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早めに備えたい!感染症内科医に聞く新型コロナウイルスありきの日常生活における感染症対策

早めに備えたい!新型コロナウイルスありきの生活における感染症対策【感染症医・山本修平先生】

2020年は新型コロナウイルスの影響を受けた生活となりました。新型コロナウイルスの影響がまだまだあるなかで、インフルエンザなどの感染症が流行する寒い季節を迎えます。家族の健康を守るために、家庭でどんなことができるのでしょうか。

静岡県立静岡がんセンター感染症内科の山本修平先生にお話を伺いました。

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家庭でできる感染症への備えとは

――新型コロナウイルスの影響があるなかで、インフルエンザなどの感染症が流行する季節を迎えようとしています。子どもたちが感染症にかからないようにするためには、家庭でどんなことをすればいいでしょうか?

山本修平先生(以下、山本先生):まずは手洗いですね。ひんぱんに手洗いをする必要はありませんが、帰宅したとき、食事の前など何か行動するときのタイミングで手洗いをするといいですね。手洗いを習慣づけることが、子どもたちには大切なことだとおもいます。理想は、親からの働きかけや声かけがなくても手洗いをするようになることですね。

――手洗いの仕方にコツはありますか?

山本先生:実は大人でも正しく手洗いをすることは難しいものなんです。親指と人差し指の間、爪の間、手首は洗い残しが出やすい部分です。水で洗うだけだと除菌効果が弱くなってしまいます。子どもたちには「指先や指のあいだまでしっかり洗いましょう」と歌っている手洗いの動画などを見てもらいながら楽しみつつ、手洗い用の石けんを使ってしっかり手洗いしてもらうといいのではないでしょうか。

30秒間手洗いをするのが理想ですがなかなかできないので、海外ではハッピーバースデイの歌を2回歌うなどの提案をしている国もあります。どんな歌でもいいですが、子ども向けのシンプルな童謡やアニメソングだとだいたい2番まで歌うと30秒くらいになります。

1回ごとの手洗いを完璧にするよりも、食事、帰宅時などのタイミングでこまめに手洗いをすることを習慣づけるほうがいいとおもいますね。

また特に大人は手洗いをしすぎると、肌が乾燥して荒れることがあります。手が荒れると菌が繁殖しやすくなることもありますので、手洗いと保湿をセットで考えていただきたいですね。手洗いの後は保湿クリームなどを塗っていただくといいのではないでしょうか。

――手洗いのほかに、うがいもやったほうがいいのでしょうか?

山本先生:うがいはしてもいいけれど、感染症を予防する目的では、あまり効果があるとは言えません。うがいよりも手洗いのほうが大切、といわれています。うがいするなら専用のうがい液ではなく、水道水でじゅうぶんですよ。

インフルエンザのほうが子どもは重症化しやすい。予防接種を受けてほしい

――新型コロナウイルスの影響があるなかで別の感染症に備えることになりますが、一度に複数の感染症にかかることはあるのでしょうか?

山本先生:一度に複数の感染症、新型コロナウイルスとインフルエンザにかかった事例は実際に報告がありますが、かなりまれです。データが不足していて同時感染による影響はよくわかっていない段階です。ただ、現時点では一度に複数の感染症にかかったからといってどちらか、あるいはどちらもが重症化しやすい、というデータも出ていません。

――子どもを持つ親は、新型コロナウイルスとインフルエンザの流行のリスクがあるとき、どのような備えをすればいいのでしょうか?

山本先生:どのウイルスも感染経路は同じなので、対策は大きくは変わらないですが、インフルエンザはワクチンがありますので、流行する前に予防接種を受けておくことをお勧めします。子どもは大人に比べると新型コロナウイルスにかかりにくく、かかっても軽症で重症化のリスクが低い、というデータがあります。子どもにとっては、新型コロナウイルスよりも毎年流行するインフルエンザやRSウイルスのほうが重症化することがあり問題です。一方で高齢者にとってはインフルエンザも危険ですが、新型コロナウイルスの方がより高い死亡率を認めています。

――新型コロナウイルスは子どもはかかりにくく重症化リスクは少ないのですね。インフルエンザの予防接種を受けてから免疫が付くまでどのくらいの時間がかかりますか?

山本先生:インフルエンザの予防接種をしたあと、免疫が付くまで約2週間かかります。したがって流行が始まる前に予防接種を受けておくことが重要になります。他の予防接種との同時接種を考えておられる方は、かかりつけの先生に相談して時期を決めるのが一番いい方法ですね。

――1回インフルエンザの予防接種をしたら、どのくらいの期間、免疫が続きますか?

山本先生:約5ヶ月もつ、といわれているので、予防接種を受けたシーズンは免疫が続くと考えられます。

子どもの急な体調不良。夜間救急に行く目安は発熱ではない?

――次は子どもの体調不良が起こったときの対処についてお聞かせください。病院の窓口が開いていない時間に、子どもの体調が悪くなることがあります。医療関係者ではない親は、夜間救急に行くかどうかをどう判断すればいいのでしょうか?

山本先生:救急に行くかどうかで、どれくらいの熱が出ていれば行った方がいいですか? と聞かれることがありますが、実は熱の程度だけでは緊急性があるかどうか判断できないことがほとんどです。生後3ヶ月未満の子どもでは、重症の感染症が隠れていることがあるので、早めに電話相談や受診をしたほうがいいですが、それ以上の年齢では高熱があっても意外とケロッとしていれば慌てて夜中に受診しなくても大丈夫です。子どもは大人よりも高い熱がでやすいので、発熱だけでなくそれ以外の症状をみることが急ぐかどうかのポイントになります。発熱があっても比較的元気にしているのなら夜間救急には行かず、翌日まで様子をみていいとおもいますね。

――では夜間救急に行ったほうがいいケースには、どんなものがありますか?

山本先生:急いだほうがいいケースにはいくつかあります。

一つ目は見た目の様子です。ぐったりしている。視線が合わない。表情がない。泣かない。泣き声に元気がない。弱々しく泣き止まない。手足の動きが少ない。

二つ目は呼吸の様子です。何もしていないのに呼吸がすごく荒い。息を吸いすぎて肋骨がへこんでいる。「ケンケン」「ゼーゼー」と変な音の咳をしている。

三つ目は皮膚の色の様子で、顔色や唇の色が悪い。

こういった状態が見られたら、すぐに夜間救急に行ったほうがいいですね。

他には、水分が全然とれないですとか、以前の体調不良のときよりもずっとしんどそうで何かおかしいぞという親の直感も大事だったりします。もし心配な場合や病院に行くか迷う場合は、まず地域の救急電話相談などに連絡するといいですね。休日・夜間に相談する方法として、こども医療電話相談があります。全国共通の番号で#8000に電話すると、お住まいの都道府県の窓口につながります。

子どもは新型コロナウイルスにかかりにくい。インフルエンザの流行リスクに備えよう

子どもは新型コロナウイルスにかかりにくい、かかっても軽症ですむことが多いというお話がありました。一方でこれからの季節に流行するインフルエンザなどの感染症では時に重症化してしまう場合もあり、注意が必要です。

新型コロナウイルスのワクチンは2020年10月時点でまだ開発途上ですが、インフルエンザのワクチンはすでにあります。

新型コロナウイルスもインフルエンザも同じ呼吸器系の感染症であることから、マスクをつけること、手洗いを徹底すること、3密を避けることを引き続きやっていくことが共通の対策になります。ただ小さい子どもはマスクをつけられなかったり、手洗いを毎回丁寧にすることには限界があります。ワクチンで予防できるインフルエンザなどの感染症の予防接種を受け、感染リスクを低減させることが、子どもたちを守るひとつの手段になるのではないでしょうか。

取材、文・しのむ 編集・しらたまよ イラスト・よしはな

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