ワンオペ育児のママが高熱で倒れた!知らない土地で孤独だった親子を助けてくれたのは?
夫の仕事の都合で、互いの実家より遠く離れた場所に住むことになった私たち夫婦。「身近に頼れる人」がいない状況での子育てが、これほどまでに大変だとは思いもしませんでした。
夫は出張の多い仕事をしています。もちろん時期にもよりますが、月のほとんどいないことなんてざらで、繁忙期になると1カ月まるごといないこともありました。
子どもが生まれてしばらくの間は里帰りをしていましたが、首がすわる頃に自宅に戻った私と娘。賑やかだった実家から、ガランと静まり返った自宅に足を踏み入れた途端、幼い娘と私の世界で2人ぼっちな、そんな恐怖と不安に押し寄せられたことを覚えています。
「2人だけでも楽しく!」と思い、娘を連れていろいろなところに出かけ、独身時代の友達ともたくさん遊びに行きました。子連れではあるものの、それなりに自由で楽しい毎日だったと思います。
けれど、なんでだろう……娘と2人でいるはずなのに、心のどこかには「孤独」の文字がちらつきました。友達といるのに、子どももいるのに、何で私は「独りぼっち」と感じてしまうのだろう……。
そんなある日、娘と私が同時にインフルエンザにかかります。夫は海外出張でもちろんすぐ駆け付けられる状況ではありません。
ものすごい高熱と嘔吐でぐったりする娘。私も高熱で怠さに襲われ身動きがとれなくなってしまいました。
そのとき娘はまだ1歳ちょうどくらいでした。誰かの助けを呼ぼうとも、そんな人は誰もいません。
小さな部屋に閉じ込められた私と娘、もうどうして良いのか分かりませんでした。救急車を呼ぼうかとも思いましたが、意識はあるし無理をすれば動けます。
私はなけなしのチカラを振り絞って娘を抱っこ紐で抱え、雨は降っていませんでしたが傘を杖代わりに持って病院に向かいました。
病院に着くと、季節柄やはり混んでいます。前には十人以上の人が並んでおり、席も空いていなかったため立ちながら待ちます。
苦しくて泣く娘。朦朧とする私。泣く娘をあやす気力すらもなくなった私は「もうダメかも……」頭にそんな言葉がよぎります。
そんな私たち親子の空気をただならぬ状況と察してくれた方が「私、次に呼ばれるんですけど、良かったら順番変わりますよ?」と言ってくださいました。
人の「優しさ」に触れた瞬間、きっと張りつめていた糸が切れてしまったのでしょう。「ありがとうございます……」と言って……
私はその場に倒れてしまったそうです。
目を覚ますと、病院のベッドの上でした。腕に点滴がうたれ、身体もさっきよりはだいぶ楽になっていました。
「娘は……?」
ものすごい人見知りの娘は、私がいなくなると泣き叫びます。慌てて起き上がると、「目、覚めた〜?」と娘を抱いた看護師さんが入ってきました。
「この子、下ろそうとすると泣くのよ〜(笑)。いつも大変なんじゃない? お疲れ様ね」
優しい笑顔を見せてくれる看護師さんを見た瞬間、私の目から涙があふれました。
そう、私はずっとずっとひとりで大変だった。
誰かに子育てのことで頼りたかった。娘は可愛くて大切で幸せなはずなのに、「ふたりきりの生活」はどこかでずっと寂しくて孤独だった。でもそんな弱音を吐いちゃいけない気がしていた。「しんどい」なんて言ってはいけない気がしていた。だって私は「ママ」だから……。
娘を抱いた看護師さんは、こう言ってくれました。
「ママだって人間よ」
「連絡してね」と言ってくれたその一言で、スーッと肩の力が抜けたことを覚えています。
実際何かがあったときに本当に連絡できるかどうかは分かりませんが、どこか自分の「大変」を少し分け合える場所ができた、そんな安堵感に満たされた気がしました。
それからというもの、夫の仕事は相変わらずで私と娘の「ワンオペ育児」は変わりません。
あれだけ辛かったワンオペ育児も、娘が小学校にあがった今では懐かしく、ずっと一緒にいられた時間が尊いものにすら感じるようになりました。
しかしあの一件から、今までは「自分の友達」としか遊んでこなかった私は、この土地で生活している今をしっかりと受け入れて、地域に知り合いを増やすように心がけるようになりました。
子どもはひとりでは育てることはできません。何かあったときに互いに助けることができるようなネットワーク作りも、子どもを育てるうえで大切なのだと感じました。
知らない土地でひとりで育児を頑張っているママがいましたら、友達でも病院でもベビーシッターさんでも、どうか「何かあったときに頼れる場所」をしっかり確保してください。
脚本・渡辺多絵 イラスト・ゆずぽん