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子育ての正解はどこに?自分らしく子育てを楽しむヒントとは【助産師・杉浦加菜子さん】

172AE5F4-6F16-4135-BBA5-E55016E6C1B3前回のインタビューでは、子育て中のママだからこその“繋がり”について、じょさんしonline代表の杉浦加菜子さんにお話を伺いました。今回の記事では現代の子育てについてさらに突っ込んでお話を聞いていきたいと思います。

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記憶の引き出しがない。初めて尽くしの経験から生まれる不安や悩み

――初めての妊娠出産に限りませんが、子育て中は何かと不安や悩みがつきものですよね。杉浦さんの元にはどんな不安やお悩みを持ったママさんがいらっしゃるのでしょうか?

代表・杉浦加菜子さん、以下杉浦さん:初めての子育てはどんなママでも不安でいっぱいだと思います。そして今の時代だからこその子育てのお悩みというものもあるような気がしています。たとえば私たちの母世代であれば家族の人数が多く、妊婦さんが身近にいたり赤ちゃんに触れたりする機会が少なからずあったと思うんです。地域社会の繋がりも密でしたから、一歩外に出れば近所の赤ちゃんが小さい子どもがいたりして、お世話をしたこともあったかもしれませんね。そうやって「妊婦生活」や「子育て」というものを知らず知らずのうちに覚えていった。つまり自分が母となったときに、そういった記憶の引き出しから情報を引き出すことができたように思います。

――そうかもしれませんね。自分でも気づかないうちに経験値が増える時代だったような気がします。

杉浦さん:今は核家族も増えていますから、人によっては人生の中で身近に妊婦さんがいなかったり、赤ちゃんや子どもと接する機会を得ないままに大人になったりしたママさんも多いです。自分の妊娠、出産、子育てが「はじめての経験」になるママも多いんですよ。

自分がどうしたいか、がわからない

――なるほど、そうなるとどうしても不安は大きくなりますよね。何かに迷ったとき参考にできる情報がないわけですから。

杉浦さん:そうなんです、だから多くのママさんが情報を集めることに一生懸命になられます。書籍や雑誌もそうですし、最近はSNSが発展していて、そこから情報を集めるママも多いですよね。「みんなはどうやっているんだろう?」と知れるのはよいことだと思いますし、楽しいですよね。一方でそこに書かれているお産や子育てが「正解」だと思ってしまい、それが悩みに繋がってしまうケースも多いと感じています。

――SNS上の情報を「正解」だと捉えてしまう傾向があると……

杉浦さん:不安なときほど情報の正誤の判断がむずかしくなるので、ネット上の情報を「正解」だと捉えてしまう傾向はおおいにあると思います。さらに「正解」と思いこんでいる情報に自分や我が子がマッチしないと途端に不安になるんですね。

――具体的にはどんな不安を抱えていらっしゃるのですか?

たとえばですが、ご出産を控えたママさんにバースプラン(出産に関しての希望を聞き、満足のいく介助をおこなうための計画)の提出をお願いしたところ、「助産師さんがすべて決めてください」というお返事をもらったことがありました。そこにもやはり「正解のバースプランがあるはず」というママの思いがあったように感じます。「自分がどうしたいか、何を望むか」以上に、「正解のお産をしたい、子育てをしたい」ということなんでしょうね。正解を求める背景には、自分だけ他の人と異なることをしたくないという気持ちもあるのかもしれません。お産に関して優等生になることを求めてしまうというか。またそれだけでなく「自分がどうしたいかがわからない」という点も実は大きいのかもしれませんね。

正解を求めるとやってくる子育てのイライラ

――あー、なんだかいろいろ胸に刺さります。どれくらい寝るのが普通なのかとか、授乳の回数が他のママより多い気がするとか、気になるものですよね……

杉浦さん:そうですよね。実際、数値や基準値、平均値を知りたがるママは多いです。私たち助産師から「それで合ってるよ、大丈夫だよ」という返事を聞くことで安心したいという気持ちもよくわかります。でも逆に言うと、数値や基準値で安心するということは、そこからちょっとでも外れてしまったときに不安を抱えやすいということだと思うんです。その不安からイライラが生まれる。そうなると周りの子と比べて一喜一憂してしまうことも増えますね。他の子や他のママと比べて自分が安心できるのであればそれでいいと思うのですが、比べることでイライラが増すようであれば、比べること自体にあまり意味がないのかもしれません。

子育てに正解はない。だとしたら正解はどうやって見つけるの?

――でも、さきほどのお話にもありましたが、経験値が浅いママはどうしても周りから入ってくる情報に頼らなければならない部分も大きいのではないでしょうか?

杉浦さん:周りから入ってくる情報が参考になることも多いと思います。でもあくまでも「参考」に過ぎないとも思うんです。つまり「参考」にはなっても、それがそのママにとっての「正解」ではないということですね。正解はママ自身の中にあると、私自身は思っています。ママが感じていることこそが正解なんです。

――なるほど。一方で自分で導き出した正解に自信が持てないママも多くないでしょうか? だから情報収集をして、正解かどうかを確かめようとするジレンマに陥るという……

杉浦さん:自分で出した答えが正解だと思えないのは、自分で答えを出す練習をしてきていないからかもしれませんね。正解は自分の中にしかないと私は思っているのですが、その正解を知りたいと思ったら、とことん自分の内面と向き合うことが必要になってくると思います。ただ「向き合う」といっても難しいことではないんです。たとえば外に出て「今日は風が気持ちいいなあ。空がきれいだなあ」と感じたり、おいしいものを食べて「この味が好きだなあ、おいしいなあ」と感じることも「自分と向き合う」ということなんですよ。

そうやって自分が「どう感じているか」という感覚に意識を向けることからスタートするといいと思います。そこで得た感覚は紛れもなく「自分だけの正解」ですよね。その感覚を積み重ねていくことで、妊娠や子育てにおいての選択に迷うことが出てきても、自分なりの答えが出せるようになっていくと思います。

――これまで自分の考えや感覚を後回しにしてきたママにとっては、少し練習が必要かもしれませんね。

杉浦さん:特に子育て中で忙しい時期は自分の内面に向き合うといっても、その時間を確保することも難しいですよね。そんなときは、たとえば助産師と会話をすることでも無理なく自分と向き合っていくことができると思います。私自身も正解を聞きたいとママたちに迫られることはありますが、参考程度の情報はお渡ししつつも、最終的にはママの中にある答えを引き出せるように心がけています。

感じる力を育むことで、自分らしい子育てのカタチが見えてくる

我が子が大切な存在だからこそ、間違いは起こしたくないし、遠回りはしたくない。そう考えてしまうのはある意味、母になった人たちの自然な思考回路なのかもしれません。しかし情報を集めれば集めるほど現実から遠ざかり、人と比べるほどに落ち込む回数が増える経験をしてきたのは筆者だけではないはずです。子育てに正解はないといっても、自分や我が子が幸せに生きていくための心地よい選択はしていくことができます。悩みの壁にぶつかるたびに、時間はかかっても自分なりの答えを導き出していけたらいいですよね。

そのときのキーになるのが杉浦さんのおっしゃる「感じる力」。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。五感でキャッチしたひとつひとつを味わっていくことが、「自分らしい子育てのカタチ」をつくっていくのかもしれません。また助産師さんとの対話から「感じる自分」を育んでいくこともできるようです。子育ての正解を求めて苦しくなってしまったときには、誰かの力を借りて自分の「感じる力」を取り戻していくことも必要なのかもしれませんね。

取材、文・一ノ瀬奈津

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