断乳が申し訳ない?ママは罪悪感を持たないで!もし失敗したら次のタイミングは?
母乳育児の一大イベントといえば卒乳・断乳です。おっぱいは何歳でやめればいいのか、卒乳・断乳することで子どもが辛い思いをしないのか、考えれば考えるほど悩んでしまうのではないでしょうか?
多くのママが悩む卒乳・断乳について、ママたちの断乳ケアも行っている助産院ばぶばぶのHISAKOさんにお伺いしました。
自分の都合での断乳に罪悪感……赤ちゃんに申し訳ない?
――断乳となると、ママたちは「子どもがまだ欲しがっているのに、自分の都合でやめてしまうなんて、申し訳ない」などと感じることもあります。ママはどんな心持ちでいればいいのでしょうか?
長く授乳を続ければ続けるほど、ママは思い入れが強くなり、授乳をやめることに対して心を病んでしまうような状態にもなりますね。断乳後イヤイヤ期で子どもが暴れたり病気になったりしたとき、「私があの時勝手な理由で断乳したのが原因ではないか」などと子育てがネガティブになってしまうママは、私も助産院で見ていてすごく多いと感じます。
しかし卒乳は目指すものではなくて、結果論です。無理なくやっていたらスムーズに卒乳するパターンもありますが、いろんな理由で断乳を余儀無くされる場合もあります。断乳は立派な1つのママの選択肢なので自信を持ってほしい。私はそんな気持ちで、断乳開始の時にポロポロ泣いてしまうほどのママの心を、1ヶ月かけて「これでよかった」と思える方向へ進めています
――助産院で行う断乳ケアというのはどのようなものなのですか?
通常のおっぱいケアは乳房のうっ血を和らげるマッサージなどをしますが、断乳の時に同じケアをすると母乳はどんどん出る状態になります。断乳ケアは、たまりすぎた母乳を上手に抜きながら、おっぱいを刺激しないようにして減らしていきます。
――助産院に通いながら断乳を進める方がいいケースはありますか?
卒乳に近い形での断乳なら、自己流でもできないことはないと思います。ただ赤ちゃんがまだ必要としている状態で前準備なく断乳せざるを得ない場合は、乳腺炎のリスクが上がってしまうので、助産院で相談するほうがいいでしょうね。
断乳すると決めたらネガティブにならず強い意志を持って
――一人で断乳をする人は心が折れてしまいがちだと思うのですが、モチベーションを保つためにはどうすればいいのでしょうか?
断乳前にママが「何が何でもやり通すぞ」という強い意志を持ち、ネガティブな気持ちではなく前を向いた断乳をしてほしいです。
ママ自身の考え方の軸がぶれた段階で断乳すると、迷いや申し訳なさが子どもに伝わりますし、子どもも「自分はかわいそうなのかな」と不安定になります。おっぱいをやめた後は、子どもは確実に成長するので、言ってみれば断乳は子どもの成長の手助けにもなっているのです。子どもに謝るのではなく、「一緒に頑張ろうね」というスタンスを貫いていただければと思います。
おっぱいをやめるべき年齢はあるの?
――何歳までにおっぱいをやめるべきでしょうか?
助産院ばぶばぶには授乳中の3,4,5歳、小学生の子もたくさん来ています。先日も小学2年生の子が嬉しそうに飲んでました。「いつまで飲むの?」と聞いたら「中学まで」だそうです。その子に「おっぱいってどんな味?」と聞いたら「幸せの味」と言ったんですよ。子どもたちにとっておっぱいは、栄養だけではなく幸せを運ぶ何かがあるんですよね。
断乳を積極的に進めるわけではないのですが、たとえば高齢出産で2人目を急いでる、仕事復帰して差し障りが出る、ママの体調不良、上の子が精神的に不安定になったなど、やめた方がいいパタ―ンもあります。
しかし特にそういう理由なく、ある年齢になったから、もしくは虫歯になるから、というだけの事情は、断乳の理由にはならないと考えています。子どもがおっぱいなしで心のコントロ―ルができるようになるタイミングには個人差があるものです。
――断乳にもさまざまな理由があり、育児書通りにはいかないのですね。
私の11人の子どもを見ていても、育児書の「〇歳なら××できる」は、全然当てはまりません。育児書は目安にすぎず、絶対視するのは間違いです。ばぶばぶでは「その子に合わせる」という考え方で、まずはママの無理のない範囲で頑張ってみる。でもしんどいならその方法で頑張り続ける必要はなく、しんどくならない方法を試してみて、場合によっては断乳もあり得る、といった考え方で進めています。
もし断乳に失敗したら……次のタイミングの図り方は?
――これは断乳のタイミングではないな、と感じられるのはどんなケースがありますか?
断乳の際は、私は1ヶ月くらい子どもに言い聞かせる期間を持ってもらっています。しかし子どもが納得しないまま始めると、暴れたり熱を出してしまったりと断念せざるを得ない状況が起こることがあります。断乳を開始したら夜中に泣きわめき、笑顔が消えて無表情になってしまい、ママが心配になって飲ませたら笑ってくれた、そしてママの気持ちが折れたと聞かせてくれたママもいましたね。
――突然断乳するのは失敗しやすいのですね。
断乳といえどタイミングは大事ですね。親が主導の断乳だとしても、子どもが乗り越えられるかどうかはやはりすごく個人差があるんですよ。同じようにすごく飲んでいる子どもでも、おっぱいや子どもの状態を見て断乳できそうな子と、まだ無理という子がいます。この見極めはママには難しいこともあるので、断乳をする前に助産院にきていただければと思います。
――断乳に失敗したら、どうすればいいでしょうか?
「断乳前は強い意志を持って」とお伝えしましたが、もし失敗しても自分を責めないようにしてほしいです。失敗して“母親失格”と落ち込む人もいますが、それも結果論。きっと後々、断乳に失敗した他のママに「わかるわかる! 私もそうだったよ!」と言ってあげられるくらいの人生経験を得たはずです。
次にいつ断乳にチャレンジをするかは、お子さんのタイミングを見てからです。外出時におっぱいを欲しがらない、夜間のおっぱいなしでママがぐっすり寝られた日、というのが、卒乳のサインです。かつ、ママが止めようと思っていればチャレンジする時かもしれません。
卒乳・断乳後におっぱいに執着する子には
――おっぱいを飲まなくなっても、おっぱいを触り続ける子もいますね。
おっぱいは、ずっと好きですよ(笑)。どこかのタイミングで子どもはママのおっぱいから離れていくようです。でも人は皆、丸くて柔らかくて暖かいものには癒されるのではないでしょうか。私もママのおっぱいのケアをしながら癒されますよ。
――4,5歳でも寝るときにおっぱいを触られると、イライラしてしまう人もいます。
子どもはおっぱいを触って安心し、明日の活力を充電しているんですよね。ママはいわば、心のコントロ―ルができない子どもの充電スタンドのようなものです。大人だってアイスクリームなど自分のご褒美にしているものをやめるのは難しいですし、大人でも厳しいことを小さな子どもに強要するのは考えものです。
しかし大人でも他に夢中になるものができればご褒美スイーツを卒業できるように、子どもも世界が広がれば必ず、ママのおっぱいから離れる日がきますよ。
HISAKOさん、ありがとうございました!
取材・編集部 文・しらたまよ 編集・しのむ イラスト・加藤みちか