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くわばたりえ:第5回 どんな人でも育児って大変やと思う。大変って思わない人なんていないから

「ママになることが夢だったのに……」やっとの思いでママになれた、でもいざ子育てを始めてみると、あんなに望んでいた“ママ”である自分に疲れてしまうことってありますよね。今回は、そんなママからの相談に、くわばたさんが答えてくださいました。

くわばたりえ

相談者:3歳男の子ママ

不妊治療の末、40歳で第一子を出産しました。欲しくて欲しくて産んだ子なのに、ときどき「私って親に向いてないんじゃないか」と感じてしまう瞬間があります。
息子のことはかわいいし、愛おしい。それでも、ときおり育児につまずき、そう感じてしまうことがあるのですが、くわばたさんもそう思うときはありましたか?そして、そういうときはどんなふうに乗り越えていますか?

わかるわぁ~。私は一人目のときに「親に向いてない」というより、「この子は、なんで私を選んできたんだろう。他の親を選んだ方が幸せになれたかもしれないのに」と思うことがたくさんあった。それこそ、子どもに怒ってしまったときとか、イライラしてしまったときに。
こういう気持ちを感じたときって、不妊治療をされた人のほうが余計に辛いと思う。ブログにも、そういうコメントをいただくことがあるんです。たとえば、「10年近く不妊治療をして、やっと子どもができました。でも、すっごく育児が辛いです。全然寝てくれない。寝れない。おっぱい飲んでくれない。ミルクにしてもいいものか……。もう育児やめたい!」って悩んでいるママがいて、でも、その悩みは絶対旦那さんに言えないって。

■旦那さんにも「辛い」と言えないのは、きついですね

そうやねん。なぜかって言ったら、「10年間不妊治療をして、費やした時間やお金のこと、支えてきてくれた夫のことを考えたら、『私、育児が辛い』なんて、口が裂けても言えない」って。それはほんまに辛いやろうなと思いました。
でも、私は、そのママには「旦那さんに言った方がいい」と伝えたの。それだけ欲しかった子どもを持てたのに、「今、辛いと思ってしまってる自分が辛い」ということを言えないのは、旦那さんに対しても申し訳ないことだよって。旦那さんが後でそのことを知ったときに、「どうしてひとりで悩んでいたの?」と思うから、ちゃんと伝えなね、と言ったら、「勇気を持って伝えてみます」と。

■育児は辛いこともたくさんあるのに、一番身近な人に「辛い」と言えないとなると、ママは追い込まれてしまいますよね

あとな、保育士さん。10年以上保育士の仕事をしてきた人でも、いざ妊娠して、出産をして、育児を始めたら、仕事とは全然違うんやって。「私の保育の経験なんてゼロに等しくなるくらい、一からの育児っていうのが辛かった。私は今まで何をしてたんだろう」って落ち込むんだけど、周りからは「保育士さんなんだから、育児楽でしょ?」と言われて、そういうふうに悩んでいることを口に出せないという人もいたの。

■そうなんですね。確かに、「保育のプロだから……」という気持ちになってしまいそうですが、やはり自分の子育てとは違うものなんですね

そう。だから、どんな人でも育児って大変なんやと思う。大変って思わない人なんていないから。
私も最初、夫に「育児が辛い」と言えない時期があったんだけど、それを伝えたことで乗り越えられたことがすごくたくさんある。旦那さんが、子どもの世話をしてくれたりとか、家のことをやってくれたりしても、「よく分からないけど、やれって言われたからやる」というのと、話を聞いて、こっちのことを理解したうえでやってくれるのとでは、全然違うよね。言わないとやってくれないっていうのは、結局こっちの辛さをわかっていないってことでしょ。だから、言わないと伝わらないことって、いっぱいあるんやと思うよ。

■「辛い」と感じる状況になったとき、人に伝える、知ってもらうというのはとても大事なことなんですね

この考え方は“逃げ”なんやけど、怒ってしまったときの逃げ道を作っておくことも大事。それがなかったら、ママが追い込まれてしまうもん。
「明日は、怒らないでおこう」と思っても、怒ってしまったときの気持ちの落ち込みってあるでしょ。次の日もなんだかんだで怒ってしまって、「昨日の反省なんやってん……」ってなったりもするしね。

■では、怒ってしまった後の子どもへのケアはどうしたらいいですか?

私も、子どもを産むまで「保育士さんて、めっちゃ楽な仕事やん」と思ってたの。「一日中子どもとニコニコ遊んで、お昼寝させて、ほんで合コン行ったら保母さんっていうので男にモテてさ。むかつくわー、そんなんでお給料もらえてええよなぁ」って。でも、自分が親になって保育園に子どもを預けるようになって、とんでもない誤解をしてたんだ、と思ったのね。自分の子どもひとりを相手にヒーヒーする生活してみて、はじめて他人の子どもを毎日何十人も世話する保育士さんの大変さがわかった。でも、これを経験したことがない人に「わかれ」っていうのは無理がある。私もそうだったし、実際にママになってみないとわからないことってたくさんあるでしょ。
でもな、パパはたとえ頑張るママを近くで見てたとしても、わからへんのよ。私が「保育士さんって楽しそうでいいな」と思っていたみたいに、「ママは子どもと一日中一緒におれていいやん。俺は一生懸命働いて金を稼いでる。お前は、家で子どもと遊んで、子どもが昼寝してる間にご飯作ってるだけやろ」と考えてるパパがほんまに多いと思う。

■「子育てしている」という立場は同じはずなのに、苦労がパパにはなかなか伝わらないことってありますよね

わかってもらうには、伝えるしかないよね。だけどいざママから「子どもを一日見てて」と頼まれると、「無理!」って言うパパが多いねん。それに、「3時間見てて」と頼んで外出したママが、3時間15分後に帰ってきたら、いきなり怒り出すパパとかもおるでしょ。「その15分で切れんの!?」と思うけど、慣れないパパからしたら、その3時間がめっちゃ大変なんだろうね。
でもさ、パパに「3時間見てて」と言うと、本当に“見てるだけ”やで?(笑)炊事、洗濯、掃除もしなくてええんやで?「でもママはひとりで、家事も育児も全部こなしてるんですよ!」と、言ってやりたい。でも、それを説明しても、理解できない人もいるんだよね。

■文字通り“見てるだけ”(笑)。それでも「見てたんだぞ!」と大威張りで言われたりすると、どんどんパパに優しくできなくなっていきますよね……

そこは、まず向こうの大変さを理解してあげることから始めないといけないのかな。「働いてくれて、ありがとう。疲れてない? 今日は早く寝たら?」と、こちらが優しくしてあげれば、相手もちょっとこちらに優しくなる……そういう作戦はどうでしょう(笑)。
私、結婚してから「ありがとう」をすごくよく言うようになったのよ。それは夫がちゃんとお礼を言う人だから、というのもあるんだけど、やっぱり「ありがとう」と言い合う気持ちって、育児をしていく夫婦の中では、言いすぎても言いすぎることがないくらい、大事な言葉やと思うから。
くわばたりえ

■ママの側がそこまで努力しても、一向に変わってくれない夫の場合は、どうしたらいいのでしょう

どうやっても変わらない人はいるし、そういうときは「変わらない人なんだ」と諦めるのも大事だと思う。うちの父親も、お父さんとして、おじいちゃんとしては最高やけど、夫としては最低なの(笑)。だから母親は、“お父さん”“おじいちゃん”として最高の部分は認めて、夫として最低な部分には目をつぶってあげてるんだって。「この人はどうせわからないんだから」って(笑)。

■なるほど……。結果がどうなるにせよ、育児に悩んでいるママさんも、ひとりで抱えこまずにまずは一度、旦那さんに伝えてみてほしいですね

そう、ひとりで抱えこんだらあかんよ。「何年も不妊治療をして子どもを授かったから」とか「子どもが大好きだから」とか、それだけで悩まず楽しく育児ができるなんてことは、絶対にないからね!


「育児が辛い」と悩む自分を責めてしまうママたち。でも、育児を大変だと感じない人はいないというくわばたさんの言葉に、この相談者のママの心が軽くなっているといいなと思います。
次回は、最後の相談者さんの質問です。お楽しみに。

(取材・文:上原かほり 撮影:chiai)