いつでも、どこでも、ママに寄り添う情報を

ていねいに字を書くことは本当に必要!?注意する前に親が気をつけたいこと【親野智可等さん・第3回】

20230718015727

前回からの続き。
「字が汚い」「物の扱いが雑」といった子どもの悪い癖にお悩みのママはいませんか? 教育評論家で親力アドバイザーの親野智可等さん(以下、親野さん)は「これからの時代には、ていねいに字を書くよりも大切なことがある」と言います。どういうことでしょうか。あるママのお悩みをもとに親野さんにアドバイスいただきました。
oyprf

ていねいに字を書くことは日本特有の美徳

【あるママのお悩み2】高学年になる男の子がいます。息子は物の扱い方や字の書き方が雑で、もう少していねいにしてほしいのですが、どうすればいいのでしょうか。

親野さん:よく相談を受ける内容です。これは子どもの成長の個人差からくるものですし、生まれつきのものなので仕方ありません。ひと昔前は男の子と女の子の違いを「男の子脳」「女の子脳」と分けて呼んでいましたが、「ジェンダー差別」ではないかという声もあるので「晩熟脳」「早熟脳」と呼んでいます。男の子が必ず晩熟脳というわけではありません。男の子のなかにも早熟脳の子はいますし、女の子にも晩熟脳の子もいます。でも、一般的には男の子は晩熟脳が多く女の子は早熟脳が多いようです。そして、晩熟脳の子は字をていねいに書くのが苦手です。

――その晩熟脳の子に、少しでもていねいに字を書いてもらうにはどうしたらいいでしょう。

親野さん:子どもにていねいに字を書いてほしいのであれば「名前だけきれいに書く」「冒頭の一文だけていねいに書く」でもいいですよね。
しかし、そもそもていねいに字を書くことにこだわる必要がどの程度あるのかということを、親御さんは考えたほうがいいと思います。日本では書道の影響があるため「字を美しく書く」ことにこだわります、でも、私は、あまりこだわりすぎないほうがいいと思います。例えば、漢字を覚えるために書く場合、はやく何度も書いたほうがいいと思いませんか。
たとえば、授業の名人として有名だった教育学者の有田和正先生は「鉛筆の先から煙が出るように書きなさい」と言っていました。ていねいに字を書くよりも、内容のほうが大事だということでしょう。すばやく字を書くことで思考も早くなりますし、ていねいに書いていたら、思いついたアイディアを忘れてしまいます。そのほうが私は問題だと思っています。
その点、欧米の教育は違います。欧米では「字が雑で困ります」と親御さんが悩むことはまずありません。ていねいに字を書くことは、書道文化の影響がある国に特有の美徳だと認識してほしいと思います。

字が汚いのはマイナスの特徴ではない

――今はパソコンで文字を打ちますし、字を書く機会自体減っています。

親野さん:社会に出ると字を書く機会はそんなにありませんよね。しかも悪い癖が、長い人生のなかでマイナスなものかどうかわかりませんよ。たとえば「字が汚い」と同じような癖に「片づけができない」「時間にルーズ」がありますが、こうした特徴は、クリエイティビティが高い人に多い傾向にあります。クリエイティブな人は、次々とやりたいことが頭に浮かび、優先させるため、整理整頓に意識が向かないんですね。

――これからの時代、ていねいに字を書くよりも大事なことは何でしょう。

親野さん:「自分軸で考えられること」が大事ではないでしょうか。今の子どもたちは激動の時代を生きていくわけですよね。グローバル化であり、超高齢化社会であり、世の中大きく変わっています。そのなかで、子どもに何に労力をかけるべきかを親御さんも考える必要があります。今の親御さんが受けた教育や子育ては、すでに過去のものです。時代に合わせてアップデートしていかなければなりません。親自身も思考停止状態にならずに、自分軸で考える必要があるのではないでしょうか。

【編集部後記】
「ていねいに字を書かない」といったママのお悩みに、親野さんは「なぜていねいに字を書く必要があるのか」と問題提起をしてくださいました。今回は「ていねいに字を書く」に焦点をあて、親野さんにアドバイスいただきましたが、ほかの悩みでも同じことが言えるのではないでしょうか。これからの時代に何が必要かは、今の常識や価値観では計れません。そんなときは「ほかの国」や「未来」に視野を広げ、考えてみるといいのではないでしょうか。もしかしたら、自分がいかに常識や価値観に縛られていたかがわかるかもしれませんね。

第4回へ続く。

取材、文・安藤永遠 編集・荻野実紀子 イラスト・マメ美

関連記事

なんでも手伝うのはダメ!?子どもの自立をうながせるのはどんな親?【親野智可等さん・第2回】
前回からの続き。 ときにわが子の至らなさが気になってしまうことがある、小学生の子育て。なかには「子どもの悪いところをどうにか直したい!」と、子どもに叱ってばかりで自己嫌悪になる人もいるでしょう。...
小学生のお子さんを持つママを悩ます「比べる病」の正体とは【親野智可等さん・第1回】
みなさんは勉強や習い事において、わが子とお友だちを比べてしまった経験はありますか? もしかしたら不安に思うあまり、「子どもの子育てをリセットしたい」「自分はダメ親かも」と悲観しているママもいるかも...
小池百合子東京都知事 第1回「出会いから結婚、出産、成人までシームレスに子育て支援を」
「子ども1人に対して毎月5,000円の給付」「出産のお祝いに10万円のカタログギフト」「第2子の保育料無償化」「卵子凍結への支援」など、次々と子育て支援策を打ち出す東京都。そこには、子育てをし...