元職員が語る!保育士が担当する子どもの人数緩和対策について
待機児童解消に向けて28日に発表する政府の緊急対策で『保育士1人が担当する子どもの数について、自治体が独自に定めている厳しいルールの緩和を促す方針を固めた』というニュースをご存知でしょうか?今回の報道を聞き、保育の現場で働いていた経験のある筆者の考えをお話しさせてください。
保育士の配置基準
まずはじめに、保育園では保育士の配置基準が「児童福祉施設最低基準」によって定められています。国が定めた、保育士の配置基準は下記のようになっています。
0歳児:保育士1人につき子ども3人
1、2歳児:保育士1人につき子ども6人
3歳児:保育士1人につき子ども20人
4、5歳児:保育士1人につき子ども30人
今回の報道で、『保育士1人につき、子ども6人まで」となっているが、自治体によっては「5人まで」など、厳しいルールで運用している実態がある。』という風に報道されていました。おそらく「5人まで」というように決められている自治体では、保育内容の充実や保育士の負担軽減を配慮したことかと。はたして、このルールは厳しいルールなのでしょうか?
保育の現場では…
筆者が1歳児クラスを担任していた時は、たしかに15人前後の子どもたちに対して最低3人の保育士がクラスに入っていました。しかし、現場の人間は、狭い空間で配置基準の5〜6人の子どもをただじっとして監視しているわけではありません。室内外で子どもと一緒に遊んだり、転んだ子がいれば起きあげ、子どもに排泄や水分補給を促して、必要があれば着替えを手伝います。そして、月齢の発達段階によっては、自分の思いがうまく伝えられない子は友達に噛み付くことも。保育士はそれを未然に防いだり、噛んだ子や噛みつかれてしまった子のケアをしたりしなければなりません。
そんないろいろな状況下においても、いつでも臨機対応に対応し、それでも子どもの前では笑顔を絶やさない。それが私が独身時代に頑張ってきた保育の仕事です。
さらなる保育士の負担増。本当に長期的な待機児童対策につながるのでしょうか?
今回の報道は、働きたくても働けない待機児童激戦区のママたちには吉報だったかもしれません。しかし、この対策は本当に問題の解決になるのでしょうか?やっとの思いで入れた保育園で、お子さんが大怪我をして帰ってきたら?お漏らしをしたまま帰ってきたらどうしますか?
もちろん、そんなことがないように現場でも細心の注意をはらっていると思います。ただ、保育士が気をつけていても子どもは怪我をしてしまうこともありますし、服の汚れを見逃して帰してしまうこともあるかもしれません。しかし、仕事内容が収入に追いついていなくても、子どもの成長を身近で感じられるこの仕事にやりがいに感じ、頑張って仕事をしている現場の保育士だって人間です!さらなる責任や負担が増えれば、ミスも増えますし、やりがいを感じつつも仕事を続けられない人だってでてくると思います。
そうしたらまた、保育士不足になって新たな問題にもつながるのではないでしょうか…。
現場にいない、潜在保育士の筆者でもこの決定には胸がざわつきました。今回の発表を受け、現場から発せられる声に政府はどんな対応をしてくれるのでしょうか。あちらをたてれば、こちらが立たずのイタチごっこではなく…本当に世の中のママたちが子育てをしやすい社会になるような対策をお願いしたいものです。
文・赤石 みお
参考:待機児童解消へ!保育士1人が担当する子どもの数で緩和促す方針