栃木県矢板市・齋藤淳一郎市長第2回「合言葉は『こどもまんなか』家庭、地域をミックスさせた子育て」
前回からの続き。第1回のインタビューでは、齋藤市長が実現した3つの子育て支援「矢板市子ども未来館の創設」「給食費の補助」「放課後学習塾の開校」について伺いました。矢板市の子育て支援は、これからますます熱が入るようです。具体的な支援策を伺いました。
栃木県内で一番乗り!「こどもまんなか応援サポーター」宣言
―—今年(令和5年4月)に「こども家庭庁」が創設されました。どの自治体も「こども中心」の社会を目指した取り組みを始めているようですね。
齋藤淳一郎市長(以下、齋藤市長):こども家庭庁が目指しているのは、子どもに関する取り組みや政策を推進し「こどもまんなか社会を実現すること」です。矢板市もこの趣旨に賛同して、栃木県内で最初に「こどもまんなか応援サポーター」宣言を行いました。
ただ、「こどもまんなか応援サポーター」宣言をしても実際に行動しないと意味がありません。そこで具体的に何をするのかをまとめたのが「Yaitaこどもまんなかプロジェクト」です。
「Yaitaこどもまんなかプロジェクト」で総合的な支援を実現する
――「Yaitaこどもまんなかプロジェクト」では、具体的にどんなことをするのでしょうか?
齋藤市長:子育て支援と一言でいっても、「婚姻」「産前産後」「育児」「就学期」で求められる内容は違うはずです。そこで時間軸によってわけたサポートをしています。
さらに「支援」には家庭内での自助(共助)、地域での互助、自治体からの公助の3つが必要だと考え、育児中の家庭が総合的にサポートされる取り組みを実践しています。
自助(共助)はママ・パパになる前から始まっている
――自助(共助)とはどういう意味でしょうか?
齋藤市長:家庭内での「自助」は夫婦・パートナーとの助け合い「共助」も含まれます。子どもが生まれてから家庭内で助け合うだけでなく、親になる前から、つまり婚姻関係を結んだときから「共助」を意識することも大切でしょう。そこで婚姻届と共に「家事・育児分担(シェアリング)宣言書」を作れるようにしました。具体的に「食器をしまう」「残ったご飯にラップをする」などの項目があり、足りない部分は付け加えられるようになっています。いわゆる「名もなき家事」も担当を明確にすることで、「どっちがするの!?」とイライラすることもなくなるのではないでしょうか。
地域で支える「互助」
――男女が同じように家事や育児に取り組む意識を持つのは、とても大切なことですね。では互助というのは、どういった支援ですか?
齋藤市長:「互助」は地域からの支援です。ファミリーサポートセンターや、学校支援ボランティア、放課後子ども教室などがあります。ファミリーサポートセンターは、私の家庭でも利用していて、子どもの塾の送迎などをお願いしています。
――放課後子ども教室は、学童保育のようなものですか?
齋藤市長:学童保育とは違い、地域のボランティアの方々が主体となって、子どもたちが、地域の方と多様な体験活動を行う場です。矢板市では、「乙畑ひまわりスクール」という放課後子ども教室があり、今年で開設10年を迎えました。ここでは、放課後子どもたちの見守りをしてくれています。
――地域の方が積極的に子どもたちの支援に関わっているのですね。
齋藤市長:矢板市は人口が3万人ほどの小さな街ですが、矢板市で生まれ育った人も多く、地域の人たちの結びつきが強いと感じます。大都市のように人口が多く、住民の入れ替わりが大きいと「放課後子ども教室」のような地域密着型のサポートは成り立たなかったかもしれませんね。「乙畑ひまわりスクール」は乙畑小学校のランチルームを使って、地域の方との活動を続けています。100年以上の歴史のある小学校で、地域の人たちにとっても思い入れが強いようです。
地域の関わりを鬱陶しいと感じる人もいるかもしれませんが、矢板市にはそう考える人が少ないのかもしれませんね。地域のネットワークがあり、そこに住む人たちの力を借りられる環境は矢板の宝ですから、それを生かした子育て支援を目指していきたいと考えています。
(編集後記)
矢板市オリジナルの子育て支援策、「Yaitaこどもまんなかプロジェクト」は、妊婦さんから就学期のお子さんをもつ家庭までを、地域と自治体でトータルサポートするものでした。市長は「地域の人たちの力を借りられるのは、矢板市の強み」と語っています。
第3回は、「Yaitaこどもまんなかプロジェクト」の公的な支援についてお聞きします。
文・川崎さちえ 編集・すずらん イラスト・crono