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看護師によるお迎えサービス付き病児保育を23区ではじめてスタート【板橋区】

※2017年9月時点の情報です。

板橋

都内の自治体ではじめて、働くママたちを支援する「お迎えサービス付き病児保育」を実施した板橋区。子育て支援だけでなく、高齢者向けの福祉サービスも充実しています。「赤ちゃんからお年寄りまでみんなが住みやすい街です」と語る板橋区の坂本健区長にそのワケを伺いました。

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保護者に変わって病気の子どもを病院に連れて行ってくれる「お迎えサービス付き病児保育」

――板橋区は都内の自治体ではじめてとなる「お迎えサービス付き病児保育」を開始したそうですね。

坂本区長:はい、 お迎えサービス付き病児保育は2009年6月から始めました。保育園から子どもの具合が悪くなったと連絡がきたとき、お母さんは心配で保育園に駆け付けたいと思いますよね。でも実際はすぐに仕事を切り上げて行くのが難しいこともあると思います。そんなお母さんに代わって看護師が代わりに保育園に子どもを迎えに行き、保護者がお迎えにくるまでの間、病児保育で子どもの面倒を見てくれるサービスです。

――お迎えサービス付き病児保育を実施している施設はどのくらいありますか? また増やす予定はありますか?

坂本区長:現在板橋区には病児・病後児保育施設として板橋区医師会病院、帝京大学医学部附属病院、いわた医院の合計3ヶ所あり、さらに病後児保育施設としてキッズタウンむかいはら保育園があります。このうち板橋区医師会病院、帝京大学医学部附属病院がお迎えサービス付き病児保育を行っています。
今後さらに増やしたい気持ちはあるのですが現状は難しい面があります。なぜなら病児保育は病気の流行シーズンによって利用者の子どもの数が変わってくるからです。1年間ずっと需要があり続けるわけではないのです。

参考:お迎えサービス付き病児保育事業

妊娠期から母子保健相談員に相談できたことで出産や育児への不安が和らいだというママの声

――板橋区は、産前産後の支援が充実しているそうですね。

坂本区長:板橋区では2016年より「ネウボラ(※1)」と呼ばれる育児支援サービスを行ってきました。これは母子保健相談員などが子育て家庭を妊娠期から就学前まで切れ目なくサポートしていく支援です。2015年までは健康福祉センターに妊娠届を提出した方に対し、面接を行っておりました。しかし2016年以降は健康福祉センターだけでなく、区民事務所や戸籍住民課など、どの施設に妊娠届を提出しても面談を行うようにしています。その結果2015年は25%だった面接率が2016年は75%に上がりました。
妊婦面接を行い、つわりの対処方法や保育園の入園申し込み方法など様々な相談内容がありました。不安を抱えている妊婦さんに対し、母子保健相談員が話を聞き、不安を和らげていけるようなアドバイスをしていきます。妊婦面接を受けた方から「面接をしたことで気持ちが和らぎました」という声が区に届いたとき、妊婦面接を積極的に取り組んで良かったと思いました。

※1ネウボラとは
フィンランド語で「相談・アドバイスの場所」を意味する。フィンランドでは、妊娠期から就学前までかかりつけの専門職(助産師または保健師)により、継続的に母子とその家族の相談・支援が行われている。

妊婦面接を行うと木製食器セット、肌着セット、マザーズバッグのいずれかがもらえる

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――妊婦面接を行うと「板橋区オリジナル育児パッケージ」がもらえるそうですね。中身はどのようなものが入っていますか?

坂本区長:木製のベビー食器セットか肌着セット、マザーズバッグセットのいずれか1セットをお渡ししています(2016年2月1日以降に妊娠届を提出した方が対象)。
食器とマザーズバッグの育児グッズの制作は、板橋区内の企業が携わっています。区外ではなく区内の業者が携わることで、妊婦さんに対して地域の人たちも育児を応援しているというメッセージも込めています。

また育児グッズと一緒に、目録もお渡ししています。目録のデザインは絵本作家の駒形克己氏が手がけています。目録はお母さんたちへの手紙と考え、白とオレンジを基調とした明るくやわらかいカラーを使用し、よりお母さんの心に響くようなものを作っています。ひとつひとつ思いを込めて丁寧に育児支援を行っていこうというのが板橋区の子育てです。

板橋区発祥の「赤ちゃんの駅」フラッグとは?

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――板橋区の街中で「赤ちゃんの駅」というフラッグやステッカーを見かけましたが、これはどのようなものですか?

坂本区長:「赤ちゃんの駅」とは赤ちゃん連れで外出したとき、おむつ替えや授乳施設として自由に使うことができるよ、という目印です。フラッグやステッカーにはオレンジ色の背景に赤ちゃんのイラストが描かれています。赤ちゃんの駅は、板橋区内に171施設あり(平成29年7月1日現在)、区立保育園や民間の商業施設などをママたちが自由に入れるよう開放しています。
赤ちゃんの駅のフラッグやステッカーを掲げてある施設の中には、保育士などの専門的な資格をもった職員を配置している施設もあり、育児の疲れや悩みを話したりする交流の場としても活用されています。

――そんな「赤ちゃんの駅」は板橋区発祥だと聞いたことがありますが、本当ですか?

坂本区長:そうです。板橋区の保育士が考案しました。現在では板橋区の赤ちゃんの駅のモデルが全国各地の自治体に広がったので始めてよかったなと思っています。いいことは他の自治体にもどんどん取り入れていってほしいですね。

「親の一日保育士体験」で子育ての楽しさや、わが子の意外な一面に気付くキッカケを与える

――板橋区では「親の一日保育士体験」を実施しているそうですね。これはどのような取り組みなのでしょうか?

坂本区長:板橋区立の保育園では、区立保育園に入園している児童の保護者を対象とし、「親の一日保育士体験」を行っています。現在では38の区立保育園で、保育園児と一緒に遊んだり給食を食べたりなどしています。保育士体験を通して子育ての楽しさや、わが子の意外な一面を再発見していただくことが目的です。また実際に保育士の様子を体験していただくことで保育士と保護者との信頼関係を高め、保護者のみなさまが安心してお子さんを保育園に預けることができたらとも思っています。

――保育園と言えば、待機児童問題が課題ですが、板橋区における対策について教えてください。

坂本区長:板橋区では待機児童対策を重要な課題だと捉え、認可保育所の新設を積極的に進めています。昨年は過去最大規模となる1069名の定員を増やしましたが、依然として231名の待機児童が生じています。待機児童が特に1歳児に多いことをうけて、今後は1歳児向けの対策も併せて検討していく予定です。

乳幼児を中心とした児童館に全面リニューアル

――板橋区の児童館は2016年度から「子育て応援児童館 CAP’S」とリニューアルされたそうですが、これはどのようなものですか?

坂本区長:これまでの児童館は0歳の赤ちゃんから小中学生までが同じ空間で遊んでいました。しかしヨチヨチの赤ちゃんと身体の大きい小学生を一緒に遊ばせるのは危ない。そのため2016年度から板橋区内のすべての小学校に「あいキッズ」(学校内学童保育)を作り、小学生用の居場所を設けました。児童館は乳幼児親子向けの施設にしました。たとえば2017年4月にリニューアルオープンした「しらさぎ児童館」ではベビーカー置き場を広くとったり、歩けない子どものために床暖房を設置しました。このように板橋区の26館すべての児童館で乳幼児の設備を充実させ、「子育て応援児童館 CAP’S」としてリニューアルしました。

――児童館の“乳幼児プログラム”とは、どんなことを行うのでしょうか?

坂本区長:「子育て応援児童館 CAP’S」では区内26の児童館で共通プログラムを実施しています。プログラムは週5日間、1日4コマ実施しています。貼り絵やお絵描きあそび、風船あそびなどの年齢に応じた集団あそびを行う「年齢別プログラム」やママたちが内容を選べる「目的別プログラム」。プログラムには参加せず親子で自由に遊ぶなど、それぞれの親子の目的にあった過ごし方もできます。児童館の“乳幼児プログラム”は全国的にも非常に珍しい取り組みです。
また医師会の協力により、板橋区7ヶ所の児童館で小児科・眼科・皮膚科・歯科の専門医による子育てアドバイス講座を聞くことができます。

参考:子育て応援児童館 CAP’S

すべての世代が「安心してずっと暮らせる街」へ

――子育て中のママへ向けての応援メッセージをお願いします。

坂本区長:板橋区は子育て世代のみなさんにできるだけ寄り添えるよう今後も様々な取り組みを進めていく予定です。
また板橋区には、区内の板橋区立教育科学館でプラネタリウムを見ることができたり、板橋区立熱帯環境植物館にはミニ水族館があったり、世界でも最大級の規模を誇る「ボローニャ国際絵本原画展」を板橋区立美術館で開催するなど、親子で楽しく学べる施設にも力を入れています。
さらに子育て世代だけでなく、生活支援ヘルパー派遣や高齢者日常生活用具給付などの高齢者向けの福祉サービスも充実しています。小さな子どもからお年寄りまでのすべての世代が安心して暮らし続けられる街であることも板橋区の魅力です。これからも保育園、幼稚園、小中学校を含めた教育の充実、さらに長く板橋区に定住してもらえるような取り組みをしていきたいと考えています。

 

取材、文・間野由利子 編集・北川麻耶

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