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LINEを使った子育て支援「渋谷区モデル」がママたちに人気なワケ【東京・渋谷区】

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予防接種のスケジュール通知、近隣にある子育てひろばや保育園のイベント情報など、コミュニケーションアプリLINE(ライン)を使用し子育て世代に向けて様々な情報を提供する東京都渋谷区。2017年8月からはLINE内でAI(人工知能)を使用した自動応答サービスを開始し、子育てに関する個々の問い合わせをリアルタイムで回答できるサービスを実現しました。さらに区内のすべての公立小中学校でタブレット端末の貸し出しをスタートするなど、オンラインを活用した施策に積極的に取り組んでいます。「渋谷が変われば、東京も変わる。東京が変われば日本が変わるキッカケになる」と語る長谷部健区長にそのワケを伺いました。

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居住地と子どもの月齢に合わせて必要な情報が届く!「渋谷区LINE公式アカウント」

――「子ども・子育て支援施策」の一つとして、渋谷区のLINE(ライン)公式アカウントを開設したそうですね。これはどのようなサービスでしょうか?

長谷部健区長(以下長谷部区長):2017年2月15日から妊産婦や子育て世代に向けた様々な情報をLINE公式アカウントを使って発信しています。住んでいる地区と子どもの生年月日を入力すると様々な通知が来るようになります。たとえば妊娠中であれば、出産予定日に合わせて必要な手続きやパパママ入門学級の日程をお知らせしたり、出産後であれば子どもの月齢にあった健診日程や予防接種のお知らせ、子育てひろばや保育サービスに関する情報を配信しています。

――予防接種は種類も多く、スケジュール管理も大変なので通知が来るとありがたいですね。

長谷部区長:そうですね。私自身も子どもが3人いますが、2人目からは「予防接種はいつだっけ?」みたいなことが出てきました。そんな時にLINEで予防接種の接種票の発送時期が近づくとお知らせがくれば、ママたちは助かるのではないかと思いました。

――予防接種のほかにはどのような情報が届くのでしょうか?

長谷部区長:住んでいる地域を入れることで、近所で行われるお祭りの情報や子育て支援センターのイベント情報などが配信されます。

子育てに関する質問にAI(人工知能)が答える!?LINEで24時間自動応答システムを実現

――LINEを使用しているママは多いと思いますので、LINEで区から子育て情報を受け取ることができるのはとても助かります。しかし、なぜLINEを使うことになったのでしょうか?

長谷部区長:LINE株式会社はもともと渋谷区に本社がありました。そのご縁があったのと、 LINEを使用しているママが多いことから、LINEで渋谷区の子育て情報を発信していこうと考えたのです。渋谷区は自治体初のLINE公式アカウントを使用して子育て情報を配信するモデルとなっていますが、ここで渋谷区モデルが完成すれば他の自治体にも浸透していくと思います。

――LINEの中でAI(人工知能)を使った自動応答サービスの実現もされたそうですね。これはどのようなものですか?

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出典:渋谷区LINEアカウントID/@shibuyacityより

長谷部区長:24時間自動応答システムでは、LINEで利用者が子育てに関する質問を入力すると、自動で回答が返ってくるようになっています。今まで区に電話したりインターネットで検索しないと分からなかった問題でも、AIを活用することですぐに解決できることもあります。

――LINEのサービス利用者からの感想は渋谷区に届いていますか?

長谷部区長:「予防接種の通知が来るのは助かる」「必要な子育て情報が直接届くので便利」という反応をいただいています。いまLINEのユーザー登録数は4600人います。渋谷区の未就学児のお子さんを持っている対象が1万人なので、すでに半数近くが登録しています(2017年9月現在) 。

出産したら10万円、4つの任意予防接種も助成

――渋谷区は出産すると出産育児一時金のほかに、1人10万円支給されると聞きました。 

長谷部区長:そうです。1人出産するたびに10万円支給する「ハッピーマザー出産助成金」を行っています。申請期間は出産してから1年間。渋谷区役所国民健康保険課給付係へ郵送、または国民健康保険課給付係・出張所・区民サービスセンター窓口で申請が行えます。

――4つの任意予防接種も助成されるそうですが、対象となるものを詳しく教えてください。

長谷部区長:おたふくかぜ、MR(麻しん・風しん)、インフルエンザについては全額助成。ロタウイルスワクチンについては一部助成しています。

病児、病後児保育で1時間あたり1000円を助成する制度

――病児、病後児保育の助成制度があるそうですが、どのようなものですか?

長谷部区長:子どもが病気やケガで保育施設に登園できない場合、または仕事があるなどの理由で、自宅でベビーシッターなどの託児サービスを子どもが利用した場合、その料金の一部を区が助成する制度です。1世帯当たり1児童の年間上限は10万円として、1時間につき1000円を助成します(※1日の利用助成限度は10時間まで)。
ただし、ベビーシッターなどサービスを利用した前後の原則7日以内に、医療機関を受診していることが条件となります。

――子どもが急な病気になったときなどの、休日夜間救急はおこなっていますか?

長谷部区長:土曜日夜間は区民健康センター桜丘(19時~22時)、日・祝日と年末年始は区民健康センター桜丘(9時~22時)と区内2か所(9時~17時)の医療機関が当番制で対応しています。

代々木公園内に定員122名の認定こども園が誕生。認可保育施設の数を増やしつつ質の高い保育を目指す

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――渋谷区は現在待機児童対策についてどんな方針をとっていますか?

長谷部区長:まずは認可保育施設を増やすことを1番に考えていますが、ただ数を増やせばいいというわけではありません。たとえば、10月1日にオープンした代々木公園にある認定こども園では、レッジョ・エミリアというイタリアのエミリア・ロマーニャ州の幼児教育メソッドを取り入れています。絵や色について学ぶことで、表現力、コミュニケーション能力、探求心、考える力を育むことを目的とした教育法です。レッジョ・エミリアのほかにもシュタイナー教育を実施している保育園もありますが、どちらも古くからある教育法で、特別新しい教育法を取り入れているわけではありません。渋谷区としては数と質、どちらも大切にしていきたいと考えています。

都内初!区内すべての公立小中学校でタブレット端末の貸し出しをスタート

――渋谷区では、2017年9月から公立の小中学生に対してタブレット端末の貸し出しを行っているようですね。

長谷部区長:区内の公立の小中学生には全員タブレットを貸与し、家に持ち帰ることも可能にしました。タブレット教育は渋谷区が特別進んでいるというわけではなく、私立の学校、海外では当たり前にやっていることです。それを行政として区内の公立小中学校に取り入れたというだけの話です。

――なぜ行政は今まで取り入れていなかったのでしょうか?

長谷部区長:タブレットを使った学習に関しては様々な意見が出ました。なかには「子どもの視力が落ちる」「コミュニケーション能力が落ちるんじゃないか」という意見もありました。それら意見に1つ1つ丁寧に回答し納得してもらうことで、導入することができました。渋谷が変われば、東京も変わる。東京が変われば日本が変わるキッカケになるという思いでやっています。

オリンピック選手のパパ・ママが指導コーチ!「渋谷区スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと」

――渋谷には「渋谷区スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと」ができたそうですね。どのような取り組みですか?

長谷部区長:子ども向けのスポーツプログラムや保護者向けのセミナーなどを開催し、スポーツをより楽しんでもらおうという取り組みです。スポーツを通して、自己肯定感の高い次世代の子どもたちを育てることを目的としています。元プロテニスプレーヤー杉山愛さんのお母さんである杉山芙沙子さんと渋谷区が中心となって始めました。コーチを務めるプログラムや、体操の金メダリストである内村航平選手のお母さん、内村周子さんが指導する体操教室なども実施しています。すべて無料で参加できますよ。

――参加するにはどのように応募したらよいですか?

長谷部区長:応募は「渋谷区スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと」の公式ホームページで実施日の約1カ月前から予約できます。渋谷区に在住、在勤、在学の方が優先となりますが、ほかの地域の方でも参加できます。

世代を超えた交流を増やす。「渋谷区こどもテーブル」とは

――「渋谷区こどもテーブル」というのがあるとお聞きしましたが、どのようなものですか?

長谷部区長:2016年の11月から渋谷区の社会福祉協議会と連携して、渋谷区こどもテーブルを始めました。全国的には経済的な理由から家で満足な食事を取れない子どもに温かい食事を提供する「こども食堂」が話題となっていました。渋谷区版「こども食堂」を考えたとき、ただ食事をするだけでなく、テーブルを囲んで地域の方が将棋や編み物などを教えてくれたり、お兄さんお姉さんが勉強を教えてくれたり、そんなことを期待しスタートさせました。今は30か所程になっていますが、将来的には100か所くらいになるといいなと思っています。

“やりたい人”が“やりたいこと”をできる区でありたい

――最後に、ママたちへメッセージをお願いします。

長谷部区長:そんなえらそうなことは言えないですけれど……ママたちは日々育児や家事や仕事を頑張っているとおもいます。その中で「こんなことがあったらいいな」ということがあれば、できるできないは別にしてもぜひご意見はお寄せください。なるべく“やりたい人”が“やりたいことをできる区”でありたいと思っています。
渋谷区では「YOU MAKE SHIBUYA」を掲げています。これは“あなたが渋谷区をつくる”・ “夢みる渋谷”という2つの意味が込められているんです。
渋谷区はこれからも変わっていく予定です。僕へのメッセージは、ホームページや「区長への手紙」などからお寄せ下さい。これからもよろしくお願いします。

取材、文・長瀬由利子 編集・北川麻耶

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