【第5話】ある日突然、夫が失踪しました 〜「実家へ戻る日」編〜
【第4話】からのつづき
お義父さんと隣の県にある団地へ車で向かいました。団地の部屋番号は分からなくても、近くで張っていれば夫と会えるかもしれないと思っていた矢先、車の中から夫の姿が目にとまりました。
年上にみえる女性と、夫、そしてその女性の子どもらしき男の子が2人。4人で笑いながら歩いていたのです……。思わず息をのんだ私。
次夫に会ったら何て言ってやろう……いきなり殴ろうか……罵声のひとつでも浴びさせてやろうか……いきなり離婚届を突き付けてやろうか……いろいろと考えていました。たくさんの恨みの言葉を用意していたはずなのに、夫を見て最初に出てきた言葉は……
1ヶ月ぶりに見る夫の顔は、記憶よりも痩せていて。あまり元気そうには見えませんでした。しかし夫はあの女性のところに行き別の人生を選んだのだから。私の出る幕はない――
もう何も話すことはない。離婚して実家に帰る決心がつきました。
私は、お義父さんに離婚届を託し、あとのことはお願いしてそのまま帰ることにしました。
そうして私は住んでいるマンションを解約し、実家のある北海道に引っ越すことに。バタバタと手続きやら何やらであっという間に時は過ぎてゆきました。
子どもたちは「どうして引っ越すの?」と状況が理解できてなさそうで、私は「北海道のおばあちゃんのお店が、人手が足りなくて大変なんだって! お手伝いに行ってあげよう」と説明しました。
そして夫のことは「こっちで大切なお仕事があるから一緒に北海道に行けない」とだけ告げました。子どもたちには本当のことは言えず、ただ抱きしめることしかできませんでした。
すべて一から出直しだ。今までは夫におんぶにだっこだったけれど、今度は私がしっかり働いて子どもたちを立派に育ててみせる……。そう固く決意をし飛行機で北海道に向かいました。
北海道に到着し、実家に到着すると同時に私のバッグのなかに入っていた夫の携帯が鳴りました。確認すると「非通知」の表示が。
もしかして……!
……なに? なんなの? 浮気はしてないって……捨てたつもりもないって……。じゃあ私が苦しんだあの日々はなんだったの?
「都合よすぎる……」
電話を切ったあとから、ますます怒りが沸いてきてしまいました。
絶対に戻ってなんかやるものか……私たちがいなくなって、ひとり寂しく、自分のしたことを死ぬほど後悔すればいいんだ……。
そう思い前を向こうとしましたが、北海道の実家での生活はそううまくはいきませんでした……。
脚本・渡辺多絵 作画・加藤みちか