子どもの泣き声に怯えていたのは、私じゃなくて「世間の目を気にする私」だった
“赤ちゃんは泣くのが仕事”なんて言葉は良く知っています。だって言葉を話せないから、「泣く」という手段で気持ちを伝えてきます。でも。その「気持ち」を親としてうまくくみ取ってあげられないときだってある……。なのに、いつも私は世間の目を気にします。
別に舌打ちをした人が悪いわけじゃない。電車に乗っている人は、誰しもが万全な体調で乗っているわけではないし、たまたま不機嫌なだけだったかもしれない。そんな人に赤ちゃんの泣き声を浴びせるなんて申し訳ないよね……。息子をあやしながら、ホームに立ち尽くします。
そんな私を見かねた年配の女性が「泣いちゃったから降りたの?気にすることないわよ~」と優しく声をかけてくれますが、その言葉に気が晴れないのも事実です。ネットのニュースやSNSでも「子連れ」に対する風当たりが強いものを目にすれば、ますます「気を付けなくては」と身が引き締まります。
「子どもを育てているんだからしょうがない」と開き直ればなおったで「子持ち様」なんて揶揄されることも。世間の目を気にし過ぎても良くない。でもそれを「当たり前」と思い過ぎてもダメ。その塩梅が分からなくて、いつも「世間の目」「世間からうつる“ママとしての自分”」を気にしていた気がします。
そんな育児生活にいささか疲れ、息子を一時保育に預けることに。しかしまたお迎えの時間に「帰りたくない!」とギャン泣き……。あぁまた周りから“あのお母さん、躾がなってないよね”と思われているに違いない……。そんな気持ちを抱えながら呆然としていると、ベテランの保育士さんが近づいてきてくれました。
いつも周りの目ばかり気にして育児をしていた、苦しい思いが少しだけ解放された気がしました。
脚本・渡辺多絵 イラスト・むらみ