【お金のギモン解決!第5回】「税」が今年の漢字に選ばれる時代。税金はこれからも上がり続けるの?
前回からの続き。消費税をはじめ、税金を納めるのは日本国民の義務です。税金は国の大切な財源で国民が負担する必要がある、そうわかっていても、増える一方では生活は大変になるばかりです。
そんな税金について、「なかのアセットマネジメント」の代表を務める中野晴啓さんに聞きました。税金はこれからどうなるのでしょうか。
なぜ税金は上がるのか。ちゃんとした背景があります
――新聞やネットニュースを見ても「増税」という言葉を目にする機会が増えたように感じます。この先も税金は上がる一方なのでしょうか?
中野晴啓さん(以下、中野さん):税金が増えるかどうかの前になぜ上がるのか? という点に着目してみましょう。2012年に導入された「炭素税」を例に挙げて考えてみます。
炭素税は、地球温暖化対策のための税です。二酸化炭素の排出量を減らすことは世界共通の目標ですから、その実現に向けて税金を取るようにしたのです。企業などが排出した二酸化炭素の量に応じて課税されるので、企業はできるだけ二酸化炭素を出さなくなりました。一方で、2024年から始まるNISAの新制度では、非課税の枠が大きくなります。非課税枠を大きくすることで、多くの人がNISA制度を使いやすくしたいわけです。
――税金を上げる一方で、税金を取らない制度もあるのですね。なんだか矛盾していませんか?
中野さん:税金というのは、何かをやめて欲しいと思えば税金を上げる、やって欲しいなら税金を下げるあるいは取らない、という考えが前提です。国は国民にNISA制度を活用して欲しいと考えているということですね。また税金は国の収入なので、どこかで下げればどこかで上げるというバランスを取らないといけません。
税金の使い方に不平等さを感じるのは当然?
――税収があることで、たとえば道路の整備など国民が便利になること、助かることがあるのはわかります。けれど一方で、所得制限などによって各種給付金や児童手当がもらえる人ともらえない人が出るという、不公平さを感じる場面もあります。国民が収めた税金を使うならば、国民に平等に使ってほしいという気持ちがあるのですが……。
中野さん:直近で給付金といえば、住民税非課税世帯等に対する生活支援のための給付金がありますね。住民税非課税世帯は、住民税が課税されない世帯のことです。前年度の年収によって決まることが多く、明確にいくら以下とは言えませんが、会社員、専業主婦、子ども2人の世帯では年収250万円以下が1つの目安になります。
このような世帯に対して特別に給付金を出すのは、景気対策のためでもあります。対象となる家庭では、給付金を食料や日用品などの購入にあてる可能性が高い。そうすると購入された商品を作る会社の売上にもつながり、景気が上向くという考え方ができます。
しかし全世帯に同じような給付金を出したら、ある程度年収のある家庭では、すぐに必要ないと考えて貯金に回してしまうかもしれません。そうなると、せっかくのお金が経済活動に使われないことになってしまいます。
給付金は平等に出してほしいと考えるのは誰にでもあると思いますが、給付金は受け取る家庭によってインパクトが違うんですね。給付金を出す家庭を限定しているのは、すぐに、確実にお金を使ってほしいという国の考え方も反映しているのです。
納得して税金を納められる国と納められない国の違い
――そういう背景があるとわかると税金の使い方に対しての苛立ちも少し軽減しそうです。しかし国民の声を反映していない増税もあるような気がします。
中野さん:国民全員が納得できるような政策はありませんから、増税についてもなかなか理解を得られないこともあるでしょう。しかし今の日本で一番問題なのは、国に対しての信頼があるか、という点だと私は思います。北欧は日本よりもずっと税率が高く国民は日本人よりも多くの税金を納めていますが、文句を言う人はそれほどいません。なぜかというと国の政策を信頼しているからなんです。納めた税金を国民のために使ってくれるとわかって、信じているから、気持ちよく納税しているんですね。これを「ワイズスペンディング(賢明な支出)」といいます。
日本国民が納税に不満を感じるのは、税金を国民のためにきちんと使っているというのが伝わってこないからだと思うのです。国は一方的に「税金を上げます!」と言うのではなく、国民の声を聞きながら、なんのために税金を使うのかを丁寧に説明する必要があるのではないでしょうか。そして私たち国民も、増税の背景には何があるのかを考えていくことも大切でしょう。
(編集後記)
税金が上がると聞くたびにため息が出てしまうものですが、その背景まできちんと考えるべきなのだと痛感しました。そのためにも国からの十分な説明は必要です。増税への理解が得られれば納得して納税する人も増えていくのではないでしょうか。
次回は、日常生活で目にすることが多いキャッシュレス決済で還元されるポイントについてお聞きします。
文・川崎さちえ 編集・すずらん イラスト・加藤みちか