「1日30品」という標語は2000年には削除されていた! 姑の執念と周りとの軋轢は何だったのか……
こんにちは、斗比主閲子です。
そろそろ健康診断の時期なので、モチベーションが高いうちにとダイエットの本をいくつか読んでいました。そうしたら、『脂肪肝・NASH・アルコール性肝炎の安心ごはん』という本の中でこんな記述がありました。
1日30品目食べようという標語はもう十数年前に削除されてたのか! 姑は未だにこれ遵守して、我が家の食事にも口出してるよ!
※『脂肪肝・NASH・アルコール性肝炎の安心ごはん』p.19 https://t.co/gpOdOLWqUs pic.twitter.com/ckz8b8gFJ8
— 斗比主閲子 (@topisyu) 2016年7月26日
1日30品目を目標にするという表現が2000年に削除されていたというものです。理由は栄養過多になってしまうからというもの。
これを読んで「ええー、削除されてたの!」と驚きました。削除されて16年経った今でも、1日30品目食べることを推奨する栄養士さんはいますし、ヘルシーさを売りにした惣菜に「○品目取れる!」なんてことが書いてたりするぐらい、今でも見かける考え方だったからです。
削除された本当のところはどうなんだろうと色々調べてみたら、農林水産省のページで公開されていた『日本食文化テキスト』にありました。
2000年3月、厚生省(現厚生労働省)は農林水産省、文部省(現文部科学省)と連携を図って、新しい食生活指針を策定・公表したが、その食生活指針では、「主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを」とあるだけで、「1日30品目」の表現は削除された。厚生省の担当者は、「30の数字を絶対視して食べ過ぎてしまうことがありかねないので、誤解を避けるために、数値表示をしなかった」のだという。
引用:http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/eiyo.html
誤解を避けるために数値表示をしなかったという厚生省(今の厚生労働省)の担当者のコメントです。このコメントが正しければ、もともと1985年にこの標語を掲げたのも、2000年に取り下げたのも、特に根拠がなかったと推測されます。
実際、17年前に、1日30品目を推奨する記載が含まれた『食品生活指針』の内容を検討する委員会の議事録を読むと、「主婦には実現不可能」という議論があった上で、「数字は入れないほうがいいから」という理由で削除になったことが確認できます。
もともと私は「栄養素が取れればいいのに1日30品目なんて合理的じゃないし、しかも毎日なんて無理じゃないか?コストもかかりすぎる」と疑っていたので、取り下げられたこと自体はまっとうだと考えています。
それより納得できないのは、これを信じて姑が我が家の食事に「1日30品目」観点から介入してきたが何だったのかということです。私自身が疑っていたとしても、姑は本気で信じていて、心配して善意で介入していたわけです。余計なおせっかいだったけど、少なくともベースに善意はあった。
しかし、この考え方自体に根拠がなく、栄養の過剰摂取になるからととっくに削除されていたことが分かった今となっては、この余計なおせっかいが物凄く悲しく、無意味なものに思えてきてしまったわけです。もともと嬉しいものではなかったにせよ。
姑は「1日30品目」という削除された表現を信じて、豊富な食材を調達し、家族に「健康にいいから!」とそれを食べさせ続けていたそうです。そして、私が一緒に住むようになってからは、我が家の食卓にまで介入してきた姑。この表現がなくてももちろん介入はしてきたでしょうが、根拠がないもので介入されていたと思うと強烈にがっかりしたわけです。
1985年から2000年と15年も掲げられていたら、信じている人は今でもいますよね。しかも削除されたことは大宣伝されないわけですから。先ほどの私のTweetは5,000RT以上されていて、多くの人から「えー、信じてた!」という反応がありました。
考え方が変わって内容の変更をすることはいいことです。ただ、変えたなら変えたで、「1日30品目」というのが目に入らなくなるぐらいまでそのことを周知してほしいですよね!
文・斗比主閲子 イラスト・チル