子育て情報には迷信やデマも。見極めるためには、基本を知ろう
3歳になるまで母親は子育てに専念すべきといういわゆる「3歳児神話」など、子どもを育てているとさまざまな通説と出合います。ほかにも「妊娠中に運動をするほど、安産になる」「ママが食べたものの味は、そのまま母乳にも出る」「叱らないと、子どものストレス耐性が弱くなる」などなど。どれも根拠のない話ばかりですが、とくにはじめての子育てで不安いっぱいのママには見極めが難しいこともあるのではないでしょうか。
その育児情報、専門家が関わっている?
子育て本のシリーズ『専門家ママ・パパの本(6冊)』の著者のひとりである小児科専門医の森戸やすみ先生が、情報を見きわめることの大切さについて語っています。
「先日も、インターネットの「キャベツ枕で熱が下がる」という記事が話題になりました。もちろんデタラメです。ふだん診察をしているとお父さんお母さんから、さまざまなことを聞かれるんですよ。ネットで根拠のない記事を読んで、不安になったという人もいます。ただでさえ子育ては楽しいけれど、体力的にも気力的にも大変なもの。迷信やデマに振り回されている場合じゃないですよね」(森戸先生・以下同じ)
「子育てでつまずくと、まずはインターネットで解決法を検索」というママも、多いですよね。もちろん有益な情報はあるでしょう。しかし、一方で科学的根拠のない情報も存在している可能性があります。専門家が監修しているのかなど、「根拠を確認することが大切」と先生は語ります。妊娠中であれば産婦人科医、子どもの病気などについては小児科医、離乳食などの”食”に関することなら管理栄養士など。そのジャンルの専門家がちゃんと関わっている情報かどうかは、検索して出てきた情報の真偽を見抜く大きなポイントとなります。
また、知りたい疑問についての回答を見つけても、たまたま見つかった、たったひとつだけで解決するのはちょっと危険かもしれません。アドバイスが発信者の「個人的な価値観」である可能性もあります。
「たとえば母乳育児にしても、母乳が十分に出る人がいれば出ない人もいる。家族のサポートを受けやすい人もいれば、受けにくい人もいます。『母乳で育てないといけない』『粉ミルクのほうがよい』というのは、個人的な価値観です。最終的にはそれぞれのお母さん・お父さんが選ぶことですよね」
一般的に「◯◯までに◯◯しなければ、ダメ!」「◯◯さえ食べていれば大丈夫」というような不安をあおったり極端な内容の情報は、疑ってかかったほうがよさそう。
さらには「できるだけおおらかに育てたいな」という子育て方針や、ママ自身の価値観として「ここにだけはこだわりたい!」という部分もそれぞれにありますよね。ひとつの情報を目にしたとしても「これは共感できるな」というママがいれば、「共感できないな」と感じるママもいる。情報をうのみにするのではなく自分自身の頭でまず考え、自分の感性にしたがうことが大事ではないでしょうか?
「ただし、まずは基本を知ることです」
と、森戸先生。
「基本を知らなければ、正しい情報にアクセスすることさえできません。たとえば残留農薬について。農林水産省のサイトで調べることができるのですが、こうした基本がわかれば1週間のトータルで食事のバランスを考えられます。”考える”には正確な情報という、材料が必要なのです」
多すぎる情報に振り回される前に、根拠を確認して
「では、その”基本”はどうやって調べたらいいの?」と、なりますよね。じつは母子手帳に、かなりの情報が載っています。乳幼児の栄養についてや予防接種についてなど、基本を知りたければまず母子手帳をめくってみるのもよいかもしれませんね。そのうえでよりくわしい情報を求めるのであれば、くり返しになりますがやはり専門家が監修するサイトであったり本を読んでみるとよいでしょう。
森戸先生をはじめとする専門家が科学的根拠(エビデンス)のあることだけを書いた『専門家ママ・パパの本(6冊)』が好評なのには、やはり「基本を知りたい」というママパパのニーズがあるのでしょうね。kindle版も発売されたので、「寝かしつけや授乳のときも、読みやすいのでは?」と先生。
「中には「産後すぐは目を休ませないと」とか「スマホを見ながら授乳してはダメ」というスマホ育児接待反対派の人もいますが、とくに根拠はありません。産後でなくても目が疲れることはありますし、疲れたら休めばいいんです。当たり前のことですよね。とくに新生児のころは授乳もひんぱんですし、そのあいだずっと何もしないのは苦痛だと思います。根拠のない説は気にせず、大切な要点だけ抑えて楽しく子育てしてください」
書籍でもインターネットのサイトでも、根拠がしっかりした基本をまず抑えておけば、通説に振り回されることもぐんと少なくなりそうですね。
森戸やすみ先生
1971年東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU勤務を経て、現在は東京都世田谷区にある『さくらが丘小児科クリニック勤務。
『新装版 産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』
『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』
『新装版 産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳BOOK』
『新装版 児童精神科医ママの子どもの心を育てるコツBOOK』
『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』
『新装版 管理栄養士パパの親子の食育BOOK』
文・鈴木麻子 編集・しのむ