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「発達性読み書き障害」、義務教育終了後の進学や将来の就職先を選ぶポイントは?

pixta_37771064_M「発達性読み書き障害」は、日本において1クラス40人のうち3人程度いるといわれています。もしも我が子が該当する場合、進学や将来の仕事が心配になります。親はどうサポートしたらいいのでしょうか。『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』の著者で筑波大学元教授、現客員研究員、LD・Dyslexiaセンター理事長の宇野彰先生、当事者であるご自身のお子さんについての漫画を描いた千葉リョウコさんのお二人に話を伺いました。
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義務教育終了後の進学は学力にあったところ+授業スタイルを見て決める

――もしも我が子が発達性読み書き障害だった場合、高校進学や将来の仕事が心配になります。親はどうサポートしたらいいのでしょうか。

宇野彰先生(以下、宇野):高校の選び方としては、学力に合っていて荒れていない学校というのを一つの基準にするといいですよ。

発達性読み書き障害の子の場合、文字の読み書きなどが苦手なため、学力での評価は本人の知能水準よりも低くなりがちです。しかし、無理をして高い水準に合わせるよりも学力に合った高校を選ぶことで、学校内での成績が上位になることがあります。これまで勉強に対してどちらかというと劣等感を感じていた子は自信につながり、できない生徒をサポートする側にまわり、その経験が本人にとってもいい影響を与えるのです。

――公立、私立で選ぶとしたらどちらがいいなどはありますか?

千葉リョウコさん(以下、千葉):「私立のほうが手厚くいい教育が受けられるかも」と思うかもしれませんが、それは学校によりますね。

宇野:高校によっては、発達性読み書き障害の子に向いた方法をとっている場合もあります。先生が板書したものを生徒に書き写させるだけではなく、先生が書いたものをスマホで撮影しても良い、もしくはデータで配布するという学校もあります。

まずは、親御さんがいくつか高校見学に行き、その中から校風や授業スタイルなどを見て我が子に合いそうなところを2、3校ピックアップする。そのうえで子どもと一緒に見学に行き、最後は子ども自身に決めさせるといいでしょうね。

千葉:つい親は自分目線で選びがちですが、子どもの意見や決断を大切にしてあげてほしいなと思います。

職業選択は「得意なもの」よりも「苦手じゃないもの」を選ぶ

――就職先を決めるときはどのようなことが大事でしょうか?

宇野:親としては将来、子どもがどんな仕事に就けるかが一番心配なところだと思います。結論からいえば、なりたい職業を探すよりも、苦手じゃない職業を選ぶといいと思います。たとえば読み書きが多い商社のような仕事ではなく、手に職をつける仕事などを選ぶのもいいでしょうね。その際には得意なことや好きなことよりも、苦手じゃないことを選ぶのをお勧めします。

千葉:うちの長男も発達性読み書き障害ですが、今、調理系の専門学校に行っています。長男が職業を選ぶとき、苦手じゃないものという選び方をした結果、調理師を選択しました。好きなことが仕事にできればいいけれど、それが能力に見合っていないとつらくなると思います。

宇野:もし世の中のみんなが本当に好きな仕事についているなら、大多数の人は「サラリーマンが大好きだったんだね」ということになりますよね。好きな仕事につかなければいけないという幻想を持っているならば、それは違うと思います。
仕事は毎日続くので、本人がいやだと感じないことが大切です。仕事をする一番の目的は生きていくためにお金をかせぐことでしょう。好きなことにこだわってしまうと、一生仕事につけなくなってしまいます。

「嫌いじゃない」ことをやったら仕事の楽しさが見えてきた

――千葉さんのご長男は、飲食店の仕事についてどう感じているのでしょうか。

千葉:
調理の学校に行っている長男は今、すごく楽しそうに飲食店でアルバイトをしています。お店の人にも頼られているらしく、「次の休みに出勤してほしい」と頼まれて出ていくこともあります。

飲食店での仕事といっても、オーダーを取ったり、レジ打ちをしたりするのは向かないようです。それよりも調理をする側として働いているほうが合っているみたいです。同じ業種でも仕事によって向き不向きがあるから、苦手じゃないことを選んでやってみるといいと思います。

宇野:親は将来のことが心配になると思いますが、それほど心配しなくてもいいですよ。まずは、子どもが大きくなったらどんな職業につきたいかを聞いてあげるといいですね。もし医者や弁護士など、文字の読み書きが必要な職業になりたいといったら、親は「そうなんだね」と一度は受け入れてあげる。そのうえで「もし、その仕事につけない場合は他にどんなことをやってみたい?」と聞いて、将来の可能性を広げてあげるのもいいですよ。

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『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』
作:宇野彰、千葉リョウコ
発行所:ポプラ社
価格:1540円(税込)

取材、文・長瀬由利子 編集・井伊テレ子

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