには、どういった意味があるのでしょうか?

山本修平先生(以下、山本先生):3密である場合と、3密でない場合においては感染リスクが18.7倍もの差がある、というデータがあります。手洗いやマスクに加えて、3密を避けることで、感染リスクはじゅうぶんに下げられるんです。

3密は新型コロナウイルスの感染リスクの高い典型的な状況です新型コロナウイルスに感染した人から周囲の人たちにどれくらい感染を広がったのかを調査したところ、3密の状況とそうでない状況で感染の広がりやすさに大きな差が見られました。この結果から「3密を避けよう」という働きかけが始まりました。

3密を避ける、そしてマスクをしたり手洗いをしたりすることは非常に地味で、面白みがないように感じられるかもしれません。しかし基本的な感染予防対策をすることが、新型コロナウイルスにとっては有効な感染予防対策になります。

――避けたい3密(密閉、密集、密接)のうち、先生が最も重要だとおもわれるのは、どの状況ですか?

山本先生:最も重要なのは「密接」を避けることです。新型コロナウイルスの感染経路はおもに「飛沫感染」です。相手の咳やくしゃみが届くような2m以内くらいの距離で、お互いにマスクをしていない状況になったときが最も多い感染経路になります。屋外で人との距離が保たれている状況であればマスクは不要ですが、至近距離で人と接するときはマスクが有効です。

誤解されがちですが、マスクは感染していない人が自分を守る効果は弱く、感染している人が周囲に広げないようにすることがメインの役割です。特に新型コロナウイルスは症状が出る前の潜伏時期から周りに感染させてしまうという困った特徴があります。なので「咳が出ている人はマスクをしましょう」ではなく、無症状であっても新型コロナウイルスにかかっているかもしれないと考えて「みんなでマスクをしましょう」という流れになったんですね。

――マスクは自分を守る手段ではなく、感染拡大を予防する手段なのですね。

山本先生:新型コロナウイルスの感染が拡大し問題化するまでは、日常的にずっとマスクをしても感染予防効果はそれほどないのでは、といわれていました。しかし新型コロナウイルスが他の感染症のウイルスと異なり「症状が出る前から感染力が強い」ということがわかったため、無症状の感染者が感染拡大を助長することのないように、マスクをつけることが推奨されるようになりました。

ただ、小さな子どもはマスクをうまくつけられないことや、つけている時に息苦しくなってもうまく伝えられず、かえって事故につながる危険があります。特に2歳未満の子どもはつけないほうがよいです。それ以上の年齢の子どもでも大人に比べるとマスクがどれくらい有効かわかっていませんので、マスクにこだわりすぎないほうが良いと思います。

感染者が多い地域から少ない地域へ移動して高齢者に会うことはまだリスクがある

――先生は今(※取材時は2020年10月)の日本の新型コロナウイルスの感染状況をどのようにみておられますか?

山本先生:感染が拡大している地域とそうではない地域の差があるな、感染が拡大している地域は冬に向けて心配かな、と思います。長期化していて無理もないところですが、ちょっと中だるみというか、気持ちのゆるみが出ている大人もいるのかもしれませんね。一方で経済活動は必要です。ロックダウンのようなダメージの大きい制限をしなくてもいいように、3密を避ける、マスク・手洗いを続けていく必要がありますね。

――まだ新型コロナウイルスのワクチンが開発途上の状況で、感染が拡大されている地域から出てレジャーや観光に出かけてもいいのでしょうか?

山本先生:レジャーでの外出は工夫次第で、可能だと思います。渋滞や混雑のピークを避けるなど、3密を避けながらの旅行・観光をする方法もありますよね。オフピークを狙って人が少ない時期、時間帯に行動すると感染リスクは下げられると思います。

――感染リスクを下げることを考えると、どのような移動手段を取ることが求められますか?

山本先生:新幹線や飛行機は、窓が開けられませんが強力に換気されていますので、マスクをして、大声で話したりしなければ、電車や飛行機での移動における感染リスクはそれほど高くありません。なので3密を避け、混雑する時期や時間帯を避けることを心がければ問題なく利用できると思います。

――感染者が多い地域から、感染者があまり出ていない地域への帰省をすることは可能でしょうか?

山本先生:帰省先で高齢者と会うこともあるでしょう。高齢者が新型コロナウイルスに感染すると、重症化するリスクは高くなります。感染者が多い地域から感染者が少ない地域に移動して高齢者に会うのは、無症状の感染者もいることを考えると、感染リスクが高いといえますね。

――PCR検査を移動する前に受けて結果が陰性の場合は、安心して帰省できますか?

山本先生:PCR検査は絶対ではなくて見逃してしまうことがあります。どうしても帰省しなければいけない、帰省したいのなら自分が感染しているかもしれないと想定して会うしかないと思います。お互いマスクをして距離をとり、換気のよい場所(屋外)で会うなど、3密を避けた感染対策をかなりきっちりしたほうが良いと思います。

自費で検査をして陰性でも対策が不要にはならないので、帰省のためだけに検査をしなくても良いのではと思います。ただ感染者が多くない地域間の移動であればそれほどリスクは高くない、と思います。それでも高齢者や持病のある人と会うときには、感染対策はしっかりしないといけません。まだ十分はっきりはしていませんが、子どもから周囲へ感染するリスクは大人から感染するリスクよりも低いのではないかというデータが出てきてはいます。ただ、高齢者の重症化のリスクを考えると流行地域の子どもと高齢者の接触は、まだしばらく避けたほうが良いと思います。

感染予防対策であまり有効でないことは?

――今やさまざな場所で消毒や除菌が徹底されています。家庭で消毒や除菌をするときに注意することはありますか?

山本先生:首から下げるタイプの除菌グッズは、実は感染症の予防効果は証明されていないんですね。とくに屋外では薬液の効果も拡散してしまいますし、薬液が肌につくとやけどのようなひどい皮膚炎を起こします。また容器を下げるひもが子どもの首に絡まるリスクも決して低くはありません。首から下げるタイプの除菌グッズの注意点については、消費者庁からも行政指導が出ています。首から下げるタイプの除菌グッズを身につけるよりも、お互いの距離を保つ、こまめに手洗いをするほうが新型コロナウイルスへの感染対策になりますね。公園など屋外で遊ぶときには、無理にマスクをつけなくてもいいと思います。

消毒に関しても、よく家庭でも漂白剤として使われる「次亜塩素酸ナトリウム」は、強い殺菌作用がありドアノブなどの消毒に使うことがありますが、皮膚をいためますので使う時には手袋をして使う必要があります。あやまって、皮膚を直接消毒したり、スプレーで空間にまくことはとても危険なので絶対にやめてください。小さな子どものいる家庭では皮膚につくと危険な薬品は使わずに、モノの消毒が必要な時には通常の台所用の洗剤を薄めたものやアルコールなどのほうが安全かと思います。

――毎日マスク、手洗い、うがいをしていてもなかなか目に見える効果が分からず、ついさらに対策をしたくなります。

山本先生:手洗いなどの地味な対策だけでいいのかなと不安になって、除菌グッズなど派手な広告をしている商品に惹かれてしまう気持ちはよくわかります。だからこそ、地味な対策だけで十分予防効果があること、日々の生活で基本的な対策を淡々と続けることが大切なんだということを自分たち専門家が発信し続けないといけないと思っています。

過剰に対策を頑張りすぎて、心理的に疲弊してしまうのも心配ですので、無理なく続けやすい方法を提案できればと思っています。

――ほかに「これは有効な感染予防対策とはいえない」と考えられるものには、何がありますか?

山本先生:感染予防のためにゴム手袋をつけっぱなしにしているのもよくないですね。なんとなく手袋をつけて安心してしまっていると、手袋をしたままうっかり目や鼻をさわってしまい、手袋に付着したウイルスをかえってひろげてしまうリスクがあります。また、手袋を外すときにウイルスが素手についてしまうので、外した直後に手洗いかアルコール消毒をしっかりする必要があります。医療現場でも手袋のつけっぱなしはしておらず、必要な時だけしかつけていません。日常生活では手袋よりもこまめな手洗いがおすすめですね。

――顔や口を覆うフェイスシールドは、マスクの代わりに使えますか?

山本先生:フェイスシールドは日常生活には不要だと思います。フェイスシールドが必要になるシーンは、医療従事者が新型コロナウイルスの患者さんに近接して診察するときなどにマスクなど他の防護具と一緒に使うときですね。目に直接、飛沫が入ったりしないようにするためにつけるものでフェイスシールド単独での効果は低いです。

口の周囲だけを覆うタイプのマウスシールドも、隙間から飛沫が漏れてしまいます。外からの飛沫も隙間から入ってきてしまうでしょう。マスクの代わりにはならないのでは、と思いますね。

マスクの役割は無症状だけれど感染していた人が、自分の飛沫を外に出さないためにすることです。たとえば布マスクは防御力は弱いものの、外に自分の飛沫を漏らさないようにする効果はあるんです。感染を拡大させないためにみんなでマスクをすれば、防御力が強くない布マスクでもじゅうぶんです。

手話通訳の方など、マスクをつけられない事情がある場合では、フェイスシールドで代用がやむをえないかもしれませんが、シールドをつけることよりも飛沫が届かない1〜2m以上の距離をあけることを重視してもらえればと思います。

3密を避け、マスク・手洗いをすることが感染予防の基本

新型コロナウイルスの影響を受けた生活が続いて、手洗いやマスクをすることが当たり前になりました。ただ手洗いやマスクをすることで感染予防対策がじゅうぶんなのか、疑問に感じることもあるかもしれません。

しかし山本先生からは何度も「マスク・手洗いをすることと、3密を避けることが感染予防の基本です」「子どもではマスクのデメリットにも注意」というお話がありました。地味でも、効果が目にみえなくてもマスク・手洗いをし、3密を避ける生活を続けていきたいですね。

取材、文・しのむ 編集・しらたまよ イラスト・よしはな

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