10年続けて「学力優秀」!秋田県の学力を支えている「習慣」とは?
小学6年生と中学3年生を対象に行われている「全国学力テスト」は2018年で10年目。筆者が移り住んだ秋田県は、10年連続トップクラスの成績でした。何度も上位にランクインする秋田の家庭には、筆者が納得させられた習慣があります。
我が家の子どもたちが小学校に入学するとき、学校から「家庭学習は、学年×10分を目安に。生活習慣を整えて」と話がありました。今年で長男は4年生、次男は1年生。子どもを秋田の小学校に通わせるうちに家庭で習慣になったことを、学習面と生活面で考えてみました。
褒めて、話を聞いて、家庭学習を習慣化
入学したばかりの1年生は、教科書の音読から家庭学習が始まりました。ところが1年生の音読は、30秒ぐらいで終わってしまうのです。当初は「学年×10分! 10分間は粘らなきゃ」と焦り、質問攻めにしてしまいました。しばらくして気がついたのですが、「大きな声で読めたね」とか「姿勢がカッコイイね」と褒めてあげると、「先生がね、こう持つとカッコ良くなるって教えてくれたんだよ」と子どもが乗り出してくるのです。「じゃあ、もう一回読むね」と繰り返してくれ、2,3分ぐらい家庭学習ができるようになりました。
音読が定着すると「家庭学習ノート」が始まります。「家庭学習ノート」は、宿題とは別に、自分のやりたいことを勉強するノートです。1年生のうちは、その日の復習を中心に1日1ページ。コトバ集めや、しりとり、教科書の文章を写し書きにしたり、漢字ドリルや計算ドリルを繰り返し練習したりして、親が丸つけをします。間違った所を一緒に直し、ハナマルやコメントを付けて先生に提出。先生からも、ハナマルとシール、そして褒め言葉があり、子ども達は返ってきたノートをワクワクしながら開いています。
参観日の懇談会や学年報で、先生からは「毎日お願いします」「丸つけとコメントが大事です」「間違いは直してから提出です」と繰り返し注文があります。「しんどいわ〜。そんなヒマないし」と心の中では思うのですが、どこの家でもやっているので、辛抱して続けました。半年ぐらい経った頃でしょうか、ふっと子どもが手から離れていく感じがしました。何度も声を掛けなくても、無理矢理ホメドコロを見つけなくても、自分からノートに向かい始めたのです。
4年生の長男の場合は、家庭学習が定着しているので、親の出番は丸つけと一言褒めることのみ。内容は復習のほかに、自分の興味がある勉強を掘り下げる場合もあります。例えばこんな感じ。
- 俳句・短歌を自分で作る
- 文章問題を自分で作って解く
- 月や星の観察
- 読書感想文
楽しんで家庭学習ノートに向かっている長男ですが、スポ少(スポーツ少年団)を始めた2年生の頃、平日の練習後は疲れてしまい、家庭学習ができない時期がありました。長男はクロスカントリースキー部に入ったので、特に冬場はハードな練習になります。「できないからとイライラするよりは、できるときにまとめてやる方がいいよね」と話し合い、「練習日は1ページでOK。休みの日に、4〜5ページまとめて」といったように、多い日、少ない日を作りました。
家庭学習ノートを毎日やらせる苦労話は、懇談会でも繰り返し話題になります。学年が上がるごとに、子どもの興味や関心は広がり、学習内容は難しくなっていきます。低学年のうちに「家庭学習ノートを毎日やる。ちょっとでもやる」習慣を作ること。学校と家庭が一緒になって取り組んでいると感じました。
一行日記の効果にびっくり
1年生の次男のクラスでは、50音を習い終えた6月から、一行日記が始まりました。一行日記の取り組みは、
①子どもが、帰りの会で今日あったことを連絡ノートに書く。
②先生が文字の間違いをチェック。
③帰宅して親に見せる。
④親はサインをして、コメントを書くか、子どもの話を聞く。
①〜④の流れで、毎日書いて帰宅します。
入学したころの次男は、自分の名前を書くのが精一杯。他の文字は、鏡文字や象形文字だらけ。ひらがなを一文字書くのに、だいぶ時間がかかっていました。一行日記が始まっても、
「じょぎんぐしたよ。」
「きょうは、はなうえをしたよ。」
本当に一行だけ。一行書いたら時間切れになるようで、家では、書きたかったことをたっぷり話してくれました。
一行日記を1か月続けたころ、家で遠方に住む従兄弟に手紙を書きました。半年前に書いたときには、絵と名前を書いた程度だった次男が、便せん一枚分の手紙を完成させます。長文を書く次男を、初めて見ました。
一行日記は、夏休みが終わった後も続いていて、文章を書く力がグングン伸びています。来年、担任の先生が替わっても、家で続けてみたいと思っています。
子ども大人も日本一の睡眠時間
「全国学力テスト」には、生活や意欲などを問うアンケートもあります。アンケートの結果から「決まった時間に寝て、起きる」秋田の子ども達の姿が見えてきます。また、総務省が行う「社会生活基本調査」によると、大人の睡眠時間も、秋田県が日本一長いそうです。
秋田へ引っ越してきた頃、朝7時に来客があり驚きましたが、隣人にはごく普通の訪問だったようでした。農業県の秋田では、大人も早寝早起きする人が多いのです。都会では簡単にはできない事情が多々ありますが、子どもを少しでも早く寝かせ、すっきりと目覚めさせてあげる。元気に「おはよう。」と言える子どもは、アクティブな一日を過ごせると思いました。
朝ごはんを食べよう
朝ごはんを食べている子どもが多いのも特徴で、アンケートによれば、全国平均より10%も高くなっています。学校で「朝ごはんを食べてきた人」と問いかけると、全員手をあげる光景は、秋田では珍しくありません。
三世代同居率が高いので、ママとおばあちゃんで家事分担をして、朝ごはんでも数品のおかずがある家庭が多いそうです。核家族の家庭では、ハードルが高く感じられると思いますが、無理して「一汁三菜」を目指さなくても良いのです。「御飯+ふりかけ」とか「パン+牛乳」でも、何も食べないより大切です。1時間目からお腹が空いて、給食ばかり考えていたら、授業も休み時間も楽しく過ごせないでしょう。簡単なものでも、お腹を満たして学校へ送り出してくださいね。
文・間宮陽子 イラスト・おぐまみ