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はじまりは世田谷区長に届いた2通のメールから。「障害児保育園ヘレン経堂」が2017年2月1日にオープン

%e3%83%95%e3%83%ad%e3%83%bc%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%b9%ef%bc%92認定NPO法人フローレンスが運営する「障害児保育園ヘレン」が、杉並区、豊島区についで、世田谷区経堂に開園します。世田谷区といえば待機児童数全国ナンバー1。そんな世田谷区に「居宅訪問型保育」、療育を行う「児童発達支援」を取り入れた「障害児保育園ヘレン経堂」がオープンしたのは、世田谷区長の元に届いた2通のメールがきっかけでした。

保育園を増やしても医療的ケアが必要な子どもが入れるところはゼロ

「障害児保育園ヘレン経堂」のオープニングイベントに登壇した世田谷区長保坂展人氏は、今回の取り組みが始まったいきさつについて語りました。

「たんの吸引や経管栄養など医療ケアが必要な子どもを保育園に入れたいけど、区内の保育園では対応できるところがないというメールを2通ほど受け取りました。区長に就任した2011年以降、認証、認可合わせて61の保育園を開園、4700人分の保育定員を増やしてきたものの、医療的ケアのある子どもが入れる保育園はゼロ。世田谷区には国立成育医療研究センターがあり、全国から重病の子どもたちが集まってきます。治療後の経過がよく自宅に戻れても、その子たちが行く保育園がないというのは大きな問題です」

「医療的ケア児家庭がたくさんある世田谷区にもこうした施設が必要だ」と感じた保坂世田谷区長は、職員とともに先に開園していた「障害児保育園ヘレン荻窪」の見学に行くことに。保坂世田谷区長の見学に対して、駒崎代表は「自治体の区長として初めて障害児保育園を見学に来てくれました。今回の経堂園は日本で初めて自治体がリーダーシップを発揮し、障害児保育園を作った事例」と喜びを語りました。

NPO、自治体、企業の連携でスタート

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「障害児保育園ヘレン経堂」の開園にあたり、ほかにもいくつかの法人が手を差し伸べてくれました。そのなかの2つが合同会社西友と一般財団法人村上財団。

「車いすなどを乗せられるようにするための送迎車は高価なので、西友さんに送迎車を寄付していだき、大変助かりました。また障害児保育園を開園するのに、国からの補助が出ないため初期費用として数千万単位のお金がかかります。そこを寄付という形でサポートしてくれたのが村上財団さんです。みんなが少しずつ力を出し合って作った施設です」(駒崎代表)。

「障害児保育園ヘレン」に入園することで、子ども自身にも大きな変化が出てくるといいます。今までチューブからしか栄養を取れなかった子どもがヘレンに通い、ほかの子の食べる姿から刺激を受けたことで、口から食べられるようになった子もいます。それによって自宅近くの認可保育園に転園することができたそうです。

今回、オープンする「障害児保育園ヘレン経堂」では、同じフロアに健常児を預かる「一時保育室カムパネルラ」が開園します。「お散歩や行事などでふれあいの機会を作ることで、お互いにいい刺激になるはず。障害児と健常児の垣根を越えていきたい」(駒崎代表)というように、子ども同士の交流によってお互いに学び合う場となりそうですね。

2017年以降も各地で障害児の保育施設が開園

2017年4月には、認定NPO法人フローレンス運営の4園目「障害児保育園ヘレンしののめ」が東京都江東区に開園を予定。世田谷区では、社会福祉法人むそうが「チャイルドデイケアほわわ瀬田」で、「障害児保育園ヘレン」と同じ業態の「居宅訪問型」による保育を開始(定員1名)。

同じく2017年には、医療的ケア児のお母さんたち自らが立ち上げたNPO法人申請中(2017年1月認証・登記予定)のソルウェイズが札幌で医療的ケア児の預かり保育実施に向けて動き始めています。

認定NPO法人フローレンスでは、これ以外にも現在東京23区のいくつかの区で障害児保育園の開園について話し合っているとのこと。これまでどこにも行く場所がなかった医療的ケアの必要がある子どもが、一人でも多く保育園に通えるようになることを願います。

障害児保育園ヘレン経堂

開催時期:2017年2月1日開園
住所:東京都世田谷区宮坂3-15-15 子ども子育て総合支援センター2階
対象児:世田谷区、近隣区にお住まいの重症心身障害児、医療的ケアの必要な児童、中重度肢体不自由児(1歳誕生日以降から未就学児)
開園時間/利用時間:8時~18時30分(基本保育時間9時30分~17時30分)

参考: 「待機児童の陰に隠れたもう1つの保育園問題って?」

取材、文・間野由利子

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